表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
153/175

Episode:153

 それだけじゃなく、ここに居る人全員がそんな感じだ。あたしのことはまだともかく、母さんのことはきっとなんとも思ってない。

 それは、人としては正しいと思う。けどシュマーとしては、やっぱり何かおかしかった。


 ただ、理由が思い当たらない。シュマーの一員として世話になってる身で、曲がりなりにもトップに立って仕切ってる母さんを、どうして見下せるのか分からなかった。

 けど母さんのほうは、何か心当たりがあるみたいだ。戸惑ったような感じはカケラもない。


「まぁ、あなたからしたらそうなんでしょうね」

 かなり怒ってるはずなのに、世間話でもしてるような調子で母さんが言う。

「けどね、大事な子供が1人死んだわ」

 それに答えたのはさっきとは違う、もう少し若い人だった。


「子供? 被検体でしょう。それも、羊水槽から出すことさえ出来ない」

 あまりの言い草に、思わずあたしも動きかける。

 けどそれよりも早く、タシュア先輩がすっと動いた。

 いつもと同じで足音も立てず、言い放った研究者のの正面に立つ。


「なんだねキミは? だいたい部外者が――」

 言葉は途中で途切れた。

 この間ファールゾンにやったみたいに、先輩がスタッフの顎をつかんで、無理矢理椅子から立たせてる。


「~♪」

 母さんが軽く口笛を吹いた。

 ――やっぱり、おかしいかも。

 前からまともじゃないとは思ってたけど、母さん完全にこの状況面白がってる。


「どうやらご自分がどういうことをしてきたのか、全く理解されていないようですね」

 タシュア先輩の声は、寒気がするほど冷たかった。


「絶えること無き地獄の業火よ――」

 先輩の口から、魔法の韻がこぼれる。そして広がる、肉が焦げるあのイヤなにおい……。

 顎をつかまれたスタッフに、青白い炎がまとわりついていた。

 消しとめることの出来ない魔法の炎が、身体を焼く。


「いかがですか? 生きながらその身を焼かれる気分は」

 返事はない。だいいち顎をつかまれてるから、答えられるわけがない。必死、としか言いようのない顔で暴れてるけど、ただそれだけだ。


 皮膚が焼けて鮮やかな色の筋肉がのぞいて、けどそれも、炎にあぶられてすぐに色を変えた。

 目の前で、声も上げられずに人が焼かれていく。

 さすがに止めようと動こうとして――それより早く、先輩が口を開いた。


「人の命をもてあそぶということが、少しは理解できましたかね? まぁ、熱さと痛みで、それどころではないでしょうが」

 いつもと何も変わらない、ごく普通の口調。

 血が飛び散るわけでもないし、魔法が派手に発動するわけでもない。だからこそ不気味だ。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ