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色々溜まってます

 吉永の手を掴みながら走って来た場所は中庭。


 今の時間は授業中で、誰もいないから安心して話せる。


 それに俺は兎も角として、一般人らしい体力しか無かった吉永は息が切れ切れとしているので適当にベンチに座らせる事とする。


「…此処までくれば平気だろう。大丈夫か?」


 俺が問い掛けるとこくりと頷き、ベンチに座り込む。


「いきなりだからちょっと驚いたけど平気」


「いや、巻き込んで悪かったな」


 そう言うと吉永は首を振る。


「正直助かったよ。あの中に居るのもしんどいし…。それにあの黒悪魔、何か知らないけど俺にばっかり懐いて来てさ」


 それから吉永はそれからふっと目を虚ろにさせる。光が差し込んでいない。それから何処かがぷっつりしたのか一気にまくし立てる様に喋り出した。


「本当にあの悪魔…いや、馬鹿で猿以下で地球外生命体め…。此処は地球だ。そして日本だ。日本人お得意の空気を読む事を何処に置いて来た。それは奴の周りに蔓延る奴等もだ。何で俺が迷惑そうな顔をしているのに気が付かないんだ。どいつもこいつもふざけやがって? 歩に近付くな! だ? ああ? 近付いてくんのは向こうからだろ。寧ろこっちからは近付きたいとも思ってねーよ。ふざけんな。だいたいなんでてめーらに俺が殴られなきゃなんねーんだよ。何様のつもりだよ。金持ちで美形だからっていい気になってんじゃねーよ。美形に蔓延る外野もうるせぇ。てめぇらの目は節穴かっ!! だいたい…………」


 かなりのストレスが溜まっている様だ。


 吉永はあの地球外生命体が転校して来た初日からずっと被害に遭っていたみたいだしな。かなりのストレスを溜めていたんだろう。この一気にまくし立てる様にして奴等に対する不満をぶちまける姿は見ていれば分かる事だ。


 俺は暫くストレスから解放させてやる為に、口を挟まずそっとしておいた。


 そして十分近く喋ってようやっと落ち着いたのか、思考が現実世界へ戻って来た様だ。瞳には光が差し、生気が戻って来た。


「……ごめん。君にこんな事言っても仕方が無いよね………」


「……いや、苦労したんだな。相当………」


 そして奇妙な一体感がお互いの間に生まれ、二人揃って遠くを見やる。目に入って来るのは中庭のそれこそ学園専属の庭師さんが綺麗に整えている木々だった。


「…あの地球外生命体どうにかならないかな……」


「無理だな…。奴に人間語は通じねぇ……。奴の回りに蔓延る奴らにもな。俺もこの二日でしみじみとそれを理解した」


 そう言って俺達は同時にため息を吐いた。


「………俺の名前は吉永透。お前は?」


「俺は流山四紀だ。……見事に被害者二号だ」


「やっぱり一号は俺か……」


「ああ………」


 俺達は徐にがしっと手を握り合わせた。


「俺達同じ平凡として気が合いそうだな」


「そうだな。此処はいっちょ同盟組んで置こう」


 そして俺達の声は重なった。


「皆川被害同盟で決まりだ」


 名付ける名前も一緒だった。


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