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第26話 二日目の対策会議

 今日最初に訪れる市場は昔ながらの市場で今時珍しく地域密着型の会社だ。

 花の世界の今の主流は所謂『業務需要』と呼ばれるホームセンターなどで売られるパック花が多い中、この市場の一番の顧客は人口密集地で多くの霊園をいくつも相手にしている卸売業者だった。


 ゆえに必然この市場が欲する品質は、通常の範疇を下回る。

 いわゆる「規格外」品を多く取り扱う市場だった。


 はじめから霊園に供えるための花を扱う。

 家庭で飾るものではないそれはそこまでの高品質を求めない。


 結果として当然取引単価は低く設定されている。

 なので多くの産地は正直『ゴミ捨て場』という印象で取引を行っていた。


※※※※※


 「やあ、君島ちゃん。いつ見ても若々しいな。もう50だろ?ははっ、見えないね」

 「おはようございます吉村社長。今日はよろしくお願いします」


 人の好さそうは70歳くらいのおじいさんが箒片手に場内の掃除をしながら近づいて来た。

 この人も生え抜きだ。


 ニコニコ顔だが眼光は鋭い。


 「まったく。社長はいつでも掃除しているな。もう年なんだからいい加減若いもんにやらせればいいだろうに」


 農連の山口所長が諭すように話しかける。


 「何を言うかこの若造が。分かっとらんな。……掃除は基本だ。色々と見えるものがある。……くくっ、それも分からんお前ではいつまでも『菊ちゃん』には勝てないぞ?」


 うあ、この人……相変わらず雰囲気が凄い。

 なんか菊野原次長に近い感じがする。


 「うん?おお、まことちゃん。お前さんは相変わらずめんこいな。……もうエッチしたか?」

 「なっ!?……もう、セクハラですよ?……お久しぶりです。お元気そうで安心しました」

 「はははっ、菊ちゃんも良い後継者を見つけたな。そういう返し、今時の若いもんは出来まいて。……うん、いい商売が出来そうだ」


 そして一気に雰囲気が変わる。

 邦夫さんと直樹さんに向き合い深々とお辞儀をした。


 「……生産者の皆さま、よくぞこんな汚い市場へ。ささ、お茶を用意してあります。こちらへどうぞ」


 「はい。お久しぶりです吉村社長。また俺たちを助けてください」

 「ははっ、助けてもらっているのはこちらですよ。さあ」


 どんなに気を付けても、技術を追求しても、農業はやはり自然には勝てない。

 だから品質の悪い作物も当然できてしまう。

 

 この市場は普通なら捨てるようなものを商品として扱ってくれる市場だ。

 もちろんこっちだって、だからこそ選別は徹底的に指導している。

 『品質が悪くても使える花』と『ゴミ』は大きく違うからだ。


 まことはこの市場の重要性を菊野原次長から何度も教わっていた。


 「いいものを高く売るなんてことは誰でもできる。だが安い時や悪いものをいかに売るかが市場の力の見せ所だ。残念ながら公設の連中は行政の縛りがあって色々出来ない。だから吉村社長の市場はある意味命綱だ。……見限られるなよ?」


 確かにうちの会社全体量から見てこの市場の取扱金額は少ない。

 しかしもしこの市場がなければ……


 生活が出来なくなる生産者は確実に出てしまう。

 どうして他の産地がこの市場を軽く見るのかまことには分からなかった。


※※※※※


 「おはようございます。ようこそ。君島代理、木崎さん、お世話になります」


 会議室では営業部長の高橋さんが俺たちを迎え入れてくれた。

 この市場の皆さんは俺を22歳の若手と見下したりはしない。

 だから却って俺は緊張が高まる。


 説明の本命は君島代理だが、ここでは指導の見解が大きく物を言う。

 市場は当然産地が出荷したものを売るのが仕事だ。

 だがこの市場は過程を重要視する。


 生産者の努力を形にしようと、情報を欲しがるためだ。


 時代とは逆行しているのだろう。

 正直品質が安定している安い輸入品を増やせば事足りる話だ。


 だが吉村社長は頑として国産にこだわっていた。


 「ご先祖に捧げる花が外国産とはな。罰が当たる」


 俺はここの市場の社長をはじめ皆さんの心意気が大好きだった。


 「それでは俺、いえ、私から、現在の作柄状況と予想される展望をお伝えいたします…」


 会議が始まる。

 皆が真剣に俺の話に耳を傾けてくれる。


 緊張とともに仕事に対する熱意が俺の中で沸々と湧いてくるのを自覚した。


※※※※※


 「邦ちゃん、直樹君、お疲れさまでした。まことも運転おつかれさま。さあ、安着祝いするわよ」


 あの市場のあと俺たちは残り2社を訪問し、無事帰路につき今は俺たちの職場のある町の食堂で、本日最後の仕事?である安着祝いを行うところだ。


 「くうー。仕事の後のビールが染みる。……ああ、たった2日だけどここに来ると帰って来たって実感するな」


 ほっとした顔で邦夫さんが大ジョッキの生ビールを飲み干す。

 今回騒動はあったものの内容的には100点満点だった。


 昨年を上回る契約の獲得と単価アップに生産者二人もホクホク顔だ。


 「そうね。これも二人が忙しい中わざわざ来てくれたおかげね。ありがとう」

 「何言ってるんですか。俺たちは付いて行っただけです。君島さん、まことちゃん、後は頼むよ」


 「はい」

 「ええ」


 こうして地元料理に舌鼓を打ち、無事市場巡回は終了した。


 連休明けには関西方面の市場巡回があるがそれには菊野原次長が行く事になっている。

 当初大和も行く予定だったが……

 まあ何とかするのだろう。


 俺は食後のコーヒーを飲みながら、明日からの通常業務に思いをはせていた。


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