Episode:21
――その理由が問題だけど。
シュマーのみんなが気づいてるかは知らないけど、許可する理由、いつだって「面白そうだから」だ。成功しそうだとか売れそうだとか、そんな考えは一切入ってない。
しかもそんないい加減な理由で、何故か上手く行ってしまうし……。
ただその母さんでも、「理不尽」なものは許さなかった。傭兵として前線へは嬉々として出て行って敵を倒すけど、非戦闘員には手を出さない。そういう類の区別には、むしろ厳しいくらいだ。
だからたぶんここでされている「何か」は、母さんが知ったら逆鱗に触れるようなことだろう。そうじゃなかったら、もっと堂々と言って、母さんに面白がられてるはずだ。
気持ちが鬱々としてくる。けど、このまま放置しておくことは、絶対に出来ないわけで……。
そうしてるうち、いよいよ階段の最後へとたどり着いて、先輩が足を止めた。
階段の終わりを告げるドア。この向こうに、答えがある。
近づいて向こう側の気配を探ったけど、何も感じなかった。
ドアノブに手をかけて――開ける。
「……あれ」
扉の向こうは、拍子抜けするくらいのがらんどうだった。機材や何かが少しはあって、明かりがついてるだろうと思ってたのに、それさえもない。
先輩と2人、廊下へ足を踏み入れる。
「動力炉、奥ですよね?」
「シュマーの施設ですよ。そのくらいも分からないのですか?」
怒っている先輩の言葉は、いつもに増して鋭い。
「すみません……」
「あなたが謝ったからと言って、ここで行われていた事が消えるわけではありませんよ」
事実その通りで、何も返せなかった。
足は止めないままため息をつく。ただ、不思議と涙は出なかった。
たぶん、臨戦態勢だからだろう。いつ襲われるか分からない状態で泣いてたら、命が幾つあっても足りない。
一応警戒だけはしながら、でも階段と同じような感じで奥へ進んだ。
と、先輩が足を止める。もちろんあたしも、ほぼ同時に足を止めた。
――何かの、気配。
右側にある扉の奥だ。
殺気は感じない。だから全くこちらに気づいてないんだろう。
ただ、人間のものとはちょっと違う感じだった。どちらかというと、何かの動物に近い。
先輩と視線を交わして壁に張り付いて、扉の向こうの気配を探る。