Episode:167
ドワルディその他が持ってきた資料とか、関係者締め上げて吐き出させた情報を総合すると、頭のいい連中が悪知恵絞っただけあって、確かにそうとう巧妙。事実あのタシュアも、偶然で気づいたっていうし。
ただそれでも、部外者が偶然気づくものを見つけられなかったってのは、あたしたちの非。もっと気をつけてればもっと早くに手が打てて、もう少し違う形にできたはずで……。
そんなことを考えてるうちに、棺が炭化してく。
スピードがいつもより速いのは、きっと炎が高温のせい。ルーフェイアの言うとおり、これならグレイシアは炎の中に長く居ないで済むはず。
そうしてずっと眺めてるうち、炎は収まってった。
横で泣いてるルーフェイアの頭を撫でながら、後ろのスタッフに声かける。
「悪いけど、あと頼んでいいかしら? ちょっとこの子、連れてくわ」
「了解です」
申し訳ないと思いながら、ルーフェイアを連れてここを離れる。
案の定誰も居ない場所まで来ると、この子が動かなくなった。
「大丈夫って聞くのも、無駄そうね」
「大丈夫……」
どう見たって平気じゃなさそうなのにこの子ったら、口だけはそう言うし。
っても絶対、自分じゃ「ダメ」なんて言わない。ルーフェイアはその辺はかなり強情。
だから、抱き寄せる。
ルーフェイアのほうも逃げようなんてしなくて、すっぽり腕の中に納まった。
――可愛いかも。
最近は抱こうとすると逃げちゃうから久々。ただルーフェイア本人は、そんなこと考える余裕なんかないわけで。
「ど、どう、して……」
泣きながら切れ切れに言う。
「こんなの、ない……」
この子の言いたいことは分かるけど、答えようがなくて、ひたすら金髪を撫でる。
正直あたしも、グレイシアにも同じ事をしてあげたかった。
けして楽じゃないけど、あんなふうに押し込められてるよりはずっと自由な、そういう生活をさせてあげたかった。
それがムリでも、せめて十分な治療くらい常に受けさせてあげたかった。
けど娘が泣いてるのに、あたしまで泣いてなんていられない。
何より、やらなきゃいけないことが山積み。あの連中のことだの施設のことだの、医療関係の人間の再編だの、とっとと手をつけないとまた大変なことになるはず。
ってもこれは、今ルーフェイアに言うことじゃない。
「あとで、葬送の儀やるわよ」
「……うん」
あたしの言葉に、腕の中で金髪がうなずいた。




