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現在のお姫様の日常

「あら、キイチゴ!!」


お姫様は明るい声で言った。

それから、お姫様は「こんなにたくさんあるなら木苺パイ用のコンポートも作らないと」と言った。


お姫様はコンポートを作る準備を始めた。

お姫様なのに、何故料理を自分でしないといけないのか。


それはここにはお姫様の召使は一人もいないからだ。

国のはずれの塔にいるのは、宮殿から触られてきたお姫様と、さらってきた竜だけだ。

他には誰もいない。


時々、お姫様の父である国王陛下の使いが色々な食糧や新しい服、それから本などをおいていく。

外交特使と竜の間で話し合いがもたれてそういう形になった。


料理は本と、数か月に一度、お姫様の髪の毛を切るために来る女官から教わったものだ。



随分と前、お姫様は竜にさらわれてここに来た。

色々あったけれど、今では竜はお姫様のほぼ一人の話し相手だ。


「それはよかった。

それよりもそんなほ細っこいのだ。

肉を食べた方がいいのではないのか?」


竜は塔に巻き付くようによじ登ってそう聞く。


「でも、あなたの持ってきてくださるお肉は獣の形そのままでしょう?

さすがに私でもそれをどうにかするのは難しいのですよ」


お姫様はコロコロと鈴を鳴らす様な声で笑った。

竜は初めて獣を持ってきた日お姫様が血をみて失神してしまったことを思い出し黙る。


「それよりもドラゴンさん。

ねえ、魔国のお話をきかせて頂戴?」


お姫様はもう慣れた料理の準備をしながら言った。

お姫様は竜にとらわれてしまった。

この塔から出ることは基本的にはできないのだ。


竜はお姫様に昔自分がいた魔国のことを話した。

魔王の事、ネバネバのスライムで満たされた池のこと。

その話をいつもお姫様はとても楽しそうに聞く。


食料に忍ばせた手紙には勇者がいつか助けに行くと書かれているが、今のところそのような人をお姫様は見たことは無い。

多分王国はそんな人を用意する気が無い。


そうお姫様は考えていた。

お姫様のために命を賭けようとする人がいるわけが無い。


それにこうしてお姫様が塔に捕まっていれば王国は常に被害者面ができるのだ。

実際に被害にあっているのはお姫様だけだというのに。


お姫様に食料を持ってくる人たちは?

お姫様はお城にいてもどこにいても食料は必要なのだ。

竜にとらわれたからと新たに必要になる作業ではない。


舞踏会に出るための宝石が無い分むしろ王国としては楽をしている。


だから、今日もお姫様は竜にとらわれたままだ。

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