表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/175

Episode:30

「いったい、どれだけやってるの?」

「分かりません。僕は言われたあの固体だけなので」

 このまま座り込んでしまいたくなる。生命をおもちゃにするような真似をしてるのに、何でこんなに知らん顔で居られるんだろう。


 この扉の向こうに居る「何か」も、元はここの研究者の誰かが作り出したものだろう。

 研究そのものがダメってことはない。もしそうなら、薬の研究なんかも全部ダメになる。

 けど、やっていいことといけないことがあるはずだ。その中でも生き物を好き勝手にすることは、いちばんやっちゃいけないことのはずだ。


 なのにここではそれが当たり前で、隣が何をしているかさえ気にしない状態だった。

 何だかもううつむきたい気持ちで、そっとドアを開ける。

 けど、そのまま動けなくなった。


「なに、これ……」

 さっきの三つ首の合成獣と似た、四つ足の獣だ。ただ違うのは、首にあたる部分から人間の上半身が生えていることだった。

 これだけで、ここで何をしていたのかおおよそ分かる。


 タシュア先輩が無言で進み出た。既に大剣が抜かれている。

 次の瞬間、先輩は一気に間合いを詰めていた。

 漆黒の剣が振り上げられる。


 ――けど。


 剣が触れたと思った瞬間、合成獣の姿がかき消えて、もう少し奥へ現れた。

「……ほう」

 予想外のことだけど、先輩が動じた様子はない。


 あたしもこれは初めて見たけど、要するに魔法だろう。魔視鏡なんかも要は魔法で映し出した幻影だから、たぶんそれと似たような原理だ。

 あとで出来たら覚えよう、そんなことを考えながら先輩の横に並ぶ。


「あの、あれ、助けるわけには……」

「相変わらず甘いですね。向こうは我々を殺すつもりですよ」

 確かに先輩の言うとおりだ。殺しに来る相手は、こっちも手加減なんて出来ない。

 それでも――助けたかった。


 理由は、半分「人」だからだ。

 いったい何をどうしたら出来るのかわからないけど、上半身が人間なんだから、誰か材料――そんなふうに言いたくない――人が居るはずだ。たぶん、シュマーの誰かなんだろう。

 それを殺したくなかった。


「あの、じゃぁ、少しだけ時間を」

「何をするつもりやら」

 言いながら先輩があたしに場所を空けてくれる。

 半人半獣の“それ”が、あたしに視線を移した。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ