Episode:19
とはいえタシュア先輩はあっという間に見つけてしまったし、クローゼット自体を破壊されれば分かってしまう。
もう少しこういう偽装を勉強しようなどと思ってる間に、タシュア先輩が身を屈めてクローゼットへと入っていった。
あたしも慌てて後を追う。
扉代わりの背板の向こうは、当然ながら真っ暗だった。本当なら通路には魔光灯が備えられてるうはずだけど、魔力節約のために切ってあるんだろう。
光石を出して発動させる。自分の居場所を敵に知らせるだけだから本当は使いたくないけど、ここまで完全な真っ暗闇だとさすがに危険だ。
足元も壁も岩肌のままの通路。たぶん地下洞へ続く洞窟を、そのまま使っているんだろう。ただ足元はきちんと均されているから、つまづくことはなさそうだ。
通路は意外と広くて、幅は大人が三人手を広げたくらい。天井は大人の背丈の倍はあった。
その中を先輩と進む。
「――ルーフェイア、ここの地図は覚えていますか?」
「え、あ、詳しいのはさっき一度、見ただけなので……でも、だいたいなら」
夕べ見たほうだけでも、大雑把な造りは把握できた。
「そうですか。では動力炉へ向かいます」
「あ、はい」
それだけ言ってすたすた歩いてく先輩のあとを、小走りでまた追いかける。
先輩が動力炉にまず行こうとしてるのは、そこに人も物も集中してると考えたからだろう。
施設の一部だけを使うのに、広範囲に散らばると何かと面倒だ。魔力炉の効率やお互いの連絡を考えるなら、なるべくまとまっているほうがいい。
そしてまとまるなら、魔力炉の近くが減衰が少ないのもあって、いちばん便利なはずだった。だから、そこに全てがあるはずだ。
真っ直ぐ続く通路を歩いていく。
「階段で……降りますよね?」
シュマーの本拠地――何故か昔からファクトリーと呼ばれる――は地下だから、何かの方法で降りないとたどり着けない。距離が長いから出来たら昇降台を使いたいけど、見つかる可能性を考えると使えそうになかった。
「当然です」
予想したとおりの答えが返ってきて、ほっとする。絶対に無いと思うけど、「昇降台を使う」なんて言われたら、あたしじゃ説得できなかっただろう。
それからすぐ、竪穴の前へと着いた。
――どうやって掘ったんだろう?
今の本拠地もそうだけど、シュマーの地下施設は謎が多すぎる。
竪穴は小さいほうが昇降台で、大きいほうには階段が設置されていた。その階段のほうへ足を踏み入れる。