Episode:140
◇Rufeir
ふっと目が覚めた。
――何時だろう?
何しろここは地下だから、時間がよく分からない。
「えっと……」
暗い中、枕元を漁って時計を探し出す。夜目が利く母さんはあんまり灯りを点けないから、あたしにはかなり不便だった。
「……あった」
やっと見つけて時間を確かめると、まだ明け方前だった。自然と目が覚めたから朝だと思ったのに、違ったらしい。
なんとなく眠れなくて、そのまま起き上がる。
隣の母さんは、すごくよく寝てた。これじゃ敵襲があっても起きなさそうだ。
暗い中手探りで寝室を出て、隣の居間の明かりを点ける。なんだか目がさえてしまって、寝れそうにない。
保冷庫を開けて、あたしは飲み物を取り出した。少し何か口にすれば、また眠れるかもしれない。
ここへ来てから2日、タシュア先輩はたぶん今日帰るはずだ。
ただ……あたしは決めかねてた。学院のことを考えたら一緒に戻るのが一番だけど、やっぱりグレイシアのことを放っておけない。
グレイシアの容態は、どうも手放しで喜べるような状態じゃないらしい。せっかくここへ来たのに、一進一退の感じだ。長旅がまずかったんだろうか?
ここまで連れてくれば、大丈夫だと思ってたのに……。
心配になって、隣の部屋をそっと覗く。
暗い中、眠っているグレイシア。
ほっとしてベッドへ戻ろうとして……呼び声が聞こえた。
「グレイシア?」
慌てて魔光灯を点けて駆け寄る。
「どうしたの?」
さっき聞こえた声は、いつもと違ってどこか苦しげだった。
「グレイシア!」
大きな声で呼んでやっと、グレイシアが顔をこっちへ向けた。
手を握る。
よく分からない。分からないけど、嫌な感じだ。
「苦しい?」
けど答えはなくて、朦朧とした感じが伝わってきただけだった。
「誰か来て!」
通話石に言う。
あたしの声に気づいたんだろう、タシュア先輩と母さん――よく目が覚めた――もこっちの部屋へ駆け込んできた。