Episode:23
「やれやれ、無駄にタフですこと」
言いながら先輩が大剣を、頭を全部落とした獣の胸に突き刺すと、ようやく動かなくなった。
足元をあふれた血が赤く染めていく中、あたしは白衣の男の人に向き直った。
「――説明しなさい」
他に何も要らない。あたしがこう命令すれば、シュマーの人間は全て話すしかない。
もちろん、これが効かない人も居る。シュマーの血が薄かったり、なんか性格がヘンに捻じ曲がってると、ダメだ。でも血に拘束されてるわけじゃないのに、個人的な信条であたしの言う通りにする人もいるから、何とも分からなかった。
「あの、説明といわれましても、どこから……」
「幼児ではあるまいし、そんなことまで一々指示されないと分からないのですか? シュマーの研究者が聞いて呆れたものですね。まぁだからこそ、こんなことを仕出かすのでしょうが」
タシュア先輩が辛辣な言葉を浴びせる。
ただ先輩がどう言っても従うわけじゃないから、あたしは少し考えて言った。
「……ここで、何をしてるの?」
「け、研究です」
さすがにそのくらいは、あたしでも見れば分かる。先輩のほうはもう呆れて言葉もないみたいで、その辺の資料を勝手にめくってる有様だ。
何だか疲れを覚えながら、再度訊ねる。
「何の研究?」
「えぇとその、僕はご覧の通り、戦闘力の高い合成獣を……」
それも見れば分かる。
「他には?」
この調子で、全部事細かに訊かなきゃいけないんだろうか?
「ほ、他には僕は……あ、でも、他の人はホムンクルスの研究なんかを」
瞬間、先輩が振り返った。
「ホムンクルスと言いましたね。そんなものを使って、何をしているのです」
けど白衣の人は答えない。
先輩があたしに目配せした。口を割らせろと言うんだろう。
「――答えなさい。ホムンクルスで、何の研究を?」
「申し訳ありません、その研究は、よく分からなくて……別エリアで、数人しか関わってないんです」
どうやら思ってたよりも、多くの人が分業していろいろやってるらしい。
けど目の前の研究者は、それ以上は知らなそうだった。
ならばと質問を変える。