第21話 第2試練
「おう、リツキ!!」
名前を呼ばれ、パッと声のした方を見ると、そこには
「ダイスさん!」
動きやすい格好をしたダイスさんが、こちらに手を振っていた。
「よかった。第1試練、達成したんですね」
「ああ。なんとかな」
ダイスさんが苦笑するように笑う。
ダイスさんは、一人きりのようだった。
「あの、アンさんたちは?」
「ああ。元々、第1試練は俺だけが突破するつもりだったからな」
「そう、なんですね」
つまり、第1試練を突破したのはダイスさんだけ、か。
いや、最初からそのつもりでチームを組んでいたんだもんな。
「第2試練、がんばりましょうね」
「おうよ!」
ニカッと太陽のように笑うダイスさんにつられて、僕もはにかんだ。
そして、ハッとして周囲を見回す。
いつのまにか神殿の前では、第1試練を突破した魔法使い30人程度が各々緊張したような面持ちで、開始の時間を待っていた。
僕は無意識に目だけで、あの白髪を探してしまう。
さっき、ちょっとだけ魔力の気配を感じた気がしたんだけど・・・・・・
「静粛に!」
その時、鋭い声が響いて辺りがしんと静まりかえった。
僕も、その静謐な声の主に注目する。
シルクさんだ。シルクさんが、第1試練の時とおなじように高台にのぼり、僕たちをぐるりと見回していた。
ミオン姉さんは・・・・・・あ、いた。
シルクさんが乗る高台に隠れるように、たたずんでいる。
「それでは、第2試練の内容を発表する!聞き漏らしのないように」
ごくりと、周りで唾をのむ音が聞こえた。
「第2試練は――――スタンプラリーだ!」
「・・・・・・」
ス、スタンプラリー・・・・・・?
僕は戸惑って首をかしげる。
いやいやいや、僕が初参加だから知らないだけで、いつものことかも・・・・・・。
しかし、困惑しているのは僕だけでなく、他の人も同じような気持ちだったらしい。ざわざわとざわめきが広がる。
「静粛に!」
再び、シルクさんの一声で静まる。
「人の話は最後まで聞くように。これは、ただのスタンプラリーではない。君たちには、今からこの神殿の中に入ってもらう。そして、この神殿の中でミッションを達成し、スタンプを3つ集めるのだ!」
な、なるほど。
僕はうんうんとうなずきながら、耳を傾ける。
「ミッションのお題は、神殿内で待機している試験官の魔法使いたちが示す。ミッションを達成した暁には、試験官からスタンプがもらえるという仕組みだ」
それ、は。なんだかとても、一筋縄ではいかなそうだ。
「なお、第2試練でも複数人での行動は禁止されていない。が、ミッションは個人で達成してもらう。複数人でミッションを達成することはできないので気を付けるように!」
僕はちらり、とダイスさんを横目で見上げた。
ダイスさんはこれを見越して、チームで動くのは第1試練までと決めていたのだろうか。
「さて、最後に時間制限についてだが、今回は特にもうけていない。攻略には、どんなに時間をかけても構わない。・・・・・・しかし、第2試練に合格できるのは、ゴールに来た先着10人までだ」
「・・・・・・!」
「ようは、より早くミッションを3つ達成し、ゴールまでたどり着けたものが合格できる。・・・・・・単純明快だ」
これは、なかなか大変な試練になりそうだ。
ただ、ミッションを達成すれば良いという話ではない。
どれだけ早くゴールできるかというスピード勝負。
「ああ、そうそう。この神殿は元々ダンジョンだったので、ところどころ罠がある。気を付けるように」
ぽそっと付け足された補足事項に、みんなが武者震いをする。
第2試練に参加するのは、第1試練を合格した約30名の魔法使い。みな、ある一定の実力をもつ実力者たち。
「それでは、第2試練。開始!!!」
シルクさんのかけ声が耳に届いた瞬間、トワと共に僕は駆け出した。
とりあえず、まずは試験官を見つけないと、だよな。
僕は神殿の中を駆けながら、思考を巡らせる。
最短効率でこの試練を達成する。そのためには、すばやく試験官をみつけること、罠にかからないこと、この2つが重要になってくるだろう。
神殿は石造りになっていて、空気がひんやりと心地よい。
だが、薄暗く背筋がヒヤリとするような嫌な空気も感じる。
よし、今回もトワに背負ってもらって・・・・・・
「ちょっ、まっ、リツキ!!」
「え?」
うしろから聞こえてきた声に、僕が不思議に思っていると、ひいひいと息が上がったダイスさんが僕に並んだ。
「おっまえ、速すぎ・・・・・・っ」
「え?まあ、トップスピードなの、で」
「い、やいや、まほっ、つかい、のっ。速さじゃ、ねえ・・・・・・っ」
え?身体強化魔法も使ってないし、まだそんなに速くは・・・・・・。
そう思いながら辺りを見回すと、妙に人が少ないことに気がついた。
首だけで振り返り、気づく。ずっとずっと遠くに、顔を赤くした魔法使いの群があった。
隣を走るトワから、呆れたような視線を向けられる。
あ、そっか。僕の"速い"ってアサヒさん基準だから・・・・・・。
なんともいえない気持ちになりつつ、僕は軽くダイスさんに視線を向けた。
「あの、ダイスさん。別に僕に合わせなくてもいいんですよ?」
「なっに、いってん、だ!これは、スピード勝負、だろう、がっ」
「確かに」
僕は納得顔でこくりとうなずく。
「それ、にっ」
「?」
「俺に、もっ、意地が、あ、んだよっ」
意地?一体、なにに?
僕は内心首をかしげる。
だが、ひいひいと言いながらも必死に走るダイスさんを見て、それ以上突っ込むしなかった。
それと・・・・・・
僕は走りながら、足下で走るトワに目を向ける。
トワもこちらに視線をよこした。
・・・・・・今回は、トワに背負ってもらうのはよそうかな。
トワの体力は温存させておきたいし、なんとなく、それはズルい気がしてしまって。
僕は、涼しい顔で走り続けながら、暗い神殿の奥を睨み付けた。




