Episode:149
13歳にもなる娘が居るカレアナだが、不思議とそうは見えない。そして顔立ちがいいのは確かなルーフェイアの母だけあって、見た目はいい。更に匂い立つような身体つきと色気があるため、嫌でも男の視線を惹く。
それが分かっていて微笑むのだから、効果の程は推して知るべしだった。
(やれやれ……)
もういちいち突っ込むのも面倒になりながら、成り行きを見守る。
だが意外にもカレアナは、それだけで青年を下がらせた。あれでもう気が済んだらしい。
そしてタシュアのほうへ顔を向けた。
「そゆわけだけど、どする?」
「何がそういうわけで何をどうするのか、まったく意味が分かりませんが? 先ほどの話はもうお忘れのようですね」
本当にこの女性、学習能力があるのだろうか?
「……さっきの話ってなんだっけ?」
「人類の言葉で言って頂かなければ通じない、という話です」
ついペースに載せられて答えたが、通じたとは思えなかった。
「んー、ちゃんと話が成り立ってると思うけど」
「そう思っているのは貴方だけでしょうね」
「あらそ」
案の定何も堪えていない声で、カレアナが答えた。
そして再度訊いてくる。
「で、どうする? あたしこれから、あいつらとっちめに行くけど」
「……すぐ、が今すぐでしたら」
さっさと帰りたいのが本音だ。だがグレイシアをあんな目に遭わせた連中には、それなりの礼はしたいところだった。
これでさらに数日かかるというなら話は別だが、「今すぐ」というならいいだろう。
「だったら行きましょ。ルーフェイア、あなたも来なさいね」
「……うん」
金髪の後輩が、少し青ざめた表情でうなずく。さすがにこの子も、これから何が起こるか理解しているらしい。
カレアナが歩き出す。
「どちらへ?」
「地上。地下じゃ暴れて何か壊れても困るし」
「ほう」
そう言うからには、カレアナは何か騒動が起きることを想定しているのだろう。逆に言うなら、タシュアが少々意趣返しをしても問題はない、ということだ。
(……少しは気晴らしが出来ますかね)
非道を通り越して邪としか言いようのない連中は、腹に据えかねていたところだ。グレイシアがそれで還って来るわけではないが、多少思い知らせるくらいはいいだろう。
そんなことを思いながら、タシュアはカレアナの後を歩いていった。