Episode:151
シュマーの人たちは、身内だ。それを疑うなんてしたくない。
けどグレイシアはその身内にひどい目に遭わされて、結局こんなことになった。それはやっぱり許せない。
だとしたら、あたしはどうすればいいんだろう……?
分からなかった。
絶対に何か言わなきゃいけないはずだし、二度とやらないようにも手を打たなきゃいけない。そのことは分かる。
けど、それ以上は何をすればいいんだろう?
ただ、約束だけさせても無駄な気はした。あんまりそうあって欲しくないけど、こういうことっていうのは大抵何度も起こる。
でもそうだとしたら、どうすれば二度と起こらなくできるのか。その答えがまったく分からない。
そんなことをいろいろ考えてるうちに、もう昇降台の前まであたしたちは来てた。
母さんが操作盤に触れると、ドアが開く。
みんな無言だった。きっと心の中では何か考えているんだろうけど、母さんも先輩も言葉には出さない。
その間にも昇降台はどんどん上がっていって、一番上で止まった。
開いたドアの向こうは、乗る前と同じような廊下だ。
「直接地上ではないのですか」
「いろいろ面倒だもの」
先輩の言葉に母さんが短く答えて、また歩き出す。
シュマーの地下の施設からは母さんの言うとおり、直接は出られない造りだ。たしかここは、地上の漁村にある、いくつかの家の地下室につながってる。
ただ、どこを使うかまではあたしには見当が付かなかった。たぶんいちばん大きい家じゃないかと思うけど、何となく向かってる方向が違う気がする。
――覚えないと。
今まで嫌がってあんまりここへ来てなかったせいで、こんな簡単なことさえ分からない自分が情けなかった。どう考えてもこれじゃダメだろう。
後で誰かに地図を出してもらって、一つ一つ歩いてみよう、そう思いながら後をついていく。
母さんは迷わず歩いて、何度か角を曲がって、最後に登り階段に行き着いた。
「この先ですか」
「先というか、地下室出て地上だけどね」
また短いやり取りがあって、母さんが階段の先にある大きな石を押す。
「こうなってたんだ……」
どう見てもただの石の壁だと思ったのに、ちょっと押すと上手くスライドして、文字通り「壁」が開いた。
ぽっかり空いた向こうは、ごく普通の地下室だ。貯蔵に使われてるみたいで、根菜類なんかがその辺に山積みになっている。