Episode:38
もっとも、取れる手はそう多くない。極端に言ってしまえば、相手の攻撃を避けるか封じるかして倒すだけだ。
ルーフェイアが先ほどと違って何も命じないところをみると、無駄だと判断しているのだろう。
(まぁ、グレイスに不意打ちを食らわせていますしねぇ)
もしかしたら命令が効くのかもしれないが、さっき倒した合成獣のことを考えると確実性は低い。だったらそんなものに頼らず、もっと確実な手段を取ったほうがいいだろう。
「――エターナル・ブレスっ!」
ルーフェイアが最強とも言える防御魔法を展開する。
「やれやれ。私に突っ込めと言うことですか?」
「え、あ、そういうわけじゃ……」
おろおろするルーフェイアに構わず、一歩前へ出る。ああは言ったが、最終的に自分が剣を振るうことになるだろう。
ルーフェイアがかけた防御魔法は確かに効果は絶大だが、持続時間はけして長くない。
そうでなくても戦闘というのは、長引くとろくなことが無い。カタをつけるのは早いほうがいいのだ。KBR>
右へ出ると見せかけて、全く反対の左前方へ出る。
「あなたたち、どいてっ!」
察したルーフェイアが邪魔な連中をどかしながら、逆方向へと出た。
予想と違う動きに、さぞびっくりしたのだろう。注目していた床の陰がゆらゆらと揺れた。
ルーフェイアの詠唱が聞こえる。
「実と虚の狭間、力ある鏡、虚を実と為し真理を映せ――フェ・ミロワール!」
確か、魔力を反射させるものだ。
(――なるほど)
ルーフェイアはこういうところは、やはり機転が効く。これで先ほどの光線を、無効化しようというのだろう。
案の定突っ込む自分達に対して、気を取り直したらしい合成獣が例の光弾を生み出す。
が、ルーフェイアもタシュアも全く怯まなかった。
光弾が打ち出される。
だがきいんと言う音がして、光はあらぬほうへと跳ね返された。ルーフェイアの魔法の威力だ。
残念ながら光弾は虚像をすり抜けただけで当たらなかったが、よほど予想外だったのか動きが止まる。
その虚像へ突っ込み、さらに右奥へ剣を突き出した。
鈍い手ごたえ。そして虚空から合成獣の姿がにじみだす。