表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/175

Episode:32

「あ、あれを、一撃で……」

 後ろで研究者の人が声をあげる中、合成獣は倒れた。

「ぼ、僕の作った合成獣より、ずっと強かったのに……」


 なんか一瞬殴りたくなったのは、気のせいだろうか?

 こんな合成獣を何体も作るってだけでもどうかしてるのに、さらに小さい子みたいに強さ比べするなんて。

 ぜったい生き物って、そんなふうに扱うものじゃないはずなのに。


「あ、あの、グレイス様?」

「今みたいなこと、二度と言わないで」

 さすがにあたしも声が冷たくなる。


「わ、分かりました……」

 どこか怯えたような声に、ちょっと可哀想だったかな?と思う。けどだからと言って、命をおもちゃにするようなことは許せなかった。


「いつまで遊んでいるのです、行きますよ」

 トドメとばかりに合成獣の首を落とした先輩が、あたし達に言う。

 その死体を見ながら思った。


 ――誰だったんだろう?


 シュマーの誰かと言うところまでは見当がつくけど、それ以上は全く分からない。実験材料――本当に嫌な言葉――にされた人の記録が残ってればいいけど、たぶん消されてしまってるだろう。

 あとで遺体だけでもちゃんと回収しよう、そんなことを思いながら先輩の後に続く。

 血の臭いでむせ返る、けど奇妙に冷たい通路。そこを歩きながら、あたしは先輩に訊いた。


「あの合成獣の本当の場所……やっぱり、音と気配ですか?」

「ええ」

 簡潔な答えが返ってくる。けど、続きがあった。


「それと、床ですね。場所によって微妙に、見え方が違いましたよ」

「あ……」

 どうりであれほど正確に、間合いが取れたわけだ。あたしはそこまで気づかなかったから、どうして先輩がきちんと剣を振るえたのか分からなかった。


「――まったく。この程度も気づかないようでは、幾つ命があっても足りませんよ」

「はい……」

 先輩の言うとおりだ。こういう小さなことを知っているか居ないかが、前線じゃ生死を分けたりする。


 ただちょっとだけ、教えてくれているのかな?とも思った。まぁこれは、あたしの勘違いかもしれないけど……でも知らなかったじゃ済まないから、答えてもらえるのは本当にありがたい。

 廊下は延々と続いていた。でも近いとはいえ島と島を繋いでいることを考えると、距離があるのは仕方ない。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ