Episode:14
例え廃棄したとはいえ、元はシュマーの施設なのだ。完全に埋めたとでもいわない限り、定期的に調査なりをすべきだろう。実際それをしているならば、あの連中がやっていたことはある程度防げているはずだ。
純粋に腹が立つ。
やられた側にしてみれば、理由など無意味だ。ただただ「返せ」の一言のはずだ。元に戻せ時間を返せ以外に、望みが在るわけもない。
だが本拠地の中をあちこち調べたが、例のエルニ群島で行われている“何か”に関する記録は見つからなかった。あるのは全て、廃棄される前のものばかりだ。
やはりこれは、完全に秘密裏に行われているのだろう。
(……もう一度よく、調べてみますか)
もぐりこむ先をシュマーの本拠地から、何か良からぬことが行われているらしき施設へと戻す。
施設の連中が、潜り込まれたことに気づいた様子はなかった。だいいち先ほども思ったが、本拠地と違って防御がかなりおざなりだ。
推測だが……完全に隠れていろいろとやっている上、今のところどこにも気づかれていないので、油断しきっているようだ。
あまりの無防備さに呆れ果てながら、慎重に見て回る。
ただここで見つかる記録は、殆どがシュマー語だった。そのため意味がよく分からない。
(やはりまず辞書ですかね?)
が、この施設にはなさそうだ。シュマー語を使う者が殆どのようだから、誰も困っていないのだろう。
先ほどまでいた本拠地で盗んでくるべきだったと思いつつ、記録だけでもと集めて回る。
位置はほぼ把握できた。あとは、何が行われているかだ。
読むだけならあとでも出来るのだから、まずは記録だけでも集めておくべきだ。
万が一進入された事にここの連中が気づいたら、全てを消してしまいかねない。そうなったら証拠が消えてしまう。
逃げ得など、タシュアはさせる気はなかった。
拾い読みした単語から察するに、ここで行われているのはおそらく、人の領域を踏み越えたものだ。
――許す気は全くなかった。
それがどういうことで何を壊すのか、自分がいちばんよく知っている。そういう嫌な自信がタシュアにはあった。
脳裏を、弟たちの姿がよぎる。
生きたかったはずなのに生きられず、タシュアに向かって「生きて」と言いながら、彼らは死んでいったのだ。
だから、許す気はない。
ひとつため息をつくと、タシュアはまた詳細を調べ始めた。