Episode:64
「――部屋? 部屋に何があるの?」
「そ、その、子供が……」
「子供?」
答えを聞いて余計に分からなくなる。子供が居るのはこの部屋なのに。けど先輩は何か分かったみたいだった。
「ルーフェイア、最初の部屋に行けば分かります」
言って先輩は歩き出す。
あたしも意味が分からなかったけど、ともかく後に続いた。
「グレイス様? そちらの調査は終わったのですか?」
途中で、ここの警備に呼ばれたって言うシュマーの面々に出会う。
「終わったというか……違うもの、あるみたいなの」
「違うものと言うと、何か調べ忘れましたか?」
「たぶん……」
あたしがよく分かってないから、彼らにもよく通じない。けどそれ以上説明のしようもなかった。
その間に、先輩が行ってしまう。
「あ、先輩!」
慌てて声をかけたけど、先輩は振り返りもしなかった。
「あ、えっと、みんな……ここの調査、お願い。片っぱしから開けて。ダメなら、非常コード使って」
ともかく命令を出して、急いであたしも歩き出す。先輩の行き先は分かってるけど、あんまり遅れたくない。
長い廊下にはさっき倒した合成獣と、何人かの死体が転がってた。人がいないから、片付ける人もいないんだろう。
――あとで、ちゃんとしないと。
合成獣のほうはともかく、最低でも兵士の人は身元を確認して、遺体を家族に渡さないといけないだろう。
そんなことを思いながら隣を通る。
先輩はすごく早足で、小走りじゃないと追いつけなかった。
「早く!」
連れてきてる研究者の人を急かす。あんまり遅れたらまずい。
「は、はいっ!」
彼が慌てて走り出した。
でもこれじゃ、かなり時間がかかりそうだ。研究ばっかりしてるせいで、かなり足が遅い。いくら中年だからって、ちょっと遅過ぎだ。
けどだからと言って、置いてくわけにいかない。だから仕方なく彼のペースに合わせる。
でもどうにか、長いはずの廊下を来たときよりずっと早く抜けた。
たどり着いた最初の部屋は、鍵がかかってなかった。
扉を開けて中へ入る。