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こちら“元“最強御一行さまです!  作者: 茉莉花菫
第2章
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第38話 第2試合

 僕の試合が終わった後、『4』のカード、『5』のカードを持つ人の対戦も滞りなく終わり、いよいよ第2試合となった。

 第2試合は、『1』・『2』のカードを持つ者、『3』・『4』のカードを持つ者同士で対戦が組まれるらしい。

 またもやナオと戦えないことに、僕は少しだけやきもきしていた。

 ナオと戦いたいのであれば、勝ち進むしかない。

 僕の胸には、熱い闘志が宿っている。


 待合部屋に投影された闘技場の様子にちらりと目を向ける。

 闘技場ではナオともう1人が向かい合っていた。

 僕はこの戦いを見守ろうか考えて、すぐにうつむいて視線を背けた。

 だって、見たところで意味などない。

 結果など、わかりきっている。

 であれば、魔力の回復に専念する方が有意義だ。


「勝者、ナオ!」

 ワアアアアア


 気づけば、ナオの勝利を告げるシルクさんの声と観客の歓声が響き渡っていた。

 集中していたからどのくらいの時間がかかっていたのかは、分からない。

 だが、それほど長くはなかっただろうと思う。

 それほどまでに、今のナオは圧倒的だ。


「リツキさん、ノノさん、ご案内いたします」


 第1試合の時と同じように、闘技場へと受付嬢さんにより導かれる。

 僕の隣を歩く対戦相手であろうノノさんは、年上の女性だ。

 メリハリのついた体つきに、それを強調するようなタイトなドレス。気の強そうな猫目が印象的だ。

 僕はなんとなく目のやり場に困って視線をさまよわせた。

 アイヴィーさんも似たような格好をよくしているが、なにかが、なにかが違う。

 そんな僕の様子に気がついたのか、ノノさんがこちらに視線を向けてぱちりとウインクをする。

 そんな仕草に、僕は年相応にドキドキしたりするのだ。


 〇〇〇


「リツキ、ノノ。準備はいいかい?」

「はい」

「いつでも」


 シルクさんは左右にいる僕たちに目を向けると、すうっと息を吸った。


「それでは、始め!」


 シルクさんの高い声が響いて、開始の合図がならされた。

 僕は早速臨戦態勢になると、詠唱をしようと口を開く。


「アイ――――」

「ねえ、僕」


 氷の剣を出そうとした瞬間、ノノさんに話しかけられて思わず詠唱を中断してしまう。

 パッとノノさんの方を見ると、魅惑的な微笑みを浮かべこちらを優しげに見つめていた。


「僕、まだ子どもなのにそんなに魔法ができるなんてすごいのね。感心しちゃうわ」

「そんなこと、ないです」

「あるわよお。ね、あなたの魔法、もっとよく見せて」

「そ、んな」

「謙遜しないで。ほら、《こっちへおいで》」


 ノノさんはすいと僕の方へ手を伸ばす。僕はどこかぼんやりとしながら、その手へと一歩ずつ引き寄せられていった。

 そして、目の前に差し出されたその手をとろうと、僕も手を伸ばす。

 その時、シュルシュルとなにかが這うような音が聞こえた。


「ガウッ!」


 瞬間、鋭い吠え声と共にトワが僕とノノさんの間に割って入る。

 僕はハッとして足下に駆け寄ってきたトワを見た。


「トワ!」

「ガウア!」


 トワが視線でなにかを訴えている。

 なんだろうと思いその視線を辿って、ヒュッと息をのんだ。


「あらあら残念。もうちょっとだったのに」


 僕がとろうとしていたノノさんの腕に、まだら模様の蛇が巻き付いていた。

 蛇は少し口を開けて、シャーッとこちらを威嚇している。

 ちらりと見えた牙からは、怪しい液体がしたたっており、毒蛇であることは一目瞭然だった。


「私の使い魔よ。かわいいでしょう?」


 僕はあと少しで毒蛇に噛まれるところだったのだと理解し、ゾッと背筋が寒くなる。

 ルネさんもいるし、解毒はそう難しくはないだろうが、積極的に経験したいものじゃない。

 と、いうよりも


「魅了魔法、ですか」

「ピンポーン。正解よ」


 厄介な魔法を使うな。

 魅了魔法は、その名の通り魔法をかけた相手を魅了し、意のままに操る魔法だ。

 とても強力なだけに縛りも多く、初見殺しの魔法となっている。


「もう、かかりません」

「あらあら、油断は大敵よ?」


 妖しく微笑むノノさんを前に、顔を険しくする。

 これは、一瞬も気が抜けない。


「トワ、ありがと」

「ガウウ」


 僕が小さくお礼を言うと、トワはどこか呆れたようにうなり声をあげた。あっちにも優秀な使い魔がいるようだが、僕にだってトワという使い魔がいるのだ。

 僕は気を引き締め直すと、攻撃に転じようと身構えて――――


「・・・・・・っ」


 目前に迫る紫色の矢を、反射的に身をそらしてなんとか避ける。

 鼻先すれすれを通った矢は、後ろの壁に当たってベチャッと崩れた。

 矢が当たった壁はしゅわしゅわと音を立てて表面が溶けている。

 それを見た僕とトワは、そろって冷や汗を流した。


「休んでる暇なんてないわよ?」


 魔力の動きを感じ取り視線を向ければ、先ほどと同じ紫色の矢が、僕に狙いを定めているところが見えた。


結界(バリア)!」


 結界を張ったのと、矢が僕の元へ届くのはほぼ同時だった。

 結界に矢が触れる度に、じゅわじゅわと音がなる。

 この矢にかすっただけでも負けが確定することが、見ているだけで分かった。

 そしてなによりこの毒・・・・・・結界を溶かしてる!


「トワ!」

「ガウウッ」


 トワが僕の声に合わせて、回り込むようにノノさんへ直接攻撃をしかける。

 さすがのノノさんも、毒の矢で僕を狙いながらトワをしのぐことはできなかったようで、小さく舌打ちをすると毒の矢での攻撃をやめ、結界をはった。

 この一連の流れを見て、僕は1つのことを確信する。


 ――――ノノさんは、無詠唱で魔法が使える。


 もちろん、師匠のように全ての魔法を無詠唱で使えることはないだろう。

 だが、基本的な魔法は無詠唱でできると考えた方がいい。

 今までの戦いを見る限り、ノノさんは毒や魅了といった搦め手が得意なのだろう。

 搦め手と無詠唱は、非常に相性がいい。

 不意打ちでこそ、魅了や毒の攻撃は光り輝く。

 なら、僕がとるべき戦法は。


(アイス)!」


 トワが作ってくれた隙に僕は考えを巡らせ、方針を決める。

 僕は氷の剣を握りしめると、ノノさんがはった結界へ斬りかかった。


 搦め手が得意ならば、真正面からの物理攻撃を苦手としているはずだ!


 僕の記憶にあるのは、アサヒさんとは絶対に戦いたがらないアイヴィーさんの姿。

 はっきりと口にしたことはないが、アイヴィーさんはアサヒさんとの相性が悪いのだろう。


「・・・・・・あらあら、ごり押しなんて、品がないわねえ」

「いいんですよ。勝てれば」

「これだから脳筋は嫌ね」


 脳筋とは人聞きの悪い。

 僕は師匠、アサヒさん、ライリーさんやコルニオロさんと違って、脳筋なんかじゃない・・・・・・はず。


 僕はひたすら物理攻撃を続けながら、眉をひそめた。

 妙にノノさんが余裕そうな顔をしているのが気になる。

 このままでは結界が砕けておしまいなのに、なにか動きがあるわけでもない。

 だが、結界は僕とトワの攻撃を的確に防ぎ続けている。

 無詠唱だからこそのスピードと、正確性。それが、非常に手強かった。


「あらあら、全然私の元まで攻撃がこないわねえ。あくびが出ちゃうわ」

「そんなに油断していると、後悔しますよ」

「あら、別に油断してないわよ?舐めてるだけで」


 僕を煽るようにそう言うノノさんに、僕はそれは違うなと冷静に考える。


「それは、違いますよね?」

「・・・・・・」

「初手で魅了魔法を使ったのがいい証拠です。魅了魔法なんて奥の手、最初に使うなんて・・・・・・僕のこと、とっても警戒してくれてるんですよね?」


 そう。魅了魔法はとても強力な魔法だ。

 それを、最初の最初に使った。これは紛れもなく、僕の魔力量と圧倒的な物理攻撃を警戒している証拠。

 僕が魔法を使わないように、先手をとった。


 僕がノノさんを見透かすように目を細めると、ノノさんはため息をひとつついた。


「嫌な子どもねえ」

「僕、魔力量には自信があるので。自分の強みはそれなりに分かっているつもりです」

「末恐ろしいわぁ・・・・・・でも、やっぱりまだまだ子どもね」


 僕がその気配に気がつくのと、ノノさんが口を開くのは同時だった。


「しまっ」

変身(チェンジ)


 僕がハッとして後ろを見ると、ノノさんの使い魔である毒蛇がみるみるうちに巨大化していった。

 気づかなかった。ノノさんと会話している間に、毒蛇が僕たちの後ろに回っていたのだ。


「油断大敵って、いったでしょう?」


 僕たちが大蛇に気をとられていると、ノノさんの声が聞こえて耳の横を毒矢が通り過ぎる。

 ――――完全に、挟まれてしまった。


「さあ、ここからは私たちの番よ」


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