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Episode:131

 すっと母さんがあたしの隣に立った。

 そして不敵な笑みで周囲を見回しながら宣言する。

「あたしも今回は詰めるわよ。誰が何と言おうと、グレイシアは総領家の子だしね」

 あたしのとき以上の緊張が周囲のスタッフに走った。


 ――こう言えば、いいんだ。


 母さんあんな人だけど、こういうところは感心する。もう15年くらい、このシュマーを預かってるだけの事はある。

 母さんの言った「総領家の子」っていうのは、シュマーの人にとっては脅し文句に近い。


 シュマーは主に3つに分けられる。

 ひとつがよく噂でも言われる、傭兵家業をしているその名のとおりのシュマー。

 そして元はシュマーの中でもあまり戦闘に向いてなくて、後方支援に回った人たちが祖のロシュマー。


 残るひとつが総領家だった。

 総領家はグレイス・メイアの直系で、シュマー家の祖だ。ただ、いわゆる人間の中の「○○本家」とはだいぶ違う。


 例えていうなら、女王蜂と働き蜂の関係が近いだろう。理由は分からないけど、総領家はシュマーとロシュマーに支配力を持つ。

 だから母さんがグレイシアを「総領家」と言い切ったことは、シュマーの人間からしてみると一大事だ。それだけで絶対に逆らえない。


 まぁグレイシアは子供だし大人しいから、困らせるようなことはないだろうけど……。

 けどあの言葉があれば、シュマーの人間のほとんどは、間違いなくグレイシアに忠誠を尽くす。だからとんでもない一部にさえ気をつければ、嫌な思いをしないで済むはずだ。


 それに仮にそういうった「一部」が何かをしようとしても、周りが今度は許さない。総領家の子に何も無いように、常に誰かが監視するだろう。

 本当にこういうイザというときの立ち回りは、母さんは凄い。


「あの、グレイス様、その子を部屋へ連れて行きたいのですが……」

 完全に及び腰で、白衣の人が声をかけてくる。母さんの言葉が効いてるらしい。


「うん、連れて行ってあげて」

「いえその、そこにおられると、その、危険……と言いますか」

「え?」

 慌てて見回す。どこかに刃物でも落ちてただろうか?


「――ルーフェイア、あなたがジャマなのですよ。その位置に居ては、ベッドが動かせません」

「あ……」

 グレイシアを心配しすぎて、移動のジャマになってたらしい。


「ごめんなさい」

 慌てて離れると、スタッフがグレイシアのベッドを動かし始めた。


「えっと、先輩は……?」

「私は――あの子の部屋までは、一応」

 何か言いかけて、でも部屋まで行くって言ってるのは、グレイシアが先輩を見たからだろう。





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