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Episode:116

「――南大陸ってぇと、当分留守だな。んでも今年は叔父さんとこ行かねぇから、すれ違いはねーか」

「え、行かないの?」

 ちょっと嬉しくなる。

 でも行けない理由に思い当って、あたしは下を向いた。


「ごめん……そうだよね、行けるわけ、ないよね……」

「気にすんなって。つかお前いなきゃ、あの町今頃全滅してるって」

「うん……」


 イマドがいつも帰ってるルアノンの町は、いまも非常事態の最中だ。

 最近聞いた話じゃ、まだゲリラ戦が続いてるっていう。ただ本格的に攻勢をかけるところまでは行っていなくて、ロデスティオ軍が根城に出来ないように嫌がらせするに留まっているらしい。

 それに幸いまだ地下通路と避難先は見つかってなくて、町のみんなは無事だそうだ。


 でも避難が長期になってきてるから、さすがに子連れの家なんかは別の場所へ引っ越してるとも聞いた。たしかネミちゃんとそのお母さんのアーネストさんも、今は三姉妹の真ん中、ヘイゼルさんの農場へ身を寄せているはずだ。

 こんな状態で、帰れるわけがなかった。


「みんなは……元気?」

「ああ。ユーニス姉辺りは、相変わらず写影機片手に走り回ってるな。おじさんも医者だから、仕事にゃ事欠かねぇし」

「そっか……」

 それがいいのかは分からないけど、でも何もすることがないよりはマシだろう。


「にしても、シエラで休みってのは何年振りだ? ガキの頃はそうだったけど、あんま覚えてねーんだよな。新年の騒ぎとかあったっけか?」

「えっと……ある、かも」

 たしかシエラじゃいつも、年末最後の日はパーティーをしてたはずだ。


「んじゃご馳走食えるか。つかよく考えたら、俺今年はなんも作らなくていいってやつか?」

 イマド、何か違うところに感動してる。


「なんかすげぇ……俺、今度からルアノン帰るのやめっかな」

 それっていいんだろうか? 何かちょっと違う気がするけど……。

 でもこういう展開だとすると、休みの間にイマドの作ったもの、食べられなそうだ。


 ――食べたかったんだけどな。

 ちょっとがっかりして下を向く。


「どした?」

「え? あ、うん、何でもない……」

「ウソつけ」


 言い繕ったはずなのに、その場で見抜かれた。

 イマドが立ち止まる。


「あー、そゆことな。つか、そんなん心配すんなって。そんくらいなら作っから」

「え、でも……」

 いま嫌がってたのに、頼むなんて出来るわけがない。





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