Episode:26
「相手の位置も概ね把握できましたからね。長居は無用です」
「あ、はい」
出て行こうとする先輩の後を、慌てて追いかける。
そのあたしの後ろで声がした。
「じゃぁ、中央のほうにれんら――」
言葉が途中で止まる。そして何かが床に落ちる音。
振り返ると、さっきの研究者がしゃがみこんでた。肩を押さえる手を伝って、血が滴り落ちる。
彼の肩に突き立ってる短剣は、タシュア先輩の物だ。前にシルファ先輩に渡してたのを、見たことがある。
「まったく。どこまでも察しの悪い頭ですこと」
相当怒ってるらしい先輩が無造作に近づいて、床に落ちていた通話石を踏み砕いた。
「誰が連絡して欲しいと頼みましたか」
けど白衣の人のほうは、答えるどころじゃない。痛さにうめいてる。
とりあえずあたしは、いちばん先にやるべきことに取り掛かった。
「そこへ横になって、動かないで」
命じてから、短剣を抜きにかかる。
タシュア先輩は「放っておけ」という感じだったけど、口では何も言わなかった。
短剣を抜いた途端に、血があふれ出す。
「魔法で、治しておくから。あと、あたしたちのことは……内緒に」
「は、はい……」
最初からこう言えばよかったと、内心後悔する。そうすれば少なくとも、この人は怪我をせずに済んだ。
ただ幸い急所は外れてたおかげで、簡単な魔法をかけただけで血が止まる。
「あとは、誰かに診てもらった方が……」
「あ、大丈夫です。あとは自分で出来ます」
言って彼が、あたしの顔を見た。
――何か嫌な予感。
なんというか……こういうやたらとキラキラした目で見られると、大抵ロクなことにならない。
「グレイス様!」
「な、なに……」
手を合わせて拝みそうな雰囲気。
「奥へ行かれるなら、お手伝いします!」
「え、あ、ちょっと……」
困ってタシュア先輩を見たけど、完全に無視された。きっと呆れてるんだろう。
潜入するのに、手引きしてくれる人が居るのは確かに便利だ。ただこの研究者じゃ……足手まといになりかねない。
少し考えて、あたしは訊ねた。