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こちら“元“最強御一行さまです!  作者: 茉莉花菫
第2章
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第25話 2人目

 2人目の試験官は、思っていたよりも早く見つかった。


「よお」

「うげ」


 1人目の試験官の時と同じような広間の中央で、ヒラヒラと手を振る男を見て僕は思わず顔をしかめた。


「おいおい。うげって失礼じゃねえの。うげって」

「いえ、だって」

「リツキ、その人は知り合いか?」


 ダイスさんの言葉に、僕はうーんとうめき声をあげる。


「知り合いっていうか、なんていうか」

「そこは知り合いって言ってよ」


 うさんくさい笑みを浮かべるその人は、傷ついたとでも言いたいのだろうか、目元を手でおおって泣くふりをしている。


「だまされませんよ」

「ええ」


 ひどく残念そうな顔をするが、一体全体どこまで本心か。

 はあ、と僕はため息をついた。

 僕には、この人との再会が良いことか悪いことか、この人が味方なのか判断がつかない。

 ただ、少なくとも敵ではないはずだ、と思う。

 キザったらしい笑みとしぐさ、そしてこのうさんくささ。わざとらしくて信頼しがたいが、僕に忠告をしてくれた分身魔法の使い手。


「なあ、リツキ、本当にどんな関係なんだよ」


 不思議そうなダイスさんの声に、僕はどうしたものかと首をひねる。


「この人は、えーっと」


 チラリと彼を見れば、彼は僕の意図を察したようでウインクしてきた。


「そういえば、名前を言ってなかったな。俺はゲンっていうんだ。覚えといてくれよ?リツキ」


 僕の名前は当たり前のように知ってるのか。確か、第1試練の時は名乗らなかったと思うのだが。

 そこまで考えて、はっとしてダイスさんを見やる。


「あれ、そういえばダイスさんはこの人と知り合いじゃないんですか?」

「え?違うぞ」

「え?」


 いや、だって、第1試練でこの人と、ゲンさんと対峙したとき、ダイスさんの名前を出していたじゃないか。


「俺、将来有望な魔法使いの卵の名前は全員覚えてるんだよね」


 俺の疑問を察してか、ゲンさんがウインクとともに口を挟んでくる。

 なるほどそれで。僕が納得してうなずいていると、隣で「え、将来有望・・・・・・?」とダイスさんが顔を輝かせる。

 ダイスさんは機転がきくし、魔力操作も精密だ。将来有望といのは納得出来る。


「第1試練にいたのも、試験官の仕事ですか?」

「いんや?普通に参加して、普通に落ちた。そしたらシルクのやつに急に試験官として入れって言われて・・・・・・ったく、人使いが荒いのなんの」


 やれやれ、と両手をあげるゲンさんに僕はまたもや納得してうなずく。

 そして、シルクという名前に首をかしげる。

 シルクさんって、あのシルクさん、か・・・・・・?


「おおっと、雑談がすぎたな。そろそろ本題に入ろうぜ」


 パンッと叩かれた手の音に、僕はハッとして視線を鋭くする。

 そうだ。今は試験のまっただなか、こうしている場合ではない。

 刻一刻と、他の魔法使いも進んでいるのだ。


「「お願いします!」」


 僕とダイスさんが声をそろえて叫ぶと、ゲンさんはニッと笑みを浮かべ口を開いた。


分身(クローン)


 途端に、ゲンさんと寸分も違わぬ分身が数え切れないほど出現する。

 ・・・・・・本当に、精密な分身だ。

 見た目が同じ、というだけではない。ふとしたときのしぐさやクセ、体臭や重心の置き方までもが本物と同一。

 ここまで精巧な分身、よもや師匠にもできないのではないか。


「お前たちには今から、この中にいる偽物をそれぞれ探してもらう」

「にせ、もの・・・・・・?」


 僕はゲンさんの説明に首をかしげる。ダイスさんも同様で、分からないと言いたげに首を振っている。


「本物を探すんじゃないのか?」


 ゲンさんはその反応を待っていた、と言うようにイタズラげに笑う。


「ちっちっち。俺の分身は格がちげえんだなあ」

「え?」

「俺の分身はな、どれが本物か自由に選べるんだよ」

「え!?」

「だから、どの分身も本物であり本物じゃない」


 ゲンさんは秘密を語るようにくちびるに人差し指をあてる。


「分身の中に赤の他人に変身魔法を施して紛れ込ませた。お前たちが今から探すのはそいつらだ。1人につき1人、見つけるんだ」


 僕たちはごくりと唾をのみこむと、分身に視線をはしらせる。

 分身の中の偽物を探せ、か。


「制限時間はなし。どんなに早く見つけても、どんなに遅く見つけてもよし。棄権もありだ」


 ゲンさんは徐々に分身の中に姿を紛れさせると


「それじゃ、ミッション開始だ」


 パチンと指を鳴らした。





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