表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/175

Episode:85

◇Tasha side


 遠くにかすかな足音を感じて、タシュアは目を覚ました。

 時計を見ると、もう真夜中だ。仮眠のつもりだったが、何も起こらなかったために思いのほか長く寝ていたらしい。


 隣を見ると、ルーフェイアが背中を丸め、膝を抱えて眠り込んでいた。

(よく身体が痛くなりませんね)

 自分も似たような格好で寝てはいたが、あそこまで丸くなれない。


 様子をうかがったが、起きる気配はなかった。事実危険というわけではないから、寝ていて問題はない。

(ですが、足音がするのですがねぇ)

 すぐにどうこうというわけではないが、状況が変わるというのはつまり「何かが起こる」ということだ。警戒しておいて損はない。


 だが少し考えて思い直す。ここはシュマーの施設で、ルーフェイアにしてみればいわば庭のようなものだ。足音の主もシュマーの誰かだろう。

 だとすればルーフェイアにとっては、まったく危険がない。何しろ今まで見た限りでは、シュマーの面々は彼女に絶対服従だ。刃向かう人間などまず居ないだろう。

 つまり、起きるわけもなかった。


(まぁ、寝ていたほうが静かですか)

 足音の主が近づいてくれば、ルーフェイアは放っておいても目を覚ますだろう。それに起こしたらまた、何やかやと相手をする羽目になる。

 それは少々面倒だった。こういうややこしい事態の中では、寝た子は起こさないに限る。


 水槽の中のグレイシアも、まだ眠ったままだ。

(こちらも起こさないほうがいいでしょうね……)

 ルーフェイアと違ってこの子の場合、起こす起こさないはもっと切実な問題だ。


 病気だというこの子は起きれば時として痛みに襲われ、少ない体力を更に削ることになる。ならば出来るだけ長く寝かせて、体力の温存を図るほうがいいだろう。

 例の研究者も、向こうの机に突っ伏して眠っていた。魔視鏡が点きっぱなしのところから見て、調べ物の最中に眠ってしまったのようだ。


 足音を伴った気配は、更に近づいてきた。

(――多いですね)

 複数だとは思っていたが、どうやら10人以上居そうだ。手近に居た医師が総動員されているらしい。

 さすがに無視できなくなったのだろう、ルーフェイアが目を覚ました。


「あ、えっと先輩、おはよう……ございます?」

 首をかしげながら挨拶した後輩に返す。


「おはようございます。ですが今は夜中ですね」

「え? あれ?」

 地下に居るために時間が分からなくなったのだろう。ルーフェイアが驚いたように周りを見回している。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ