Episode:166
◇Caleana
連中を始末したあとは、ドタバタだった。
ルーフェイアの意向どおりに時間を置いて連絡して、あの連中を回収して。それからシュマーのやり方に則って、グレイシアとのお別れの会の用意をして。
その間に船の用意が出来て、タシュアはとっとと帰っちゃったし。
いちおう一言「葬儀は?」って聞いたけど、「出る義理はありません」で切り捨てられた。
――まぁ分かるけど。
薄情って言えばそうだろうけど、タシュアは元々シュマーとは無関係。たまたま成り行きで関わって、グレイシアの希望でここまで来たけど、それ以上は……って言うんだろう。
そして今、荒れた野にぽつんとある岩の上に、棺は置かれてる。
一緒に居るのはあたしとルーフェイア、ファールゾン、それに最後にグレイシアを世話した数人。
可愛かったグレイシアを知る、数少ない人間たちだけ。
「ルーフェイア、もういいかしら?」
「……うん」
隣でルーフェイアが頷いた。
それを確かめて、詠唱に入る。
「空の彼方に揺らめく力、絶望の底に燃える焔……」
ホントのこと言ったら、魔法の威力が桁外れのルーフェイアがやるのがベスト。けどどう考えたって、優しいこの子にはグレイシアを焼くなんて出来っこない。
だから今回は、あたしがやるつもり。
「よみがえりて形を成せ――フラーブルイ・クワッサリーっ!」
呪に反応して、炎が舞い上がる。
けどそのとき、隣から詠唱が聞こえて。
「時の底にて連なる炎よ、我が命によりて形を取り……」
「ルーフェイア?」
泣きながら、優しいこの子が呪文を紡いでた。
「うつつの世に姿を現せ――来いっ、サラマンダーっ!」
召喚された精霊が生み出す、比べ物にならない圧倒的な炎。それを見ながら、ルーフェイアが言う。
「だって、時間が長いと……可哀想……」
そういうことか、と思う。
火勢が弱けりゃ当然、時間はかかっちゃう。ただルーフェイアには、長い時間炎の中にグレイシアを置くのも、焼くのと同じくらい耐えられなかったみたい。
――本当に優しい子。
どうしてこんないい子が、戦闘なんてとんでもないものに向いちゃってるのか、どうやっても納得いかない。
グレイシアもそう。ルーフェイアに似て優しくて素直で、なのになんであんな目に遭わなきゃいけないのか。
まぁグレイシアの件は、あたしにも責任があるけど。