Episode:163
ふとこの辺、ファールゾンに似てるな、と思った。
けど不思議なのは、ファールゾンだと何をやっても角が立つのに、母さんだとみんな「仕方ない」で納得してしまうところだ。
どっちも十分迷惑かけてるのに、この差はなんなんだろう?
ただ、訊くのはやめる。
何しろ昔母さんに似たようなことを訊いたら、「人徳」とかいうとんでもない答えが返ってきた。だから今訊いたって、おんなじような答えが返ってくるはずだ。
正直「人徳」なんていうなら、今書けてる迷惑行為を全部すぐにやめて欲しいのだけど……。
ため息をつきながらグレイシアの部屋へ戻ろうとしたら、また母さんに声をかけられた。
「あなた、お茶に付き合いなさいよ」
「え……」
間違ってもそういう気分じゃない。けど母さんは相変わらずで、ちっともそんなこと構ってくれなかった。
「お腹すいちゃったのよね。バタバタして今朝からロクなもの食べてないし。タシュアもどぉ?」
「いただきます」
食べることだけは逃さない先輩が、あっさりと母さんの話に乗る。
「よかった、じゃぁ決まりね。さっき個々へ来る前に用意だけはさせておいたから、すぐ食べられると思うわ」
いいながら母さんが元の部屋へと入った。
「あら」
「おや」
母さんとタシュア先輩の声につられて家の中を覗き見ると、もう軽食が並べてある。
「さすが、気が利くわぁ」
「感心する理解力があるのなら、ご自分でも真似をされればいいでしょうに」
「そんなことして、他人の仕事とったらダメじゃない」
また2人の、よく分からない堂々巡りが始まった。
「真似をするのがどうして人の仕事を取ることになるのか、理解できませんが」
「だって住み分けなきゃ」
もう何を言ってるのかさえよく分からない状態だ。これでシュマーのトップというんだから、ほんとどうなってるんだろう? タシュア先輩も呆れたみたいで、それ以上言わない。
ただ当の母さんはいつもどおり平気な顔だった。
「まーどうでもいいわ、食べましょ。ほら座って」
「では」
言われるままに先輩が座ると、どこからか人が出てきてお茶を注いだ。
――いつも不思議だけど、一体どこにいるんだろう?
あたしの部屋でも、大抵呼びもしないうちに人が来るから謎だ。