Episode:132
グレイシアたちの後を、ジャマにならない程度の距離でついていく。
「……清浄区?」
「はい」
行き先からそうかなと思ったけど、答えを聞いたときはちょっとため息をつきたくなった。
そこへ行くって事は、要するに重症ってことだ。もちろん見てて見当はついてたのだけど、改めて治療側から言われると、やっぱり辛いものがある。
けど、その思いを押し殺した。
グレイシアとあたしは、年は違うけど双子みたいなものだ。そのせいか、簡単に思ってることが伝わってしまう。だからあたしがここで不安がってたら、グレイシアはもっと心配になってしまうだろう。
厳重に仕切られた何重ものドアをくぐって、しっかり手を洗わされて、特殊な魔法陣を通る。何でもこの上を通ると、人間によくないものをかなり消せるらしい。
――実験段階らしいけど。
ただそう長時間居るわけでないから、まず試してみろと、母さんが設置させた。
けどグレイシアにはあまり良くなかったみたいで、ちょっとだけ身じろぎする。
「大丈夫なの?」
「す、すぐ抜けます」
ベッドの移動するスピードが上げられて、大急ぎで抜けた。
心配で様子を見てたけど、グレイシアは大丈夫だったみたいだ。さっきちょっと動いた後は、大人しくしてる。
「す、すぐ部屋に着きますから」
「分かった」
母さんが脅したせいでスタッフがちょっと怯えてるけど、まぁいいかなと思う。これなら絶対、あの子に何かしたりしないだろう。
連れて行かれたグレイシアの部屋は、あたしたちが良く使う、いちばん広い部屋だった。
でも道具がばたばたと運び込まれてるから、元は違う部屋を使おうとしてて、急いで変えた感じだ。これも母さんが「総領家の子だ」って言ったせいだと思う。
やわらかいベッドに、グレイシアが移された。
「……苦しくない?」
近寄って尋ねると、グレイシアがかすかにうなずく。
「何かあったら……すぐ言ってね?」
またこの子がうなずく。あたしになら伝わるのを、もう分かってるみたいだ。
ただあたしの場合、手を繋いでなくて伝わるかどうかが分からないけど……。
「あ、あの、グレイス様?」
「なに?」
横から声をかけられて答える。
「そ、そのですね……この子の治療を」
「あ、うん。ここ空ければいいの?」
確かにあたしがすぐ傍にいたら、細かい作業は出来ないだろう。