表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
117/175

Episode:117

 けどイマドのほうは、何も気にしてないみたいだった。

「いいっての。何が食いたい? 今から仕込んどいてやるよ」

「え……ごめん、分かんない……」


 あたしが料理はまったく分からないのイマドも知ってるはずなのに、なんで訊くんだろう?

 だけどイマドのほうは、分かってて訊いたらしい。


「んー、リクエストあったらって思ったけど、やっぱ別にねーか。んじゃテキトーにやっとくわ」

「うん」


 それにしてもイマド、また料理の腕を上げたんじゃないだろうか? 正直ここまできたらシエラなんてやめて、町でコックだってやってけると思う。

 ただ彼の場合トラウマがあるから、ちょっと無理そうだけど……。


 あれがいいだの、ここで売ってるだの、イマドのそんな話を聞きながら建物を抜けて、船着場への坂を降りていく。

 桟橋には、もう人影があった。


「やれやれ、保護者まで同伴ですか?」

「ただの荷物持ちですって」

 タシュア先輩の言葉にもまったく動じないで、イマドが平然と返す。


「甘やかしすぎでしょうに」

「んでも、俺だけ手ぶらじゃカッコつかねぇんで」

 そのまま続くかな、と思ったけど、どういうわけか話はそこで終わってしまった。イマドとタシュア先輩の顔を見たけど、どっちもこれ以上言い合う気はなさそうだ。


「……行ってくるから」

「なんか作っとくわ」

 短くそれだけ交わして、あたしは船の中に、イマドは元来た坂を引き返す。

 後からタシュア先輩も乗り込んできて、そのあと少しして船が動き出した。


 時計を見ると、待ち合わせの時間より少し早い。

 たぶん船の時刻表の関係で、ひとつ早い便に乗れてしまったんだろう。けど遅れたわけじゃないから、別にいいかなと思った。

 冬のせいか少しゆれる船は、でもすぐにケンディクの波止場へ付く。


「グレイス様」

 いつも手際のいいドワルディが降りたところで待っていた。


「病院なんでしょう?」

「はい。行かれますか?」

「もちろん」

 あたしの答えを予想してたみたいで、すぐに車が呼ばれた。


「……特定の相手にだけ、至れり尽くせりですこと」

 タシュア先輩が冷たく言う。

 グレイシアをあんな目に遭わせて、それなのに、って言いたいんだろうと思った。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ