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Episode:49

 その証拠にカレアナ達が総領家に入るまでは単純に受精卵を育てていたのが、それ以後急に「加工」へと舵を切っている。


(農作物の品種改良ではあるまいし)

 執拗に加工と改良を繰り返した理由は、「グレイス」を生み出したかったらしい。しかしなぜそこまで生み出したかったのかについては、この書類束には書かれていなかった。


 ただルーフェイアを見る限り、シュマーの中での「グレイス」というのは単なる立場ではなく、何か強制力を持つらしい。だからその辺に理由があるのだろう。

 ともかく資料ではそうやって改良を続け、トップクラスの能力を持って生まれたのがサリーアということだった。そして当時は、彼女こそが「グレイス」だろうと思われていたらしい。


 が、秘密裏に行われていたのが発覚、カレアナがこの時点で徹底的に制裁を加えたようだ。しかも数年後、実験とは無関係に生まれたルーフェイアがそうだと分かって事態は一変。一連の実験は目的を失い、消滅したとある。


(――はい?)

 予想外の言葉に少々考える。


 発端は別としても、グレイスを生み出そうという実験が、グレイスが自然発生したことで消滅したということ自体は、これといって矛盾はない。

 だがそうだとしたら、今ここで行われている実験は何なのか。


 何らかの非道な、人を改造するような事が行われているのは間違いない。けれど目的が見えてこない。

 これほどの人数で実験を行っているのだ。ただの興味本位にしても、それなりの意図がなければ賛同者――居ても困るのだが――は得られないだろう。

 だとしたら、いったい理由は何なのか……。


「――先輩?」

 後ろから近づいてきた少女が、タシュアに声をかける。


「あの、その書類……要りますか?」

「意味が分かりませんね。通じるようにお願いします」

 すかさずそうタシュアは返した。

 振り向くと案の定、ルーフェイアが困った顔をしている。


「えっと、ですから、その書類……」

「この書類がなんだというのです」

 機密事項だから触るなとでも言うつもりなのか。

 口下手なルーフェイアはもう気圧されてしまったのだろう、何か言いかけてはやめることを繰り返している。


「言いたいことがあるならはっきりとと、常日頃から言っているはずですがね。それとも、この書類に触るなとでも?」

 だとすれば本末転倒だ。部外者を引き込んだ上に資料庫に連れ込んでいるのだから、見るなと言うほうがどうかしている。





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