表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
141/175

Episode:141

「ルーフェ、どしたの?!」

「分からない……でも、グレイシアが」

 様子がおかしい。それだけは確かだ。


「グレイシア、どこか痛い?」

 母さんが訊いたけど、やっぱりはっきりした答えがない。いつもだったら言葉にはならなくても何か返ってくるのに、それがなかった。


「眠いの?」

 母さんが重ねて訊く。

 言葉を持たないグレイシアは、声は出さない。けどやっと少しだけ、反応したのが伝わってきた。


 でも、「反応しただけ」だ。何かを考えるとかじゃなくて、聞こえてきた音を認識した、っていう程度でしかない。

 母さんとタシュア先輩の顔を見る。けどどっちも険しい顔だ。

 つまり――そういうことだ。


 元々グレイシアが罹っていた病気は、治せない類のものだ。ただそれでも、いろいろ治療すれば楽になったり長生きできて……だからこそ、ファールゾンたちはここまで無理をして連れてきた。


 ただそれでも、急変するときはする。元気だったと思ったら急に高熱を出して、それっきりってことも多い。

 多いのだけど……。


 扉が乱暴に開けられて、スタッフたちが駆け込んでくる。

「すみません、そこを」

「あ、うん」


 慌てて場所を譲ろうとして、でもあたしは動けなかった。

 グレイシアが、手を離さない。

 もうまともに考えられないほど朦朧としてるのに、あたしの手だけはしっかり握ってる。


「ごめんなさい、この子……離して、くれなくて」

「ではそのままで」

 意外なことに、あっさりと許可が出る。あたしが居たら陣のジャマになる、ってわけでもないらしい。


 母さんとタシュア先輩だけが陣から出た。持ち込まれた魔力石が、次々と陣の要所に配置されていく。

 そして、開放。でも何も起きない。グレイシアの様子は変わらない。

 一瞬スタッフの人たちが一斉に舌打ちでもしそうな顔になって、でも淡々と石を変え始めた。


「ファールゾンはまだなの?」

 母さんが厳しい声で訊く。

「それがその、今日は他でも急変が……」

「つまり重なった、と。タイミングが悪いわ」


 急に様子がおかしくなったときの対応は、一刻を争う。だから逆に言うと、一度手をつけたら一段落するまで離れられない。

 それが同時に起こったら、……後から急変した人は、当然手が足りない。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ