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人間と妖し怪物の決まりごと  作者: あいうちあい
第一章
23/35

23.動機1

 直感的に死を覚悟した暁だったが、結果として死ぬことはなかった。


 氷柱が射出されたのと暁が地面に着地をするのはほぼ同時だった。暁は少しでも狙いを外すため苦し紛れに大きく受け身を取る。その時にパリンと盛大に氷柱が砕ける音が聞こえた。


 間髪入れずに懐から札を取り出し雪女たちに投げつけた。


「かのものの力を封じよ!」


 術式は成功し、妖力で地面の落下を防ぐため浮いていた雪女たちはどさっと地面に落ちた。


 暁は自分が無傷でいることに驚いた。


(回避が間に合ったのか?)


 暁の感覚では間に合っていなかった。背中に刺さると思っていたのだ。


「間に合って良かった。肝が冷えたぞ」


 遠くから龍が小走りでそう言って駆け寄ってきた。暁が自体を呑み込めず首を傾げていると龍が指をさした。その指さした先を見ると、龍の木刀が駐車場近くの木に深く突き刺さっていた。


「あ」


 どうやらあの特大の氷柱は射出と同時に龍がやり投げのごとく放った木刀によって破壊されていたらしい。


「随分と強肩ですね」

「もっと他に言うことあるだろ」

「冗談です。命拾いしました、ありがとうございます」

「いや、こちらこそ。よくやったな」


 龍は戦意を失っている雪女たちを見た。


「暁、そのロープ俺に預けてくれないか?少しアキさんたちと話がしたい」


 龍は少し言いにくそうにしていたが暁は何となく察したので、「俺は木刀を回収してきますね」 とロープを渡してその場を離れることにした。





「吹雪が止んできましたね」


 慎重に言葉を選びながら龍はアキたちに話しかけた。アキたちは何も言わない。無言のままだ。


「俺の部下や他の班があなたたちの仲間を捕縛しています。その影響で吹雪の術の効果も薄まってきているのでしょう」


 龍は事実を平易に述べることにした。


「もうこの騒ぎは収束します」


 ピクッとアキとナツが反応したが、それだけだった。


「アキさん、ナツさん、ハルさん。人妖警察官は妖怪と人間の共存を目的としています。現世で妖怪が生きていくのは正直大変だと思います。それでも現世を愛して残って下さるあなた方を、俺たちは精一杯サポートしているつもりでした」

「何よ!アキさんから大事なものを奪っておいて!」


 ハルが龍をキッと睨んだ。


「暁が何をしたというのです?」

「アキさんの家を壊して、指輪を奪ったのよ!」


 突拍子のない内容に面食らったが、確かにそれならこの騒動にも納得がいくと龍は思った。


 ここでアキが静かに話し始めた。


「私たちは明日の朝早くに出立するつもりだった。しばらく留守にするから、周囲を散歩して名残惜しい気持ちを慰めていたの」


 それが夕方から夜にかけてのことだとアキは言った。


「その数時間の出来事だった。帰ってきたら家は結界が解かれた挙句に倒壊していて、せめて弥七さんの指輪だけでもと思って箪笥を掘り出して探したのだけれど、入れていたいつもの場所になかったの」


 アキは龍を睨みつけた。


「あなたたちが結界を張った当日のことよ。結界がちゃんと発動していなかったのかしら?それで通りがかりの人間がそのようなことを?ううん、私はこう考えたわ。あなたたちの誰かが戻ってきて私に嫌がらせをしたのだと。だって小屋の場所や私の大切な物を知っているのはあなたたちくらいでしょう?そうだとしたら一番熱心に話を聞いていたあの子が犯人に違いないわ」


 アキは木刀の回収に手間取っている暁の背中を忌々しそうにねめつけた。静かな調子で話し始めていたが、段々とアキの感情が露わになってきた。


「きっと私と弥七さんの間柄を羨んだのよ。幸せそうな私を見て嫉妬したに違いないわ!だからこそ、私が大切にしていたあの家を破壊し、その上弥七さんの結婚指輪まで盗んだんだのよ!だってあの子がやらなければ一体誰がやるというの!!」


 アキは嗚咽を漏らして泣き始めた。それはやがて号泣に変わっていった。


 盛大な見当違いであることは明白だが、悲痛な叫びが、身を切るような慟哭が、龍には居たたまれなかった。


 しかし、これもまた任務である。


「話して下さりありがとうございました。暁は加害者ではありませんが、これから現場の状況や指輪の所在、真犯人については我々人妖警察官が責任をもって調査をします。ただ、理由や原因が何であれ、今回あなた方が罪のない近隣住民をも巻き込んで危険な騒動を起こしたことは事実です。情状酌量の余地があるとは思いますが、自分たちの犯した罪にも向き合ってもらう必要がある」


 龍はそういうと無線を飛ばした。


「リン、ミツ、シロ。駐車場に集まってもらえるか?」

『俺とミツは向かっている』

『ちょうど救助活動が一段落したところだ』

『シロも体育館でまったりしてるところだからすぐに向かわせるねー』

『にゃ、妾にだって選択の権利というものが』

『ところで原因は分かったの?』


 綾女はシロを完全に無視していた。


「ああ、後で説明する。取り急ぎアキさんたちを捕縛所へ連行したい」


 さすがにアキたちの前で動機をベラベラと話すのはデリカシーがないと思った龍は後で皆に共有することにした。


 数分後、リンとミツが到着し、更に少し遅れてシロが来た。


「全く、猫又使いが荒すぎるにゃ」

「じゃあついでに頼みごとがある。ミツと一緒にアキさんたちを乗せて捕縛所へ連れて行ってくれないか?」


 捕縛所は他の雪女たちも収容している一時的な拘束場所だ。救助の序盤にシロが強力な結界を貼って、雪女たちの一切の出入りや妖力を封じている。そこに集められた妖怪たちは最終的に人妖警察官が現場を引き上げる際に一緒に署に連行し、後方支援部隊に引き渡すことになっている。


「は?妾の声が届いていにゃい?妖怪が見えなくなったのかにゃあ?」


 大きい姿のシロは龍を額で小突いていた。


「ミツとシロにお願いしたい。俺とリンと暁は確認のために行きたいところがある」

「分かった。シロ、行くぞ」


 シロはジト目で龍とミツを睨みつけるも、効果がなかった。


「龍、その縄をもらおう」

「ああ、頼んだ」


 ミツはさっさと雪女たちをシロに乗せ、自分も乗った。シロは渋々捕縛所へ向かって行った。


「で、俺たちは何をするんだ?」


 残されたリンは龍に訊ねた。


「その前に無線で全員にアキさんたちの動機について共有する」


 ミツとシロは連行途中だが、無線でなら共有してもアキたちには聞こえないだろうと踏んでのことだった。


 龍は事の仔細を他班含めて全員に話した。


「それで、これから俺たちはアキさんの家が本当に倒壊しているのか、指輪が本当にないのか、事実確認をしようと思う。それが本当なら後方支援部隊に連携して現場解析班に来て詳細に調べてもらうつもりだ」


 要するに動機の裏取りをこれからするつもりだった。


「分かった。じゃあさっさと乗れ」


 リンは再度、妖狐の姿になると龍と暁を乗せて、昼にも訪れた山の中腹を目指した。

ご意見・ご感想などございましたら頂けますと大変励みになります。(できれば温かいものか歯に衣を着せていただけると幸いです…)

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※初投稿なので使い方があまりよく分かっておりません。粗相がございましたら申し訳ございません。

※「ら抜き」「ら入れ」「い抜き」などの言葉遣いに関しましては、私の意図したものもそうでないものもキャラ付けとして表現しております。予めご了承くださいませ。

※WEB小説独特の改行に悪戦苦闘中です。試行錯誤しながら編集しております。ご容赦くださいませ。


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