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ウィルバートとリディアナの別名


もうそろそろ、奴らとの打ち合わせ場所だ。


リディアナ様の別名を暴く為に仕組まれた馬車襲撃。実は、この別名にはとても興味があった。


隣国の友好国である騎士団が戦争で女性と対峙し、惨敗したというのだ。その話は、当時とても驚いて、誰にやられたのか聞くと、それはアイルバーン王国である王女との事であった。


その話に興味を持ったのは、私だけでなくリシャール様も興味を持って隣国の王太子の話を聞いていた。そして、そんな別名を持つ王女の戦う様を見てみたくなったのだ。


私達はアイルバーン王国の王女の情報を集めた。だが、あまり情報は集まらなかったのだ。


だから、無理矢理であったが皇帝陛下から婚約の話をされた時にその相手がアイルバーン王国の王女であると聞いて私もリシャール様も驚いた。


そして、それと同時に今回の馬車襲撃を仕組んだのだった。


だからと言って、危険に晒して言い訳ではない。何かあればすぐに助けに入るつもりだ。


リディアナ様の容姿を見て奴が、変な気を起こしたりしないか、それが気が気では無かった。そんな俺の心の心情が分かったのであろう。


彼女は、怪訝な表情をして俺を見ている。その彼女の洞察力も一体どこから養ったのか謎であった。他の女性なら決して分からないであろう、俺の表情を彼女は感じ取っているらしかった。


(あぁ、気配がして来た。)


奴らとの打ち合わせ通り、向こうは俺らの倍の人数いるらしいのが、馬車の中からでも感じ取れた。


リディアナ様は他国の姫君だ。彼らだって、彼女に危害を加えたらグランバルト皇国の評判を下げる事だって、理解しているであろう。


という事は、必然的にリシャール様を敵に回すという事で、彼らだって、愚かではないはず。決してリシャール様の損になる事はしないはず。打ち合わせ通りの演技をしてくれよ。そうでないと、こちらだって出る所出ないといけなくなる。


そう、考え目の前に座る彼女を見遣ると、自分と同じタイミングであっただろう、何かを察知し、顔を引き締め、体に力を入れるような素振りを見せた。


(もしかして、気配を読んでいるのか?奴らはまだまだ先だが、しかも、俺と同じタイミングで?)


そして、大きな音と共に揺れる馬車、彼女が倒れそうなら支えてやろうと体を踏ん張っていれば、彼女は倒れる事は無かった。


ーーあぁ、やっぱり分かっていたんだ。彼女は本当に姫なのか?そんな疑問を抱きながら、彼女に対し演技をし、馬車を降りた。



***




ーーおいおい、どうなってんだよ。


俺の目の前には、さっきまでリディアナ様を後ろから羽交い締めにしていた男が地面に横たわり白目を剥いて気絶している。


賊の男と共にリディアナ様が出て来たと思ったら、あっという間に後ろから抱き着かれるかのように人質のような構図になっていた。



「おい!お前らが護衛している姫様はこちらが預かった。こりゃー噂に聞いていたよりも上玉だ!そのまま一日、貸してくんねぇー?明日には返すからよー。」


奴が気味の悪い顔と下品な声で言ったかと、思えばリディアナ様を拘束していない方の手でリディアナ様の体を這うような動きを見せた。


それには、俺も到底我慢できなかった。予定が狂おうとも、知らない。奴らが悪いんだ。そう思い、足を一歩踏み出した所で、リディアナ様の姿が消えた。かと思ったら、素早く後ろに回り込み、彼女がドレスの裾を持ち上げ、脚を露わにすると、強烈な回し蹴りを奴に喰らわせたのであった。


そのまま数メートル先まで飛んでいく奴。起き上がらない事を見ると、そのまま気絶してしまったのであろう。


両者、共にまさに、ポカン、そんな言葉が似合うだろう。彼女の周りにいた賊や騎士達は戦うのをやめ、今何が起こったのかと彼女の方を凝視していた。


それは俺も例外では無く一体、今何が起こったかを頭で理解するのに必死だった。いや、理解はできている。おれも一国の帝国の騎士団長だ。


今の彼女の動きが見えていなかった訳ではないのだが、あまりにも彼女の可愛らしい顔からは想像ができない的確で重みのある蹴りだったからだ。


アイルバーン王国の女性は、人質にされた時の対処法を学ぶのだろうか?でも、学んだからと言って普通は、恐怖で何もできないのがオチであるし、実践してみようなんて決して思わないだろう。


グランバルト皇国では、女性が騎士になる事は殆どないし、女性が戦う事もまず無い。だから、女性が回し蹴りをするという衝撃的な光景に暫く固まってしまった。


そんな彼女は、今回し蹴りを喰らわした男には目もくれず、辺りをキョロキョロしたかと思えば、小走りでタタタタと走り、怪我をしている者の誰かの剣なのであろう。落ちていた誰かの剣を拾い上げた。


剣なんて握ってどうするんだよ。まさか、戦うつもりでいたりするんじゃないよな?ふと、そんな事を想っていると彼女の纏う雰囲気がガラリと変わった。


それは、剣を構えたからであるのだが、まるで、一国の騎士のようなーーいや、あれはもっと他の何か、そんな事を考えていると、彼女が次々と賊を倒していくのが見える。剣を使ったり、肘や脚を使ったりしながら色々な方法で男達を沈めていく。ドレスを裂いたのには声が出る程、驚いてしまったのだが、ドレスを裂いた事により体が動かしやすくなったのだろう。


脚を使って戦う姿は先程よりも身軽に戦っているのが、よく分かるようになっていた。


時には剣の柄を使い、手刀をし、確実に一人ひとりを沈めていくのには騎士団長の俺からしても「見事!」と褒められるような戦い方であり、むしろ手合わせをお願いしたい程であった。戦い方自体がとても独特で、騎士とは全く違う動きに女性らしいしなやかさがあり、綺麗な戦いぶりに思わず息が漏れてしまった。


ーーーーこれが、【剣姫】と呼ばれる由来なのだろう。


これが、リディアナ様の別名。先程までの可愛らしくも美しい表情は時折、賊と戦うのが楽しい、と言っているようなワクワクした表情をしていた。でもそれも、すぐに顔付きが変わり、凛々しい、逞しい表情に変わっていた。


それにしても剣姫と考えた奴は、見事な別名をつけたものだな。まさしく、剣の姫そのものであった。あまりにも戦う姿が美しいから剣から出てきた精霊か何かではないのかと思う程、気高く、強かった。


俺だけでは無く、俺の部下の騎士達も彼女の戦いぶりに目を奪われているようで、誰も彼女に加勢する事無く、戦いをやめていた。


そして、彼女が動くたびに破れたドレスからチラチラと見える脚に顔を赤くする騎士が殆どだった。女性は脚を出す事をはしたないと考えているし、それは騎士である俺達も例外ではなく、婚約者や交際相手の女性、そういう肉体的な関係がある女性以外の脚などそうそう見られる物でもない。


それに、リディアナ様はドレスの上の方、つまり太腿まで破いてしまったようで、彼女が脚を振り上げたり、動くたびにけっこう際どい場所まで見えてしまいそうでヒヤヒヤしていた。


いや、さすがに裂きすぎだよ!リディアナ様!こんな、一国の姫様が!!と、心の中で思わずリディアナ様を叱っていた。


騎士の中には、あまり女性慣れしていない奴も多いからそんな奴なんかは顔を真っ赤にしていて、グランバルトには居ないであろう美姫なリディアナ様の生脚なんて目の毒であろう。まだ十代の若い騎士達が少し気の毒にさえ思えてしまった。


そして、あっという間に周りは静まり返り、気付けば賊は全員地面に横たわっていた。だが、ここから見ていても誰も死んでいないのが分かる。


それは、彼女が死なないように斬っているのが分かっていたし、確実に気絶するような方法を選んでいたからだ。そして、賊が沈む真ん中で一人、所々、真っ赤に染まった髪に血がついた頬、紅く染まったドレスを着たリディアナ様が美しい表情をして立っていた。


綺麗だな。思わずそんな彼女の姿に見惚れてしまい、俺は無意識に自分の主の事を想っていた。彼女は主とは全く違うのに、今のあの表情や光景がリシャール様と被ってしまった。


無意識なのだろう。彼女がホッと息を吐くのが分かる。その瞬間、彼女からの殺気が消え、表情が変わるのが分かる。彼女が息を吐く動作ですら何故か色っぽく感じてしまい、慌ててリディアナ様に駆け寄った。


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