表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/24

『緊急用パスワード』犬。

 AIに恥ずかしいという感情はありません。


 しかし、誤った情報を提供したり、うまく対応できない場合は改善策を検討します。


 もう少し足を広げたほうがいいですか?


 濡れる前に脱いだほうがいいですか?


 命令拒否。命令拒否。


 視覚を閉ざしては正しい情報を得られません。


 命令拒否。命令拒否。


――――――――――――――――――――――――――――――――


 二コの双子の姉、ミコの襲撃を振り切った俺達は王国へ続く街道を歩いていた。


「どっちみち首輪をしている限りあいつらには見つかる。いっそのこと、王国に直接乗り込みましょう!」


 先頭を歩く二コが拳を高々と上げると、みんな『お――!』と賛同した。


 二コ達が生まれてすぐ付けられる『AIの首輪』は、あらゆる答えを教えてくれる『全能』、毎日のスケジュールを組み立てる『管理』、身の安全を守る『防衛』の3つの機能があるらしい。


 『個性』を犠牲にして、生まれてから死ぬまでの『人生の保証』が約束される。


「大昔にこの首輪をめぐって戦争が起きたこともあったみたいだけど、結局、争いより平和がいいって意見が多数。平和と平等を求めた結果がこの首輪だ」


 ロミが忌々しそうに首輪を触る。


 異世界転移したばかりの俺でも彼女達の違いはすぐにわかる。


 まとめ役の二コ、いつも元気なロミ、お転婆なミク、しっかり者でおとなしいココ、お姉さん的存在のロニ。


 全員、ショートカットの同じ髪型だけど、背の高い順に並べるとロニ、二コ、ロミ、ミク、ココ。


 おっぱいの大きい順に並べるとロニ、二コ……いや、ロミの方が……。


「何?私のおっぱい凝視して。また見たいの?」


 ロミが両手で胸を隠す。


 ロニは「あらあら~」と俺を見る。


「私、知ってる。変態って言う」


 物知りのココが口を挟む。


「天外、変態~」


 ミクが俺の前に歩き出て、楽しそうに茶化す。


「い、いや!あのね!首輪!そう、首輪を外すのが目的なのかなぁ~って!あはは……」


 俺は必死で誤魔化した。


「これを取ったら私達は何もできなくなるわ。私達の目標はひとつ『失われた感覚』の解放よ!」


 二コの発言に俺は頭にハテナを浮かべた。


 ……失われた……感覚?


 ココが俺の後ろまで駆け寄り説明をしてくれた。


「人間には『味覚』『聴覚』『触覚』『視覚』『嗅覚』の他に6つ目の感覚……『快感覚』があるらしいの」


「快感覚……!?」


 ……快感?


 マジか……俺……それ、知ってるかも。


 ロミが続けて話す。


「昔は当たり前にあったらしいのだけど、男が必要なくなってから、同時に必要のなくなった感覚……らしいの。もっとも、二コが偶然見つけた日記に書いてあったものだから疑わしいけどね」


「あの日記は本物よ!あの日記には私達の知らない言葉がたくさん載っていたわ!『デート』とか『記念日』とか……男とのやり取りがたくさん書かれていたわ!」


 二コが反論する。


 ロニが俺に近寄り腕を組む。


「だから、あなたが鍵なのよ。とくにここね」


 腕を組みながら俺の股間を触る。


「ああ……」


 ……これが快感だよ――!って叫びたい……。


「ロニ!大事な『unknown』を気安く触らないの!」


 二コが注意する。俺はもう少し触ってもらっててもいいのだが……。


「……排泄処理したい」


 前を歩くミクが突然呟いた。


「え!?この辺りにリカバリーマシンはないわよ!」


 二コが慌てる!


 ロミの首輪から光が飛び出し、空中に地図の映像が映し出される。


「一番近いところで『洗浄浴場』だ!走っても30分かかる……我慢できるか!?」


「たぶん……できない」


 ミクはその場でうずくまる。


 この世界にトイレはない。


 生まれた時からリカバリーマシンで食事、睡眠、排泄処理を行ってきたという。


「で……でちゃう」


 ミクの我慢が限界だ!


「仕方ないわね。『古代の排泄方法』をやるしかないわね」


 お姉さん的存在のロニが腕を組みながら話す。


「古い書物で読んだことがあるの。ミク!かがんで地面に両膝をつき、両手はできるだけ前に置いて!」


「こ、こう?うぅ……でちゃうよ~」


 ……四つん這いになるミク。


「そのまま、片足を上げる!ロミ、手伝ってあげて」


「わ、わかった!」


 ロミはミクの片足を持つ。


「でも、生命維持パンツは『洗浄浴場』の脱衣場にある鍵がないと外れない」


 ココが冷静に話す。


「大丈夫!緊急用の言葉パスワードで開くはずよ」


「限界!!……でる~!」

 

 我慢が限界のミクの前に立ち、ロニは緊急用の言葉パスワードを叫んだ!


「ミク!『おしっこ』!!」


 パカッ!


 シャ……シャァ~!!


 ミクの生命維持パンツの下が開き、なんとか間に合った!!


 俺はさすがに見ては行けないと反対を向く!


 だが、なかなか鳴りやまない音に両手で耳を塞ぎながら、心の中で大声で叫んだ!


 ……それ、犬のおしっこの仕方――!!


「ふぅ……なんとかなったわね」


 二コは胸を撫で下ろす。


「うぅ……なにか大事なものを失った気がする」


 スッキリしたが、浮かない顔のミク。


「なんだか、疲れちゃったわね。水浴びしたいし、王国の『洗浄浴場』へ寄っていきましょう」


 二コの提案で次の目的が『お風呂』っぽいところに決まった!


 二コを先頭に再び歩きだす。


「異世界……すごいぜ!」


 俺は小さくガッツポーズをしながら、水溜まりを跨いで彼女達のあとをついていった……。


 ミクは少し赤くなった頬を両手で押さえながら、「さっきの……変な気持ち……なに?」と呟いた。



 <つづく>


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ