Episode:42
(まぁ、イザとなったら囮にでも使いますか)
曲がりなりにもきちんと訓練を受けたシュマーの一団だ。まさか即座に戦線崩壊はないだろう。
通路の残りは、もうそんなに長くなかった。向こうに終わりが見えている。
(あとはこの先がどうなっているか、ですか)
分かっているのは、主要な研究がこの先で行われていると言うくらいだ。
とはいえ少なくとも、残りの部隊は警備に充てられているだろう。そして場合によっては、残る合成獣も戦えるものは配備されている可能性が高い。
ただ部隊のほうはあまり心配なさそうだった。ルーフェイアがこちらに居る以上、恐らく手出しは出来ない。
(――彼らに行ってもらいますかね)
自分が先に行って、警備隊を蹴散らしてもいいと思っていたのだが……やはり少々面倒くさい。
それにこの研究所の連中は、おそらくこちらの行動を観察している。だとするならここの研究者を裏切ってルーフェイアに付いた彼らを先に行かせれば、こちらの行動はどこかに紛れてしまうだろう。好都合だ。
「ルーフェイア」
「あ、はい?」
慌てたように、金髪の少女が駆け寄ってくる。
「先輩、なんですか?」
「あの警備隊とやらに、先に行かせてください。さすがに同士討ちはしないでしょうから」
なるほど、というようにルーフェイアが頷く。
彼女が警備隊のリーダーを呼んで二言三言いうと、すぐに男も頷いた。
「仰せのとおり、隊を前へ出します」
命令が出され、男たちが前へ出る。
(こんな小娘の言うことを、鵜呑みにするのですからねぇ)
僅か10歳ちょっとの子に判断を任せるなど、自分の人生を手放すに等しい。もう少し自分の頭で考えるべきだろう。
まぁシュマーの場合、言っても無駄なようだが……。
先ほどまでとは逆、警備とやらの連中が先に立って自分が後からとなって、ほどなく。
(やはり、居ますか)
タシュアの鋭い感覚は、人の気配を捉えていた。数はおそらく十数人。先ほど聞いていた話とも一致する。
さてどうなるか。そう思って眺めていたが、警備隊のリーダーらしき人物が前へ出て、何事か話し始めた。
どうもシュマー語らしく、ところどころしかタシュアにも分からない。だがそれでも一部分かる語彙を繋ぎ合わせると、要するに「味方になるのか敵になるのか」という部分を、説得がてら問い詰めているらしい。