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こちら“元“最強御一行さまです!  作者: 茉莉花菫
第2章
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第27話 攻略法

(アイス)

「ガウアッ」


 僕は氷の礫を放ち続け、トワは鋭い爪と腕を振り続け、分身はその数を徐々に減らしていた。

 ただ、それでも徐々に、だ。

 数え切れないほどの分身全てを倒すなど出来るはずもない。

 だから


「トワッ、魔法の受け方をよく見てっ」

「ガウッ」


 僕は魔法を行使しながら、じっと分身を観察する。

 狙うのは、僕の魔法を不自然に避けようとする分身。

 結界を張るのではなく、避けるような、そんな動きをする者。


「・・・・・・いたっ」


 僕はある1人の分身に視線を定める。

 その分身は、僕から徐々に距離をとるように後ずさっていた。


「トワっ」

「ガウッ」


 トワがその分身の逃げ道をふさぐように回り込む。

 分身は慌てて逃げようとするが、遅い。


(アイス)


 僕は鋭く狙いを定めて魔法を行使する。

 氷の礫は正確に、無慈悲に、1人の分身を捉えた。


「・・・・・・っ、光の精霊よ――――結界(バリア)!」


 分身は、結界を展開し、その魔法をはじく。

 だが、僕はにんまりと笑顔を浮かべた。


 ――――見つけた。


 僕はぐいっとその分身に近づくと、がっしりと腕をつかんで口を開く。


「見つけましたよ。偽物さん」


 その分身、いや、偽物は、ひくっと口元を引きつらせると、深く深くため息をついた。


「正解だよ」


 その言葉を合図に、魔法が解かれる。

 ポロポロとはがれるように、偽物の姿形が変化していった。


「おいおいおいおい。早すぎだろ」


 唐突に響いた声は、ゲンさんのものだ。

 後ろを振り返ると、おそらく本物なのだろうゲンさんがこちらに歩み寄ってくるところだった。


「ほおん?魔法を連発して分身を削るなんて、強引なことすんなって思ってたら・・・・・・これを狙ってたのか」

「はい」


 僕はこくりとうなずく。

 正直なところ、僕が魔法を連発した目的は分身の数を削ること、ではなかった。

 嘘も方便、というやつだ。


「確か、単詠唱、は使える人が少ないんですよね?なら、偽物さんもゲンさんと同じ単詠唱レベルの魔法使いの可能性は低いと思って」

「少ないってーか、ほとんどいねえよ」

「そもそも、単詠唱を使える程の人は試験官になっているか、大会でミオン姉さんに挑むつもりか、でしょうし」


 だから、僕は魔法を連発して、その魔法を結界ではじくのではなく、避けようとしている人を探していた。

 声やしぐさ、見た目を似せていたとしても、偽物ではゲンさんと同じように単詠唱は使えない。

 なら、魔法を使わせてみれば良い、そう考えたのだ。


「ったく、お前は恐ろしい奴だな」

「だからその恐ろしいってなんですか。失礼ですよ」


 ユーシサスさんもよく言っていた。

 対峙する相手を見極めろ。相手が嫌がることはなにか、相手が苦手なことはなにか、常に頭を回し続けろ。と。


 僕がにやにやするゲンさんを睨み付けてると


「見つけたー!」


 というダイスさんの叫び声が耳に届いた。


「へ?」


 見つけたのか?ダイスさんも?こんなに早く?

 だが、ダイスさんは魔法を使っている雰囲気はなかった。

 僕とゲンさんは顔を見合わせると、ダイスさんの声がした方へと向かった。

 そこには、分身の1人に指をつきつけるダイスさんと両手を上げた分身がいた。


「だ、ダイスさん!」

「リツキ」

「今、見つけたって」

「ああ。この分身が、偽物だ」


 その分身は、一度ちらりとゲンさんに目を向けると観念したように魔法を解いた。

 僕の時と同じように、ぽろぽろと魔法でできた虚像が剥がれていく。


「せーかい」

「いよっしゃあ」


 盛大にガッツポーズを決めるダイスさんに、僕は驚いて目を向けた。


「ど、どうやって見つけたんですか?」

「ん?ああ、それは、観察したんだよ」

「観察?」

「ああ。バカ正直に、正攻法でな」


 ニッとダイスさんは笑うが、それはつまり、しらみつぶしに分身を観察していたということだろうか。

 誰か、ゲンさんと違うところが、違和感を感じる者がいないか。

 圧倒的な正攻法。確実に見つかるが、途方もなく時間がかかる方法。

 それを、この短時間で見つけられたのは、ひとえに強運だったとしか言いようがない。


「どっ、どうして。だって、その方法だと永遠に見つからない可能性だって」

「そうだな。運が悪けりゃ、ずっと見つかんなかったかもしれねえ。けど、確実にいつかは見つかる。なら、やるしかねえだろ」


 そうハッキリと言い切るダイスさんはすがすがしく、気持ちが良い。

 運も実力のうちというが、その通りだろう。


「ああ~~~、ったく、2人もあっさり突破しちまいやがって」

「ゲンさん、それじゃ、スタンプお願いします」

「わーったわーった」


 ゲンさんが気だるげに僕たち2人の腕輪に手をかざすと、腕はが一瞬青色に光った。


「これでよし、だ。さ、さっさと行った行った。俺は暇じゃねえんだ」

「なんですか、その雑な感じ。嫌な感じですね」

「だーっ、なんだよ。文句言うんじゃねえ」

「はいはい。ダイスさん、行きましょ」

「お、おう」


 僕はダイスさんに声をかけると、さっさとこの場を去ろうと足を動かす。


「リツキ」


 少し歩いたところで声をかけられ振り返ると、ゲンさんがひらひらと手を振っている。


「がんばれよ」

「言われなくても」


 再び前を見据えて歩き始める。

 それ以降、僕が後ろを振り返ることはなかった。








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