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第九十七話【ヒロイン同士に火花散る?そして主役を待ち構える対抗戦スケジュール!】

明花ミンファと白百合のプリンセスである闘姫ドウ・ヂェンが不仲ではないかと疑った美鈴メイリン愛麗アイリー芽友ヤーヨウの三人は何とか二人を仲良くさせようと考えるのですが…?

そして今後の学院対抗戦日程を美鈴メイリンは伝えられます。


学院対抗戦乱入者事件、そして同時発生した白百合のプリンセス誘拐事件。


そのいずれも解決した生徒達の中心人物であり事件時に被害を受けた立場の当事者、黎美鈴リー・メイリンは学院朝礼にて学院長代理から表彰を受けた。


「…以上の功績により、ここで貴女を表彰致します…。」


美鈴メイリンが頭を低くして賞状を受け取ると生徒や教師ら全員から拍手を受けた。


少し照れ臭い美鈴メイリンはやや速歩きで壇上から一年生の列へと戻っていった。


そんな彼女を眩しそうに微笑みながら見つめる二人の視線。


その一人は誘拐された被害者、白百合のプリンセス本人であることを隠されている闘姫ドウ・ヂェン


そしてもう一人は美鈴メイリンが自分の真友と公言している文明花ウェン・ミンファであった。


その二人が美鈴メイリンから少し目を逸らすと、互いの視線がかち合った。


二人はぶつかり会った視線の交点から若干の火花を飛ばすや、プイッとそっぽを向き合うのだった。


その様子に気が付いた芽友ヤーヨウは「やれやれ…。」と頭を振るのだった。


……………。


「それで、お話しと申されますのは?」


翌日、自室にいた美鈴メイリン愛麗アイリーと共に芽友ヤーヨウの訪問を受けていた。


「出来れば手短にお願いいたしますわ、この後で次の対抗戦の打ち合わせを月夜ユーイー会長と行う予定がございますので。」


「あれ?月夜ユーイーさんはまだ生徒会長されてたんですか?」


「ボケてますの愛麗アイリー?まだ次期生徒会長に決まった二年生の多彩蜂ドゥオ・ツァイファンさんは一生徒会役員としての見習い中ですのよ。」


「そうです愛麗アイリー、いずれ学院対抗戦が冬までに一区切り付けば私達も年末の学院祭にむけて生徒会役員としての準備に駆り出されるのよ?」


「えええ〜〜〜、出店の試食係ならやってみてもいいんですけどお〜。」


「そんな羨ましい役があるなら私が率先してやらせていただきますけどね?」


実に食い意地の張った主人と側仕えであった。


「それでお話しの本題なのですけど…。」

芽友ヤーヨウの話しによればどうも最近特に自分の主である明花ミンファと白百合のプリンセスでもある闘姫ドウ・ヂェンの間の空気が不穏であるらしい。


「あからさまに暴言を言い合ったり意地悪したりとかはまだ無いのですが、何れにしろ美鈴メイリン様と仲が良く力となれるお二人の関係がギスギスしてるのはよろしくない傾向なのではと思いまして。」


「う〜ん…あの二人がそんな関係悪かったなんて…」

「一体何が原因なのでしょう?」


美鈴メイリンが洩らしたこの言葉に

愛麗アイリー芽友ヤーヨウはジト目で冷たい視線を美鈴メイリンへと向けるのだった。


「………何ですのお二人とも?」

美鈴メイリンがキョトンとすると。


「「いえ、別に…。」」


美鈴メイリンを睨んでいた二人は目を逸らしてそれぞれが独り言を呟いた。


(この…朴念仁!…知ってましたけど。)


(これでは明花ミンファお嬢様の想いも、白百合のプリンセス様の想いも、どちらも報われませんねえ…。)


そして二人は互いに向き合うと、

「「ハア〜〜…。」」

と、盛大にため息を洩らすのであった。


これにワケのわからない美鈴メイリンがボヤいた。

「も〜う、さっきから一体何ですの二人とも?」


対して二人はまたこう言い返した。

「「いえ、別に…。」」


その二人の態度に、ただただ首を捻るだけの美鈴メイリンだった。


………わかるぜえ、オマエ達の苦労!


幾ら本人は女の子に生まれ変わってるつもりでも前世オトコだったせいなのか、美鈴メイリンには本当に手を焼くぜ。


特に恋愛関係にはな、全く…!


…と、仮面の聖霊である俺もついでにボヤいてみるのだった。


………………。


「…あの、私もうちょっとしたら夕飯の仕込みを手伝いに行かなきゃならないんですけど?」


「…私は図書室に調べ物に行きたいのですが…。」


互いをチラチラと意識し合う明花ミンファ闘姫ドウ・ヂェンの二人を何とか宥めながら同じテーブルに着かせた美鈴メイリンと側仕えコンビ。


「コホン。」

「取りあえず、この紙に貴女方が互いに相手に対して持つ良い印象を書いていただけますかしら?」


「良い印象?」


「そうですわ、相手の好ましく思える部分、評価出来るところなど…とにかく良いと思える部分ですわ。」


「はあ…、でも何の為に?」


「ですね、意味がわかりません…理由を説明していただけませんか?」


「言わないとわかりませんの?」

美鈴メイリンは呆れたように呟いた。

 

明花ミンファさん、ヂェンさん、お二人の仲に不穏な雰囲気が感じられるからですのよ?」


「「ええっ?」」

驚きの声をあげながら互いの顔を見る二人。


だがその後また直ぐにソッポを向き合うのだった。


「ホラそれですのよ、自覚ありませんの?」


「…私は別にヂェンさん自体を嫌ってるワケではありませんが?」


「私も明花ミンファさんに悪い印象があるワケではございませんけど?」


でも二人ともツン!としてるのは何故だろう(汗)。


「ええと…拉致があきませんから取りあえず美鈴メイリン様の言われた通りその紙に互いの良い点を書いてもらえませんか?」

芽友ヤーヨウも困った顔をしていた。


「早くしないとお二人の自分がしたい事する時間もドンドン減っちゃいますよ?」

愛麗アイリーは中々話しが進まないせいか少し苛立ち始めていた。


このままでは明花ミンファヂェンだけでなくこの側仕えコンビの機嫌まで悪くなりそうだった。


そして側仕えコンビの不機嫌の矛先が美鈴メイリンにでも向かってしまえばそれこそ本末転倒だ。


(…いえ、寧ろそれは良い考えかも知れませんわね?)


【おい、まさか自分が悪役になる事で明花ミンファヂェンを協力させあうなんて考えてないだろうな?】


(いよいよ手段が無くなればそれも有りかと。)


【やめとけ、事態の収拾が着かなくなるのがオチだ。】


俺は変な事を考え始めた美鈴メイリンに釘を刺しておいた。


…幸い、愛麗アイリーの言葉で時間が惜しいと感じた二人は素直に紙に互いの良い点とやらを書き始めた。


ここで美鈴メイリンが一つ注文を付けた。

「互いの良い点は最低三つは書いて下さいな。」


「え、三つで良かったんですか?」


「あ、丁度今その三つを書いたところです。」


何と二人とも既に相手の良いところ三つを書いてしまったらしい。


「あ、なら私にそれをいただけますか?」


二人は書いた紙を美鈴メイリンに差し出す。


「ふむ…ではこれから書かれた内容を…。」

美鈴メイリンが読み上げようとした瞬間、


「では、私は急ぎますのでこれで。」


「早く行かないと図書室の空いてる時間も限られてますから。」


と、そそくさと二人はその場から逃げてしまった。


「あ、ここからが大事ですのに!」

美鈴メイリンは慌てて呼び止めた。

すると。


二人は踵を返すなりこう言った。

「あの、心配されなくても私はヂェンさんが十分素晴らしい方なのは知っておりますから。」


「私も、明花ミンファさんに見習うべき事があるのは意識しておりますので。」


「「「へ?」」」

美鈴メイリンと側仕えコンビは口をあんぐりと開けた。


そして恐る恐る美鈴メイリンは二人に尋ねた。

「な、なら何でお二人はそんなにツンケンし合ってますの…?」


「そ、それは…。」


「え、ええ…きっとそれは…。」


二人は互いの顔を見合わせると、直ぐに視線を美鈴メイリンへと向けて茶目っ気たっぷりにこう言うのだった。


【【美鈴メイリンさんのせいですよ♪】】


そしてニコニコしながら二人は去って行った。


「はあ…?」

一人ポカンとする美鈴メイリン


はあー、本当分かってねーなーコイツ!


「ふむふむ、あのお二人の仲自体は悪く無い、と。」


「結局はウチのお嬢様が原因だったんですねー、あーしょーもなー、でございます!」


側仕え二人も美鈴メイリンを置いてさっさと退散してしまった。


そして廊下から愛麗アイリー美鈴メイリンを呼ぶ声が。

「お嬢様ー、学院長代理に呼ばれてるんでしたら早く行かれた方がよろしいと思いますよー?」


「はっ!そうでしたわ!」

愛麗アイリーに言われて自分の用事を思い出した美鈴メイリンは、慌てて部屋を出て行った。


この様子だと明花ミンファヂェンの様子や彼女らの言った言葉の意味なんて既に忘れてしまってるかもな。


…………………。


…………さて、そんなこんなで学院長代理の待つ学院長室へとやって来た美鈴メイリン


何故学院長代理に会いにここに来たか?


結局のところ月夜ユーイー多彩蜂ドゥオ・ツァイファンを生徒会役員、そして生徒会長として使えるようにするため彼女に時間を取られるあまり学院対抗戦の打合せに参加出来なくなったのだ。


そこで急遽学院長代理自らがファン先生を補佐に打合せ代理を買って出たというワケだ。


…ただ、これにはファン先生と学院長代理の「美鈴メイリンとお話しがしたい」という欲求が全く無かったとは言えないと思うんだが。


…学院長室には既に学院長代理とファン先生が彼女を待っていた。


「すみませんお待たせ致しましたわ。」


学院長代理はにこやかに返事した。

「いえ、何かご用事がお有りでしたか?」


「少し野暮用を片付けてましたがもう問題ありませんですわ。」


「そうですか、ではおかけになってください。」


「失礼致しますわ。」


学院長の目の前の椅子に腰掛けた美鈴メイリン


ここで学院長代理と頷き合ったファン先生がツカツカと美鈴メイリンに歩み寄る。


「では、まずはこの書類に目を通してくれたまえ。」


書類を受け取り、さっと全文に目を通すと美鈴メイリンはこう洩らした。


「これは…今後の対戦日程と相手選手らの情報ですわね。」


「その通りだ。」


「既に今年も10月上旬、全学院の恒例行事としては冬迄に一通りの対戦を終了しておかなければならない。」


「私は別に真冬でも構いませんが。」


「そうはいかないよ、三年生の選手には来春の卒業が控えているし雪の中では交通も困難になるゆえ他学院間との遠征も容易では無くなる。」


そうなのだ。


この世界では交通の主流はあくまでも馬車。


蒸気機関車はまだまだ極一部だけで貨物に限定された実用化のみ。


海や河川から遠い地域では船舶による交通や輸送も出来ないため内陸に多く集中する王国郡は冬場は活動停滞期でもあるのだ。


ここで学院長代理が口を挟んだ。

「何より南学院以外の各学院にとって火の魔法鉱石採集は冬を前にしての重要行事となります。」


「ああ、確かにそうでしたわ。」


「有無。過去に魔王封印により平和が訪れた人類は数百年毎の魔物大量発生こそあるものの領土を侵略される事もなくなり緩やかに人口は増えていった。」


「しかしそのため消費される火の魔法鉱石の需要は増える一方、鉱山の発見採掘は年々追いつかなくなる傾向にある。」


「…確か、発見と採掘には使役魔獣を使用するのでしたわね?」


「その使役魔獣の飼育も年々成り手が不足、無理も無い、それだけ魔獣は幼児期から人馴れさせてるとはいえ魔力を使える分だけ野生の鳥獣よりも扱いが難しいからな。」


「知能に関しては使役魔獣の方が普通の鳥獣よりは高いと聞きましたが?」


「人間で言えば思春期手前くらいだったかな、ちゃんと育てれば性格も大人しくなるそうだ。」


「…ふむふむ、では修行相手に手頃な使役魔獣を見繕ってもらうのも面白そうですわね…!」


「馬鹿な事言ってないで話しを元に戻すぞ美鈴メイリン君?」


「ですね。」


コホンと咳払いする学院長代理が再び話し出す。

「で、学院側としましては使役魔獣こそ使えませんが皆の魔法訓練も兼ねて魔法鉱山やその付近の山々から魔法鉱山探索や魔法鉱石採集を学院行事として行おうと言うワケです。」

「本学院と致しましても時期は学院対抗戦が終わった後日、11月半ばから月末迄には実施したいと思います。」


「ちなみに北学院だけは10月後半になると生徒を分けて採集を行っていくそうだ。」


「ああ、なるほど…だから北学院との対抗戦が次に組まれているワケですわね。」

「今月中には北学院だけが対抗戦を終了する日程、オマケに各試合も短期間で終わらせるスケジュールが組まれていますわ。」


「本来なら望んだ相手学院代表選手とのリターンマッチが来春までに三度まで組まれるのですが北学院だけはこの10月中に終わらせるため今年のリターンマッチは無いそうです、可哀想ではありますけど。」


「それは北学院に負けた学院代表選手もそうですが納得してもいただくしかありません。」

「あ、北学院以外の生徒同士のリターンマッチは11月いっぱいと3月いっぱいは認められてますのでご安心を。」


「…つまり学院は冬場に備えて自給自足と資金節約の為に学院生徒総動員させるだけでなく、学院代表戦期間まで短縮させる、という事と認識してよろしいのですわね?」


「口がお悪いんですね、美鈴メイリンさん。」

学院長代理は苦笑した。


「でも否定はしません、今回は例年より期間が短い分各選手には負担をかける事になりますけどそこはご理解していただきたいとしか言えませんので。」


「いえ、事情は理解出来ますので私からそれ以上は言えませんわ。」


「私としても各試合選手には対戦相手毎の充分な準備が行えなくなるのは憂慮している、勝敗はともかく安全対策については正直防御アミュレットだけでは心許無いのも事実だからな。」


「ええ…。」


『超』が付く程の規格外娘たる美鈴メイリンなら生命の心配は無いと思うけど他の選手らは幾ら鍛えてるとは言え生身の人間である事に変わりは無いからな。


美鈴メイリンにしても自分が大丈夫だからといって相手が死んだり大怪我したりするのは避けないといけないからその匙加減が難しいだろう。


その結果、足元を掬われたりウッカリとポカをやらかして負けてしまうというのは充分あり得る。

実際問題として選抜戦で美鈴コイツは何度かポカをやらかして危うく敗退しそうになってるからな、気は抜けない。 


そんな理由もあって準備に時間が取れないのは正直なところ美鈴メイリンにも一応は勝負に不利とも言えるな。


「…で、取り敢えず私の次の対戦相手、北学院の方に付いてですけど…。」


「ああ、君には済まないが今年二年生で前回出場していない選手だからその真の実力に関しては不明だ。」


「また二年生ですのね、今年の三年生は不作なのでしょうか?」


「うん…今年の三年生は才能的には谷間の世代と言われていて文官志願者の方が多かったんだ。」


かと言って文官やその志願者達が武術や魔法攻撃に疎い人だらけというワケではない。

全体としてそのような傾向が無きにしもあらず、とは言えるし武官全体と比べればそうだと言えるが。


「魔法そのものについてはそこそこなのですけど、全体的に武力として使える方面か?に関しては疑問と言えますね…。」


「では月夜ユーイー先輩や雷音レイイン先輩の方が特殊なのでしょうか?」


「ああ、あの二人は三年生の中でも戦闘面が突出していたけどね。」


「ともかく対戦は今週末、そこから毎週一度の対戦が組まれているので移動だけでも大変です、気を付けて下さい。」


「私なら大丈夫ですわ、寧ろ対戦相手でアウェーに出向かれる方々がご苦労かと…。」


「実はそうなんだ。だからウチの試合としては中央学院領と各学院側の中間に試合会場を設ける。」


「一番遠くなるのは北と南、そして東と西の対戦、と言うことになりますわね。」


「そこで北とウチの対戦を早く済ませて東西と南北の組み合わせを中央学院近郊で実施する事になった。」


「自分以外の試合でこの学院近くで他学院同士にドンパチやらかされるのはあまり良い気はしませんわね。」


「仕方がありませんよ、それが中央学院の位置するところによる宿命ですから。」

ついため息が出てしまう学院長代理だった。


「…話しを今回の対戦相手に戻そう、これがその相手の少ない資料だ良く読んでおくように。」


美鈴メイリンファン先生から一枚の資料を手渡された。


彼女はその資料の上から下まで目を通した。


「…ほう…なるほど…。」


「問題ありませんわ、この程度の相手ならチョチョイのチョーイで片付けますわ!」


「くれぐれも相手に大怪我させないように、というのは分かってますよね?」


学院長代理から少しだけ釘を刺された。


「も、勿論ですわあ〜?」


「…目が泳いでないか、美鈴メイリン君?」


ファン先生にはバレバレか。


(そ、それが難しいから毎回苦労するんじゃありませんのお〜っ!)

心の中で地団駄を踏む美鈴メイリンだった。


大怪我させれば出血は避けられないからな。


最近忘れがちだが血を見ると力が抜けて最悪失神…なんて不様を大観衆に見せつけるわけにはいかない美鈴メイリンとしてはまたしても胃が痛くなる思いで試合に臨む事になりそうだ。


…だがどうせ今回も行き当たりばったりで何とかしちまうんだろうけどな、やっぱり。


この時まだ俺達は気が付いて無かった。


南北の学院が我が中央学院の土地を交差する、という事の持つ意味に。



明花ミンファ闘姫ドウ・ヂェンの不仲は三人の考え過ぎだったようです。


そして今度は北の学院生との対戦が決まった美鈴メイリン


しかし今後の対抗戦に何やら不穏な空気も…?

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