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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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犯人は現場に戻ってくる

作者: 小隹雀
掲載日:2026/06/13

「あああああああーッ!!!」


 森中に絶望した俺の声が響き渡る。


 俺は斜面に転がるパートナーの亡骸を見つけた。

 彼女の胸は弾丸で撃ち抜かれており、血を吹き出している。鉛は的確に、彼女の心臓にとどめを刺した。


 背後から足音が聞こえ、俺はすぐに振り返る。


「うるせーな」


 獣道を歩いてきたそいつの図体は、俺の倍でかい。体格が良いこいつは熊だ。


 俺は警戒心を露わにする。


「お前が彼女を殺したのか!?」

「今来た所だってのにか?」


 武器になりそうなものは持っていない。

 本当に彼女を殺していないのか⋯⋯いいや、そう決まったわけじゃない。

 こんな所に現れるんだ。きっと、目的があるはず。


「彼女を殺してから、ここに戻ってきたんだろ!!」

「なあ⋯⋯気が動転しているのはわかるが俺は殺してない。何も証拠はないだろ?」


 気になるのは、こいつの体が水で濡れていること。犯行に及ぶ時、血が付着したのなら⋯⋯


「じゃあ、体がずぶ濡れなのはなんでだよ!! 彼女の返り血を浴びて洗い流してきたんだろ!?」

「すぐそこの川の中に入ってたからな。今日は美味い鮭が捕れた」


 本当に彼女を殺していない⋯⋯?

 だとしたら、誰が彼女を——


「第一、なんでお前は彼女を守ってあげなかったんだよ」

「それは⋯⋯今日、食べるものを探しに遠出してたからで⋯⋯」

「だったら、悪いのはお前だな」

「⋯⋯何が言いたいッ」


 あいつは鼻で笑ってくる。


「そんな大事なもんなら肌身離さなきゃいい話だろ? 一緒に食料集めでも何でもすれば良かった話じゃないか」

「お前にはこの子のお腹の膨らみがわからないのか?」

「ははっ、そうだったのか。てっきり、餌の食い過ぎでぶくぶく太ってるだけだと思ったぜ」


 こいつは俺のことをおちょくるばかりだ。それは、体格差のある俺では敵わないことを知っているから。


「子供がいるんだったら家に籠っておくべきだったな」


 そうだ⋯⋯。なぜ、彼女は外を彷徨いていたんだ?

 家の中に誰かが侵入してきたのか?


「⋯⋯お前はどうしてここに来たんだ?」

「俺は空を飛んでいる鷹を目印にここまでやってきただけさ」


 頭上を見ると確かに、晴天を飛ぶ鷹の姿が見えた。

 いつの間に——


「早くしたほうがいいぞ。こんな野ざらしだったら、すぐに死骸を食われちまう」

「お前も鷹と同じく、彼女のことを今晩の食事にするのか?」

「いいや。残念なことに鮭を食べすぎたみたいでね、そんな気はないよ。それか、お前と話してて食欲が失せたのかもしれないな」


 そんな時だった——


 森中に銃声が響き渡り、あいつは一目散に藪の中へと消える。


 俺も逃げなきゃ⋯⋯


 立っていることもできず、俺は彼女の死骸のすぐ横に倒れる。

 心臓からは真っ赤な血が吹き出していた。


 体を銃弾に撃ち抜かれたみたいだ。


 狐は人間に殺された。

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