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自殺日和

 柔らかな陽光に額を撫でられ、目が覚めた。


 春を喜ぶ小鳥の囀りが耳をくすぐり、優しくまどろみから覚醒させてくれる。

 少しだけ隙間の開いたカーテンを引くと、窓の外には素晴らしい青空が広がっていた。


 よく晴れた春の日の朝。理想的な目覚め。

 あまりに素敵な日曜日の始まりに、わたしは微笑み、そしてこう呟くのだ。


「ああ、絶好の自殺日和だわ」と。




【自殺日和】




 それは決して悲観的な人生の結論ではない。わたしはまだまだ未来のある若者で、将来に希望が抱けないという訳でもないのだ。また、孤独からの衝動でもない。実家の親は健在で、プライベートの友人もおり、会社でも悪くない人間関係を築くことができている。


 わたしには周囲に馴染むことのできる平凡さと、人より優れていて自慢できる非凡な部分がバランス良く備わっていると自負していた。

 夢もあれば、人並みに諦めも知っており、楽しいばかりではないが、悩みばかりでもない。

 やろうと思えば、何だってできるような自信もあった。


 ならば何故、その可能性を放棄することを選ぶのか。


 その理由を強いて挙げるとするならば“全てが完全に上手く行かないこと”にあるのだろうか。端から端まで、1分1秒まで少しの妥協もない人生など存在しない。そんな当たり前の事を受け入れつつ、そうまでして生きる意味を見出せなかったのかもしれない。


 いや、そんな理由はただの後付けだ。


 わたしはただ、無感情に、自然の理のように、

 その日、死ぬことを決めた。

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