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2.ブルーバードの導きーー社畜、居場所を見つける

アニソンバーのお話です。実際にこんなお店があったらいいな、と思って描いています。

 初めて訪れた日からずっと、あのアニソンバーのことが頭から離れない。会社では数字を追うプレッシャーと莫大な業務量に追われ、今にも心が爆発しそうだ。ポケモンでいう”ひんしじょうたい”の俺は、漸く金曜日の夜、23時に今週の仕事を終えた。


 女性や見ず知らずの人と話す事はそれ程得意ではない(商社マンあるまじきだが…)。正直もう一度行く事に恥じらいはある。しかしこの空虚な日々に少しでも彩が欲しいのも事実だ。直帰するかどうか迷いつつ、気付けば馬喰町の路地を抜けて、再び「Rhapsody」の扉を開けていた。


 「ウェルカム〜!」

 最初に声をかけてきたのは月島ルナだった。金髪のツインテールを揺らし、澄んだ瞳で圭介を見つめる。

 「この前のお客さんだよね。今日はこっち、空いてるよ」

 指さされたカウンターに腰を下ろすと、彼女は澄んだブルーが印象的なカクテルを差し出した。

 「バタフライ・フュージョン。わたしが作ったの。飲んでみて?」


 一口含むと、ライチの透明感ある甘さとトニックの泡立ちが喉を駆け抜け、重かった疲れがすっとほどけていく。

 「……悪くない」

 「でしょ?」ルナは満足そうに微笑んだ。


 「おっ、また来てくれたんだ!」

 カウンター越しに顔を出したのは音羽リオ。ピンクのミディアムボブを揺らしながら、屈託なく笑う。

 「いやぁ、うちに二回目来てくれるって、常連予備軍だね!」

 「まだそんなつもりじゃないけどな」

 「ふふ、そう言ってる人ほどハマるんだよ?」

 悪戯っぽく笑うリオに、俺も思わず口元を緩めた。


 背後から「みんな、そろそろ歌うで〜」と声がして、黒髪ポニーテールの東堂アヤメがステージに立った。

 イントロとともに響いたのは昭和の名曲『ペガサス幻想ファンタジー』(1986/MAKE-UP/聖闘士星矢OP)。

 年配の男性客たちがグラスを掲げ、「おお、懐かしいな!」「子どもの頃によく聴いたやつだ」と声をあげる。

 アヤメの力強い歌声に、世代を超えた共感が広がるのを目の当たりにした。


 続いて神楽セリカがステージに上がる。銀髪を揺らしながら、静かなバラードを歌うその声は、喧騒の中でぽつりと灯る火のようだった。

 一人で来ていた女性客が小さく「沁みるね」と呟き、誰もが黙って聴き入った。

 俺は胸が締めつけられる感覚を覚えた。孤独に寄り添う歌――それは今求めていたものかもしれない。


 曲が終わるとリオがステージに飛び乗り、『God knows…』(2006/涼宮ハルヒ(平野綾)/涼宮ハルヒの憂鬱 挿入歌)を披露する。

 冒頭から突き抜けるような高音が響き、店内の空気が一気に弾けた。

 観客は自然と手拍子を始め、サラリーマン風の客たちが声を張り上げる。

 彼女の笑顔と歌声が放つ眩しさは、場にいる全員の背中を押していた。


 最後にルナがステージに立つと、『ブルーバード』(2008/いきものがかり/NARUTO -ナルト- 疾風伝OP)が流れ出した。

 彼女はオーストリアと日本のハーフらしい。金髪のツインテールを揺らしながら伸びやかに歌う姿に、店内は一瞬で熱を帯びる。観光で来ていた外国人客もリズムを刻み、サビでは自然と声が重なった。


 その瞬間、胸の奥に懐かしい風が吹いた。

 ――ああ、この曲。小学生の頃、夢中でNARUTOを見ていた。翌日の学校で友達と熱く語り合い、放課後は忍者ごっこをして笑い合った。くだらなくても、本気で楽しかった。


 場の全員が声を合わせているのを見て、胸がじんわり熱くなる。あの頃と同じように、みんなで一つの作品を分かち合っている。


 歌が終わった後、胸には確かな実感が残った。ここは、ただの飲み屋じゃない。

 リオの明るさ、アヤメの強さ、セリカの聡明さ、ルナの自由さ、そして客たちが持つ人生の重み。

 それらが一つになって、この店の空気を作っている。


 「どう? 今日も楽しめた?」

 再びリオがグラスを覗き込んできた。

 少し考え込み、それから小さく笑って答える。

 「……ああ、ここに来ると、忘れてたものを思い出せる」


 その言葉にリオもルナもアヤメもセリカも、それぞれ違う表情で微笑んだ。

 ――Rhapsodyが、少しずつ、自分の居場所になっていく。



▷ 本日のオリジナルカクテル

・バタフライ・フュージョン

『Butter-Fly』(1999/和田光司/デジモンアドベンチャーOP)着想。ブルーキュラソーとホワイトラムをベースに、トニックの泡で軽やかさを、ライチリキュールで透明感のある甘さをプラス。

読んで下さりありがとうございました。次回からは女の子一人一人とのやり取りを丁寧に描いていきます。引き続き宜しくお願いします。

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