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Episode:63

「し、知ってました……」

「いつから?! 何のためにあんなことを!」

 涙が出てくる。知ってて、あれを許してたなんて。


「答えなさいっ!」

「は、はいっ!」


 あたしの言葉に、研究者の人が飛び上がるみたいにして姿勢を正した。

 なんかため息が出る。あたしみたいなのに大人が頭を下げたり、なのにこういう研究してることをなんとも思わなかったり、絶対にヘンだ。


「ここの部屋での研究は、いつから?」

 詰まりながらの答えが返ってくる。


「ぐ、グレイス様がお生まれになった後からですから……たぶん10年弱かと……」

「何のために!」

 10年っていったら、かなりの時間だ。あたしがいま13歳だから、生まれて割とすぐからやってたことになる。


「そ、それは詳しくは……ここでこういう研究をしてる、ことしか」

 ホントにこの人、考える頭があるんだろうか? いくらなんでも研究してるのに、無関心すぎる。

 タシュア先輩も同じことを思ったみたいで、冷たい声で言った。


「――自分たちが何をしているかも知らないとは、研究者として失格だと思いますがね」

「し、仕方ないじゃないか! お前に何が分かるんだ!」

 痛いところを突かれたみたいで、研究者の人が真っ赤になって叫ぶ。でも先輩は取り合わなかった。


「仕方ないなどと言い訳するような輩のことなど、分かる気などありませんよ」

 あたしもそう思う。これは絶対、「仕方ない」なんてことない。

 先輩も厳しい言葉を続ける。


「あなたが同じことをされて、『仕方ない』と言われても納得できるのでしたら、まだ話は分かりますがね」

 この言葉を聞いたら、あの子たちどう言うだろう? でも反対だけはしないはずだ。


「――それで、なぜ逃げだしたのです?」

 不意に先輩が話題を変えた。それでやっとあたしも、最初は何の話だったか思い出す。

 もしかすると先輩、あたしが脱線してしまったから横から口をはさんだのかもしれない。

 黙ったままの研究者に訊く。


「どこへ行くつもりだったの? 答えて」

「わ、私の部屋へ……」

 意味が分からない。確かに彼の部屋はあるけど、なんで今頃慌ててそこへ戻るんだろう?





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