Episode:80
だがディオンヌのほうは、私の受け答えが面白かったようだ。声を上げて笑いながら「やだもう」とかなんとかと言っている。
「――何が嫌なんだ」
「そこで怒らない。というか、あたしだって知ってるってば。あのルーフェイアの彼氏でしょ」
どうやら分かっていて、私のことをからかったらしい。
見ればイマドのほうは、まんざらでもなさそうだった。ちゃんと自分がルーフェイアの相手だと認識されているのは、彼としては悪くないらしい。
――まぁ、そうだろうな。
ルーフェイアがどこまで分かっているかは怪しいが、少なくともこの二人、傍から見る限りでは「ふつうの友達」のラインは超えている。
その先がルーフェイアに分かるかどうか定かではないが、いずれにせよそのうちそういう関係になるだろう。
「で、カップルの片割れ同士が何の話してたの? 浮気の相談?」
「違うと言ってるじゃないか……」
また話題が元に戻る。どうして女子は、こういう話が好きなのだろう?
ディオンヌのほうは、私の答えがよほど面白いらしい。「また真に受けてー」と言いながら笑い転げている。
ひとしきり笑ってから、ディオンヌが真顔になって訊いてきた。
「で、実際のとこ、2人で何の相談してたの?」
「相談、ってほどでもないんですけどね」
答えたのはイマドだ。
「うんうん、それで?」
イマドがちらりと私を見た。このまま自分が話し続けていいのか、確認したかったのだろう。
私が頷くと、彼は話し始めた。
「まぁ実際、ンな大した話じゃないんですよ。ルーフェイアが急に居なくなったんで、もしかしたらタシュア先輩と一緒かな、って」
「え、それ大事件じゃない!」
訊いたディオンヌのほうが血相を変える。
「まだルーフェイアって、傭兵隊じゃないでしょ? なのに居なくなっちゃったら、ヘタすれば退学よ」
「あー、許可は取ってるっぽいです。俺も学院に聞いたけど、『急用で何日か出かけた』って聞いたんで」
ずいぶんと学院側もいい加減だ。
同じことをディオンヌも思ったらしい。
「ちょっとそれ、学院ってば何やってんの? 下級生が外泊するのに、そんないい加減な……」
「んー、でもアイツ、たまーにそゆことあるんで。つかあいつの場合、家がややこしいし」
ルーフェイアの秘密にかかわることを、あっさりとイマドが口にする。