女雉の告白(女雉)
全く、男というものは。何度裏切られれば、この魂は懲りるのだろう。
女として生まれ落ちたこと自体が、私にとっては呪縛であったのかもしれない。空を裂き、風を切り裂いて舞い上がれば、男たちはその華やかな羽に目を奪われ、声をかける。だが、その瞳の奥には常に、下卑た欲望と、いずれは私を地に引きずり下ろさんとする陰謀が渦巻いているのだ。
ある男は、私を「高貴な舞姫」と称し、その言葉の甘さに一瞬、私の心は揺れた。しかし、彼は私の自由な空の舞いを称賛しながらも、やがては籠の中に閉じ込めようとした。別の男は、私の聡明さを褒めちぎり、まるで対等な存在であるかのように振る舞った。だが、結局は私の知識を己の地位を固めるための道具として利用しようとしたに過ぎない。彼らの言葉は、常に私を欺くための飾りであり、その微笑みの裏には、私を食い物にしようとする獣の顔が隠されていた。私は何度も、何度も、その醜悪な罠に落ち、翼をもがれ、地に這いつくばる屈辱を味わってきたのだ。この身を焦がすような裏切りの記憶が、私の血肉に深く刻み込まれていた。
だから私は、男を信じない。信じられるはずがない。彼らの与える一瞬の快楽も、甘い囁きも、所詮は幻影に過ぎないことを、私は知っていた。女としてのこの身体が、彼らの欲望の対象となる限り、私は永遠に自由になれないと諦めていたのだ。
しかし、その男は、他の男たちとは異なっていた。桃太郎。
彼と初めて出会った時、私の全身に電流が走った。それは、かつて感じたことのない、そして同時に恐ろしくも甘美な震えであった。彼の声は、まるで朝露に濡れた絹のようになめらかで、私の耳朶を優しく撫でる。その眼差しは、一切の計算もなく、ただひたすらに私を映し出している。私が見つめ返せば、彼は微笑んだ。その微笑みは、私の心の奥底に眠る凍りついた感情を、まるで春の陽光のように解きほぐしていくようだった。
彼は私に、きび団子を差し出した。それは、他の男たちが私に与えた、毒を仕込んだ甘露とは違っていた。団子の温かさが、私の手のひらから全身に広がり、その素朴な香りは、私の神経を穏やかに落ち着かせた。
「鬼退治に、力を貸してくれまいか?」
彼の言葉は、あまりにも直接的で、あまりにも純粋だった。そこには、私を籠絡しようとする下心も、私を利用しようとする魂胆も、一切感じられなかった。ただ、彼のまっすぐな意志だけがあった。
私は彼の言葉の美しさに、そして彼の肉体の完璧さに、抗うことができなかった。鍛え上げられたしなやかな肢体、風になびく黒髪、そして何よりも、その瞳の奥に宿る揺るぎない魂。それは、私がこれまで見てきた、男たちの醜悪な欲望にまみれた肉体とは全く異なる、神々しいまでの存在感を放っていた。彼の存在そのものが、私にとっての官能であった。
ああ、私はまた、この男に、この桃太郎という存在に、惹かれている。身体が、細胞の一つ一つが、彼を求めている。この熱情は、きっと私を破滅に導くのだろう。またしても、私は裏切られるのかもしれない。この純粋な輝きも、いずれは私の心を踏みにじる刃となるのかもしれない。理性は、私に警告を発する。過去の記憶が、私を嘲笑う。だが、この身体は、もう止まらないのだ。
私には分かる。今、この瞬間、私が信じられるのは、この桃太郎だけだ。彼の隣にいることで、私は初めて、自分の存在が解放されるような錯覚に陥る。この甘美な裏切りの予感と共に、私は彼についていこう。たとえその先に、また深い絶望が待ち受けていようとも。この身が朽ち果てるまで、彼の翼となって、共に空を舞おう。それは、破滅への道程であると同時に、私が唯一選び取れる、最後の幸福なのだから。