第九十八話【暖か過ぎて熱くなったお出迎え!】
北学院との試合前、美鈴達が北学院代表選手をオ・モ・テ・ナ・シ♡
美鈴にとって高等部の学院対抗戦第2戦目となる今日。
本日も愛刀「霊斬剣」を手に彼女は北学院からの対戦相手の到着を今か今かと待ち構えていた…。
「愛麗、お茶のおかわりお願いいたしますわ。」
「ハイハイただ今お持ちいたしますお嬢様。」
愛麗は甲斐甲斐しくもテーブルに置かれ空になった美鈴のティーカップにポットの紅茶を注いだ。
「お嬢様〜?あまりお飲みになられますと肝心な時におトイレが近くなっても知りませんよお〜?」
「オホホ、貴女じゃあるまいしそんな無様な事にはなりませんわ♪」
これで既に三杯目になるのだが本当に大丈夫なんだろうか?
そんな心配を他所に美鈴は三杯目の紅茶の入ったティーカップに口を付けた。
「…しかし本当に遅いですね、美鈴様がこうして優雅にお茶を嗜む時間がある程には。」
「芽友、学院長代理から指定があった場所は本当に『ここ』で良かったのよね?」
明花は待ち合わせ場所間違いの可能性を疑った。
「もしや時刻の認識に齟齬があった、とは考えられませんか明花さん?」
待ち合わせの場所は芽友、時間は明花がそれぞれしっかり再度確認し記憶していたから間違いじゃないんだろうけど。
それより…。
「…………う〜ん、紅茶が熱いからか汗が出てまいりましたわ。」
「お嬢様、それは紅茶だけのせいでは無いかと…。」
そら熱いのも当然だわな。
何で待ち合わせ場所がサウナの中なんだよっ?!
だからか、今のみんなは夏の臨海学校で着ていた水着を着用していたのだ!
…おかげでいい目の保養だけどさ。
みんなはさっきから比較的発育の良い明花とスタイルの良い闘姫の方をチラチラ見ていた。
「美鈴さん、何もサウナの中で熱い紅茶など飲まなくても…。」
明花が苦笑する。
「ええ、充分ここは熱いですし、それにホラ、私達の肌にも汗の雫が…。」
芽友が額の汗を拭う。
「まだサウナに入ったばかりですし、ガマン大会にはこれくらいしないとですわ。」
コラ、ガマン大会ちゃうぞ待ち合わせだ!
「そう言えば腕まで汗ばんで来たわ。」
明花が腕に滲み出ている汗の粒をそっと撫でる。
サウナだからな、当たり前だ。
「あらヤダ、胸の谷間にまで汗が…。」
闘姫は自分の胸元を見た。
ゴクッ。
その場の皆の視線は彼女の胸元に釘付けとなった、勿論俺もだ!
じっ…。
「………?どうかしましたか?」
キョトンとする闘姫。
「「「「いえ、別に…。」」」」
気不味くなったみんなは直ぐ視線を反らした。
………こういう時千里眼で見ている俺って役得だなー♪
気付かれ無いのを良いことに仮面の聖霊である俺だけが熱心に闘姫の胸元を見続けたのだ!
こうして俺だけがスケベ心丸出しで闘姫の事を見ていると。
「………ところで、何でサウナの中なんかで待ち合わせする事になりましたっけ?」
美鈴がポカンとボケた事を抜かし始めた。
「ええっ?」
「美鈴さんが「寒い所から来られるのだから暖かい…それも熱い所で出迎えましょう!」と仰有ったからじゃありませんか?」
明花が驚いた。
「そうですよ、覚えてないんですか?」
これには闘姫も呆れたようだ。
「エエと…確かに学院長代理にはそう申し上げたのですけど…まさかサウナで、とは…。」
美鈴がしどろもどろになった。
【あの学院長代理ノリノリだったからな、ついでにあわよくばオマエの水着姿が拝めると思ったんじゃねーの?】
残念ながら学院長代理は学業が疎かになっていたので現在は范先生付きっきりで絶賛お勉強中だ。
(私の水着姿なんか見て何が楽しいのでしょう?)
(明花さんや闘姫さんの方がよっぽど見ていて楽しいですわ…ポッ(照))
一応コイツも同性だけど彼女達を意識はしてんだな。
最初の頃は同性同士でそんな関係は生理的に無理!等と前世オトコだった自分を否定するような事をのたまっていたけど高等部に来てからはだいぶ軟化したようだ。
或いはコイツの言うトコロの「明花の放つ百合ゲーヒロインの百合パワー」とやらにあてられたのかも知れないが。
このまま美鈴が明花に陥落するか新しく候補に上がった闘姫に籠絡されるか、はたまた…?
等と俺が今後の百合展開に思考を巡らせていると。
『あの…既に皆さん中におられるのでしょうか?』
「!この声はもしや…?」
美鈴が扉を開ける。
すると一気に外の冷えた空気がサウナの中に入って来た。
「うわーっ、涼しい〜♪」
愛麗が気持ち良さそうに声を出す。
そして扉の向こうには
「はじめまして、私達は北学院からお招きに預かりました。」
見ると、北学院の制服を着た二人の生徒が扉の向こう側に立っていた。
一人は顔を日傘で隠しており、もう一人は従者だろうか彼女の後ろで少し頭を下げていた。
「あの…では貴女が今回の学院対抗戦の北学院代表選手の方ですのね?」
「はい。」
日傘が閉じられその選手の顔が露わになった。
「私は北学院代表の二年生。」
「鳳華音と申します。」
「そして後ろに控えおりますのは私の従者。」
その従者が更に頭を深く下げてから顔を上げて挨拶する。
「皆様こんにちは、只今お嬢様から紹介に預かりました従者、小雀でございます。」
「はあ…私は今年の中央学院代表一年生の黎美鈴ですわ、今日はよろしくお願いいたします。」
「これはご丁寧に…。」
美鈴から差し出された握手の手を鳳華音が握る。
と、
「さあさ、まずはサウナにお入りになって旅の疲れを落として下さいな♪」
「あーれー?」
「お、お待ちを〜?!」
蒸し暑いサウナの中に制服のまま連れ込まれた鳳華音とその従者の小雀の二人。
「さささ、水着を着けて下さいな?」
「無ければこちらのバスタオルをお貸しいたしますわよ?」
「あううう…まさかこのような歓待を受けるとは思わず水着は持参しませんでしたああ…。」
「すみませんお嬢様、私もこんな展開は全く予期しておりませんでして…。」
「では、バスタオルですわね♪」
美鈴が目の前に二枚のバスタオルを差し出すと、二人は奪い取るようにバスタオルを受け取った。
「す、少し向こうを向いてて下さいませんか?」
「更衣室や脱衣場は…?」
「ああ、忘れてましたわ。」
「アチラの扉から出て直ぐが更衣室ですの。」
その言葉を聞くや、鳳華音と小雀は脱兎の如くサウナから脱出した。
…そして五分後、ようやくバスタオルを素肌に巻いた二人がサウナに戻って来た。
「ほほーっ、コレは中々艶っぽいお二人ですわね。」
「め、美鈴さん?あまりジロジロ見るのは失礼ですよ…?」
「そう言う明花さんだってウットリと眺めてらっしゃるではありませんか?」
「こ、これはつい見惚れてしまって…!」
「美鈴さん、明花さんが見惚れるのもわかります…北学院のお二人は私達には無い色気がありますものね…。」
「姫さん、貴女までですの…?」
「…愛麗、どこ見てんですか?」
「そ、そ~言う芽友こそぉ!」
中央学院のチーム美鈴全員が北学院の二人に目が釘付けになっていた。
「は…恥ずかしい…。」
「あ、アハハ…。」
北学院の二人の頬が赤いのはどう考えても熱いサウナの中に居るせいだけじゃないだろうな。
……………。
それから数分後、汗だくになった面々は水風呂で汗を流すと更衣室で制服に着替えた。
当然全員がバスタオルを着けたまま下着を着用してた。
みんな他人に自分の肌を見られるのが恥ずかしいらしい。
ま、男子でも腰にタオル巻いたままパンツ履いてたもんな。
そして彼女らは飲物を飲みながら少しの休憩を兼ねて歓談した。
試合会場へは1時間後に馬車で三十分かけての移動となる。
…………で、やっと試合会場に到着。
その場所は少し肌寒い高原。
枯れ草が風になびいていた。
「ここは王都よりも冬が近いのを感じられますね。」
明花が身体をブルッと震わせた。
「明花さん、これを…。」
美鈴が自分のコートを脱いで明花の肩に被せた。
「あ、でも美鈴さんが…。」
「私はこれから試合ですからコートはかえって邪魔になりますの。」
ニコッと微笑んだ美鈴に頬を染めて微笑み返す明花。
…何か良い雰囲気だな。
あ、でもそうなると。
「………いいなあ…。」
姫が羨ましそうにそれを見ていた。
【おい美鈴、もう一人にも気遣うべきじゃないのか?】
「…あ、そうですわね。」
「はい、闘姫さん。」
美鈴は自分の手袋を姫に与えた。
「私の手が冷えないように、これを?」
「ええ、私は試合用のグローブを手にはめますので問題ありませんわ。」
イケメンかオマエは!
すっかり姫が美鈴にボーッとなってしまったじゃないか?
【くそう、羨ましい!】
(あら、名尾君も私から何か欲しいんですの?)
【そんなんじゃねえよ!】
(?変なお方…。)
美鈴がラブコメ主人公的ムーブをかましている間に北学院代表の鳳華音は位置についていた。
「さて…。」
スラリと長剣を構える鳳華音。
その時彼女の腰からジャラン、と音がした。
「…何ですの?」
見ると、その腰には幾つもの金属製の小さな輪っかが取り付けられていた。
「ああ、これですか?」
「フフフ…試合が始まってからのお楽しみです♪」
闘姫は美鈴に耳打ちする。
(気を付けて下さい、彼女は何か手の内を隠しています。)
(大丈夫ですわ、それは今までと変わりませんもの。)
美鈴は高原の中央に立ち鳳華音と対峙する。
「では…。」
「ええ、始めましょうか。」
美鈴が合図を送ると大会本部からのアナウンスが風魔法で届いた。
【それでは本日の学院対抗戦を行います。】
晩秋を迎えた高原は戦いの熱気で寒気が吹き飛ぼうとしていた…。
何故かサウナで全員汗だくになった後で試合開始という良く分からない展開。
しかし分からないのは対戦相手についてもそう。
果たして北学院の鳳華音とはどんな実力なのか?




