Episode:127
「母さん、もうやめようよ……」
「え? あたし何もしてないわよ?」
答えを聞いているうちに、こっちが情けなくなってくる。
「ともかく、静かにしようよ……」
「そうね」
なんで母さん、娘のあたしにたしなめられてるんだろう?
タシュア先輩がやれやれという風にため息をついた。
「全く、シュマーというのはどうして徹頭徹尾、そこまで非常識なのです」
「ご、ごめ――」
「あら、ヒドいこと言うわね。あたしはともかく、この子は十分常識的よ?」
あたしの言葉を母さんが遮る。
「おや、ご自分の非常識は認めますか」
「何言ってんの、あたしはごく普通よ」
「……普通が裸足で逃げ出すでしょうね」
聴いてて頭が痛くなるようなやり取りだ。しかもその原因が、自分の親っていうのが……。
「母さん、隣の部屋行こう」
仕方なく誘う。母さんと二人って言うのは疲れるけど、ここでタシュア先輩と一緒よりはマシなはずだ。
「あーら、あなたから誘ってくれるなんて嬉しいわぁ」
「いいから、行こう……」
母さんが嫌いってワケじゃないし、けっこうできる人だと思うけど、なんでこんなに世話が焼けるんだろう?
「まったく、娘に面倒を見てもらってどうするのですか」
「いい娘でしょー。あなたも要る?」
「要りません」
またワケのわからないやり取りになった。
「母さん、ほら」
ちょっとでも早く母さんをここから出したくて、背中を押す。
「じゃぁねー♪」
母さん、背中押されながらタシュア先輩に手を振ってるし……。
ともかくこれ以上騒ぎが起こらないうちにと、隣の部屋へ急いで入る。
「さー、さっきの続きしましょ。ほら、買ってきたのあるんだから」
タシュア先輩じゃないけど、ため息をつく。どうして母さん、こうメゲないんだろう?
「あらどしたの? 見ないの?」
「見るけど……」
と、母さんが澄まして言った。
「このくらいの楽しみないと、船旅の間滅入るわよ?」
「あ……」
いつも考えなしの母さんだけど、今回は本気でちゃんと考えてたらしい。
「えっと……これ?」
あたしは、母さんが買ってきてくれたものを手に取った。




