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こちら“元“最強御一行さまです!  作者: 茉莉花菫
第2章
92/105

第34話 変化

たいっへんお待たせいたしました!!

い、いやー小説自体は書き終わっていたのですが、投稿するのをすっかり忘れておりまして汗

楽しみに待ってくださってた方(がいると信じて)には申し訳ありません!

今週の土曜日は確実に更新します!もう予約しました!


ということで、ドゾ

 パタンと扉が閉じられる音を聞いて、ミオンはゆっくりと顔を上げた。

 シルクの姿が見えないことを確認すると、深く息を吐く。


(師匠、失格か)


 頭に浮かぶのは、無機質なナオの顔だ。

 第2試練から帰ってきたナオは普段通りを取り繕っていたが、どことなく行き場のない感情を持て余しているようだった。

 ミオンはそんなナオに対して、声をかけようとして――――なにも言葉が出てこなかったのだ。

 できたのは、”還らずの森”で修行している様子を見守ることと、シルクに気にかけるよう頼むことだけ。


(師匠だったら)


 そこまで考えて、音をたてて頬を叩く。


「ふう――――」


 深呼吸でざわめく心をなんとか落ち着かせ、手のひらで目を覆った。

 よみがえりそうになった記憶を押しとどめる。


「マノン」


 ささやくようにもれた声は、ひどくかすれて弱々しい。だが、ピリピリとした拒絶の意思が確かに込められている。


 ふいにミオンが窓の外を見た。

 正確には、ヴィザレットのさらにその先を。

 先ほどミオンは、確かにマノンの魔力を感じた。ほんのりと、シルクでさえ違和感を抱かないほどの魔力量ではあるが、ミオンが間違えるはずがない。


(来てるんでしょ?マノン)


 リツキが、マノンの弟子が、魔法大会に参加すると決まったときからわかりきっていたことだ。

 きっとマノンは、いずれミオンの前に姿を現す。


「いいわ。決着をつけましょう。マノン」


 ミオンの独り言が虚空に響き、消えていく。

 誰にも聞かれることのないその言葉は、宣戦布告を受け入れる言葉だ。


 師匠と弟子、年月にして50年ぶりの再会が、目前に控えていた。


 〇〇〇


「それじゃあ、行ってきます!」

「行ってらっしゃい、リツキくん!」

「行ってら、しゃい」


 僕――――リツキは、声を見送ってくれるライリーさんとルネさんに向けて声を張った。

 今日は、第3試練当日。

 天気は晴れ。気持ちのよい晴天だ。


「ほら、トワも」

「けっ」


 僕は足下のトワにも挨拶をするよう促すが、そっぽをむいて拒否されてしまった。

 僕がじとっとした目で見つめると、トワが渋々といったように口を開く。


「行って、くる」


 僕は満足してパッと笑みを浮かべた。


「えへへ、トワ~」

「なっんだよその顔は!」

「だって~」

「けっ」


 僕が表情をゆるめていると、トワが先に歩きだしてしまった。

 僕は慌ててトワの後を追いかける。


「それじゃ、がんばってきます!」


 手を元気に挙げて振れば、ライリーさんは小さく、ルネさんはぶんぶんと手を振り返してくれた。

 僕はふはっと笑って前を向く。

 目指す先は、魔法連盟本部。

 第3試練の試練会場は、事前集会で使われたあの闘技場だ。


 〇〇〇


 闘技場に来た僕は、ぱちんとまばたきをした。

 なにせ、闘技場には僕が予想していたものと全く違う光景が広がっていたのだ。

 見渡す限りの人、人、人。

 闘技場は、あふれんばかりの魔法使いたちで賑わっている。

 トワもこの人の多さに戸惑って、僕の後ろに隠れてしまった。


「おーい、リツキ-」


 最近よく聞いていた声が聞こえて、僕はハッと振り替える。


「ダイスさん!」

「よう」


 軽快に片手を挙げるダイスさんに、僕はぽかんと口を開ける。


「リツキくん、こんにちは。久しぶりね」

「あ、アンさんも!」

「リツキおにーちゃん、こんにちは!」

「久しぶり。リツキ兄ちゃん」

「レオに、ミレイまで!」


 続々と顔を出し、挨拶をしていく面々に呆気にとられてしまう。

 よくよく見れば、ダイスさんの傍らには第1試練に共に挑んでいた人たちや、お店にいた子どもたちが勢ぞろいしている。

 僕は戸惑いながらも、おずおずと口を開いた。


「ど、どうして皆さんここに?」

「どうしてって、見に来たんだよ」

「なにを?」

「第3試練を」


 3秒ほど、たっぷりとフリーズする。

 そして、だんだんとその言葉の意味を理解して


「見れるんですか、第3試練!?」

「ああ」


 そりゃ、人が多いわけだ!

 僕は納得顔でうなずく。

 ダイスさんはそんな僕に苦笑すると、ぽんと方を叩いてきた。


「じゃ、俺たちは上の観覧席にいるから。・・・・・・がんばれよ」


 僕はグッと胸にこみ上げるものを感じながら、強い光を瞳に宿す。


「はい」


 ダイスさんは満足そうにニッと笑うと、観覧席に向かっていった。

 アンさんたちも応援の言葉を口にしながら、ダイスさんの後を追う。

 僕は彼らの後ろ姿を見送ってから、ハッとして闘技場をぐるりと囲うように設置された観覧席を見上げる。


「第3試練を見れるなら、まさか・・・・・・。トワっ」

「ガウウ」


 渋々といった様子のトワが、くんくんと鼻を動かす。と、ものの数秒で呆れた目をこちらに向けてきた。


「ガウ」

「あ~~~~~~」


 トワが視線で指し示す先で小さく見えるのは、燃えるような緋色の髪。

 間違いない。ライリーさんだ。そして、ライリーさんがいるということは、確実に側に小さなルネさんがいる。

 2人とも、いや、僕の目には髪色をかろうじて確認できる程度なのだが、僕が見ていることに気づいてニコニコ手を振っている様子が目に浮かぶようだ。


「・・・・・・これは、本当にがんばらなきゃだね」

「ガウウ」


 今の僕には、ダイスさんから託されたものがある。

 それに加えて、ライリーさんとルネさんが見ていてくれたのでは、無様な真似はできない。

 魔法大会がはじまったときは、「師匠にも言われたし、力試しもできるし、がんばろう」と思っていた程度だったというのに、第3試練を控える今は、いろんなものを背負ってここに立っている。


「トワ、最後までよろしくね」

「ガウ」


 トワの態度はそっけないが、最初の頃よりも確実に信頼関係を築けていると感じる。

 第3試練の開始まであと少し。

 僕はそっと笑みを浮かべると、拳を強く握りしめた。






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