Episode:36
(全く、足手まといな……)
思いながらも目の前の敵から視線は外さず、最優先で片付ける。
「あなたたち、動かないで!」
ルーフェイアの声が聞こえ、相手にしていた敵の一部がひるんだ。
もっともルーフェイアは、こちら側に対して言ったわけではない。後ろから来た者達がシュマーと見て、頭数を減らすために命じただけだ。
が、こちら側にも効果があった。相手にしていた敵の8割ほどが動きを止める。
(これでは戦場で、役に立たないでしょうに)
何が理由かは知らないが、シュマーの中でのルーフェイアの権力は予想以上だった。口で言うだけであんな異形とされた者までが従うなど、忠誠心どころの話ではない。常軌を逸していると言っていいくらいだ。
ただ確実性には欠けるものの、こういう局面では便利だった。一部だけでも敵を無力化できれば、後の展開が全く違う。
とりあえず、ルーフェイアの命令に従っていない、危険度が高い相手を先に始末する。
容赦なく首が飛び身体が両断され、さしものシュマーの面々もひるんだようだが、タシュアは意に介さなかった。
これが、「戦う」ということだ。
嫌なら最初からそんなところへ出て来なければいいし、出てきた以上は惨殺されることも許容するしかない。
ただ仲間がそうなっても尚、ルーフェイアの声に動きを止めた面々は、何もしようとしなかった。
ルーフェイアの命令と言うのはシュマーの人間にとって、かなりの拘束力を持つようだ。事実、前方を牽制しながら確認した後方では、何の動きも無かった。
タシュア相手ならまだともかく、シュマーの事実上のトップであるルーフェイアには手を出せないのだろう。
(自分の意思で動けないようでは、いつか墓穴を掘るでしょうに)
自身のことは自身で決めて、責任も取る。そういう生き方をしているタシュアにしてみると、他人に従う生き方は不可解としか言いようがない。
これで仮に自分の身に何かあったとしても、命令した相手に責任を問えるわけではないのだ。
まぁそこまで理解した上で従っているのなら、何も言うことはないのだが……。
と、気配を捉える。
今対峙している連中とは全く違う。強いて言うなら、先ほど倒した合成獣に近い。
「――先輩」
さすがに察したのだろう、ルーフェイアが隣へと来た。