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第九十六話【ぶつかり合うパワー!魔法には魔法を、フィジカルにはフィジカルを!!】

美鈴メイリンが白百合のプリンセス救出に向かった先で目にしたモノとは…?


魔法研究部の扉から王都のデパートへと入り込んだ美鈴メイリン達。


ファン先生は魔法研究部部室で待機し、応援要請に応じる形となった。


「学院長代理によればここの警備兵には私達が来る事は念話連絡してあり、警備魔道具は停止させられてるそうですわ。」

美鈴メイリンからの説明で少なくとも犯罪者扱いは免れると知り安堵する面々。


その面子たるや美鈴メイリン土門竜トゥメン・ノン月夜ユーイー依然イーラン、そして多彩蜂ドゥオ・ツァイファン


彼女ら計五名が今回の白百合のプリンセス救出隊を構成していた。


「つまり安心して中を歩き回れるって事やね?」


「しかしここが敵陣の真っ只中なのは変わりありません、皆さんどうか慎重に。」

土門竜トゥメン・ノンが緊張を解きかけたところを月夜ユーイーの従者である依然イーランがすかさず釘を刺した。


店内の魔法照明は消され、常夜灯の薄暗い灯りが灯るのみの寂しい店内を進む

「白百合のプリンセス救出隊」の面々。


「あ、ここが地下入口ですわね。」


彼女らは内心ビクビクしながらも階段を降りて行く。


辿り着いた地下空間はがらんどうだった。


(前世の華やかなデパ地下と違い、特に店らしきモノはありませんのね。)


「ここは…地下倉庫で使用するスペースかしら?」


「にしては何も無いけどね。」

月夜ユーイーの何気ない言葉に今度は多彩蜂ドゥオ・ツァイファンが答える。


「…何か、感じませんか?」

美鈴メイリンは眼を閉じ聴覚と嗅覚、そして肌で空気を感じ取っていた。


「いえ、何も…?」

他のメンバーも美鈴メイリンの仕草を真似てみたが特におかしな感じは得られ無かった。


だが美鈴メイリンは何かを感じ取っているようだった。


「…こっちの方ですわね…?」

美鈴メイリンは誰に言うともなく手探りしながら進んで行った。


「あ、ちょっと待ちんさい?」

土門トゥメンが声をかけるもズンズンと進んでゆく美鈴メイリン

そして仕方無くそれに着いて行く面々。


やがて地下の広いスペースの端っこのドアに辿り着く。


ドアの隙間から僅かに灯りが漏れていた。


「皆さん、静かにして下さいな。」

美鈴メイリンの言葉にみんなは無言で首を縦に動かした。


全員が耳を澄ませた。


特に美鈴メイリンはドアにピタッと耳を付け、中の音を聴こうとしている。

俺はそんなヤツを見て少し疑問を感じ、つい話しかけてしまった。

【なーなー、聴覚を魔法で強化すれば別にドアに耳を付けなくてもいいんじゃね?】


(バカですか貴方は?)

【なっ、バカとは何だよ?】


(はあ…これだから戦いの素人は…。)

悔しいがコレは事実だ。

俺は仮面の聖霊役を仰せつかってはいるが、中身は戦闘や潜入工作には全くのド素人。


前世の大学生ゲームオタクレベルの知識しか持ち合わせちゃいねえ。


(下手に視聴覚を強化したら相手から不意打ちで目眩ましや大音響、超音波等の聴覚への攻撃を受けたら一発で失神ものでしてよ?)


【ああ、言われてみれば…。】


(ここまでの潜入は確かに上手くいきました、しかしこの先で敵が罠をしかけて待ち構えてないとも限りませんの、おわかり?)


【ああわかった、俺は暫く成り行きを見守る事にする。】


(そうして下さいな、助けが必要ならこちらからお願いいたしますから。)


【了解、気を付けてな。】

 

(ええ。)

ニッコリ微笑み再び美鈴メイリンは耳に神経を集中させる。


実はもう一言ヤツに伝えたかったんだが…

「白百合のプリンセスの事を頼んだぞ。」と。


でも後で振り返ってみればこれは言わないでおいて正解だった。


…………。


『クククク、中々頑張るじゃないか…。』


『あ、アナタ達には…屈しません…!』


『そうそう、簡単に折れたら面白くないもんな?』


『…くっ…あ、ああ、…あっ…!』


『そらそら、もっと頑張りな、そして私を愉しませておくれよ、ヒッヒッヒ…!』


『くっ…屈辱…ですっ…う、うううっ…!』


『火照った顔もそそるねえ♪』


『み、見ない…で…あううっ…。』


これを聞いていた美鈴メイリンの顔が真っ赤になった!


この会話は他の面々にもハッキリ聴こえてたらしい、皆が頬を染めてモジモジしていた。


…勿論、俺にも聴こえていた!


な、何何だ?


確かに前にも同じような会話が頭に浮かんだが…やっぱりアレは…?


んで、この中に居るのは囚われの白百合のプリンセス?


んで、さっきの会話の内容からして…。


…………ちょ、ちょっとヤバくないか?

な、何か変な意味で!


(へ、変な意味って何ですの?)


【お、俺に言わせるな!】


この場にいる全員と聖霊の仮面の中にいる俺は非常にビミョーな空気の中にいた…!


(と…とにかく突入あるのみ!ですわっ!!)

正直少しどうかなーと思ったけどそれを言う前に美鈴メイリンはドアを蹴破った!

バアン!!!


突然開かれたドアのその先では。


「何だあ?」


スキ有りですっ!」


ダアン!!


「おわっ?!」


「やった!遂にやりました、今度こそ私の勝ちです!!」


「ま、待て?今のは…」


美鈴メイリン達の第一声は

「ふえっ?」

だった。


良く見ると、白百合のプリンセスの手がタンクトップ女の手を握って上から重ねていた。

 

タンクトップ女は横にひっくり返って唖然とし、白百合のプリンセスは対象的に嬉しそうに握ってる手をテーブルに押し付けていた。


「プ…プリンセスさん?何をされておられますの?」


「…へ?」


「メ…美鈴メイリンさん?」


…………………。



「う…腕相撲?!」


白百合のプリンセスはタンクトップ女に負けた事が納得いかなくて再戦を要求したらしい。


そしたらタンクトップ女が簡単な力勝負として腕相撲を提案したそうだ。


「十戦九勝、トータルで私の勝ちだ!」


「でも私が一つ勝ったのは事実、最後に勝てばいいのです!」


「さ、さっきのは油断だ油断!ノーカンだ!」


(はあ…?…折れるの愉しませろだの、とは結局そーいう事でしたの…?)


簡単に腕が折れたら面白くない、というのはつまりそれだけ腕力に自信があった…それから愉しませろというのは腕相撲の力勝負を愉しませろってコトかよ…。


「あー何をされてたのかと思えば腕相撲?」

月夜ユーイーが少し残念そうに言った。


「はー、期待…じゃない、心配して損したよ。」

多彩蜂ドゥオ・ツァイファンはさほど心配そうにしてなかったと思うんだが?


「…て、和んでる場合ちゃうやろ皆さん?!」

土門竜トゥメン・ノンがツッコミを入れた。


「で、でしたでした!プリンセスさん、早くこちらに!」


「あ、そうでしたね。…でも。」


白百合のプリンセスの首には首輪、足首にも鎖が繋がれていた。


「これは魔力封じの金属と皮で出来ている。私からは逃れられないのさ。」

「こんな風にな!」

グイッ!

「キャッ?!」

タンクトップ女は自分が悪役だった事を思い出したように白百合のプリンセスを強引に抱き寄せた。


「メ、美鈴メイリンさん…!」

僅かにタンクトップ女の腕が胸の膨らみに当たった

せいか目が潤む白百合のプリンセス。


それを見て美鈴メイリンはちょっとだけ歯軋りをした。


(落ち着きなさい、私…。)


「…え、ええと…つまるところ…白百合のプリンセスさんは魔法が魔力封じで使えず、腕力で敵わない相手に捕まってらっしゃるのですわね?」


「そ、そうなんです。」


「なら話しは簡単じゃありませんこと?」


ツカツカと二人に歩み寄る美鈴(メイリン


「おい、それ以上近付くとこのプリンセスがどうなるか…。」


「いえ、私はただ助言して差し上げたいだけですの。」


「助言?美鈴メイリンさん、何を助言されるつもりなの?」

月夜ユーイーが不思議像に美鈴メイリンへと尋ねた。


「何、簡単な事ですわ。」


「プリンセスさんは腕力では相手に敵わない…しかし魔法なら何とかなる。」 


「しかしその魔法は魔力封じされてるのですよ?」

依然イーランにも美鈴メイリンの考えが読めない。


「いえね、ですから…。」


「要は腕力でならその鎖と首輪、引き千切れるんじゃございませんこと?」


「「「「「「えっ…?!」」」」」」



この一言に全員が固まった。


「魔力封じの首輪と鎖…しかし筋力まで封じてるワケではございませんもの、そうですわよね?」


「い…言われてみれば確かにそうやわ…。」

土門竜トゥメン・ノンにも全く予想外な答えだった。


「ば、バカ言うな?そんなワケが…。」


ブチッ!!


「あ…ホントだ、切れました…。」

ポッと恥ずかしそうな顔をして首輪と鎖を引き千切った白百合のプリンセスがそこにいた。


いや、正確には仮面が取れて仮面の剣豪から一介の生徒、闘姫ドウ・ヂェンがいたのだが。


「…あれえ?よくよく見れば、貴方は闘姫ドウ・ヂェンさんじゃおまへんかあ?」

今頃になって土門竜トゥメン・ノンはその事実に気が付いた。

仮面が取れただけで変身そのものが解けたワケではなかったから直ぐにはわからなかったのかも知れない。


闘姫ドウ・ヂェンと白百合のプリンセス、どちらも金髪でロングヘアーだったが最近の闘姫ドウ・ヂェンはポニーテールにしていたというのもあるかも知れない。


ギクッ!

美鈴メイリンの顔が引き攣った。


「あーっ、炎龍イェンロン、貴女も来て下さいましたのーっ?!」

美鈴メイリンは咄嗟に明後日の方向を見てテキトーな事をほざいた。


「いっ?炎龍イェンロン?!」

その言葉につい反応してしまう土門竜トゥメン・ノン


「…と、思ったら見間違いでしたわーっ!」

(今ですわっ!)

シュピッ!


美鈴メイリンは白百合のプリンセスが連れ去られた現場で拾った彼女の仮面を闘姫ドウ・ヂェンへと投げつけた。


ぱしいん!


いったーい…!」

美鈴メイリンの投げた仮面は猛スピードで勢いよく闘姫ドウ・ヂェンの顔に当たった。

その痛さに少し涙目になる闘姫ドウ・ヂェン


が、次の瞬間!


ゴウッ!と魔力が溢れ白百合のプリンセスの衣装が一気に復元された。


「なにィ?」

タンクトップ女が白百合のプリンセスから溢れ出る魔力の奔流の圧力で押し退けられる。


そして。


「私の名は仮面の剣豪、聖練潔白。」


「またの名を、白百合のプリンセス!」


復元したレイピアを手に、純白のドレスに黄金の王冠と仮面を纏い、彼女は完全復活を遂げてポーズを決めた。


「はああ…白百合のプリンセスさあん♪」

土門竜トゥメン・ノンはまたしてもメロメロになった。


「今度こそ遅れは取りません!」


「そいつあヤバいね?」

等と言いながらも余裕の表情を見せるタンクトップ女。


「なら私も本気でいかなきゃ、だね?」


タンクトップ女が片手を頭上に掲げる。

と、その手にはあの弓が握られていた。


「皆さん、気を付けて!」

白百合のプリンセスが叫ぶと皆がそれぞれの武器を手にした。


タンクトップ女は壁を背に弓を構える。

そして彼女の表面を光装鎧殻ライトアーマー

覆った。


「フフフ…どんな魔法や武器を持ってしても、このフォトンアローとライトアーマーに敵うものか。」


「言いましたね…。」


「プリンセスさん、敵の言葉に乗ってはダメですわ。」


「私達が魔法で援護いたしますわ、だから貴女は遠慮なくリベンジなさって、くださいな!」


「出来れば一対一で…と言いたいですけれど…」

「貴女方の厚意、受け取ります。」


「では、存分に。」


「はい!」

美鈴メイリン達のからのバックアップを背に白百合のプリンセスは光装鎧殻ライトアーマーの弓使いに突進した。


ガシッ!


白百合のプリンセスのレイピアを光装鎧殻ライトアーマーの弓使い…面倒だから弓使いでいいか?が弓で受け止めた。


「その鎧が重くて足枷のようですね?今度は簡単に追いつきましたよ。」

光装鎧殻は比較的軽装とはいえ全身を覆うその外殻は表面こそ光るエネルギーで覆われているものの、

その下には列記とした金属製の鎧が使われている。


よってそれなりの重量はあるはずだ。


これが完全な光子だけで構成される光子装甲フォトンアーマーなら負荷となるような重量はほぼ発生しない。


だがそれにはとんでも無く莫大なエネルギーが継続的に消費され続けるため未だ理論だけの未完成なのだ。


というワケでこの鎧は結構重い。

そして重さだけでなく鎧そのものが身体の可動域を狭め、更に動きへの抵抗も前より増しているはずだ。


(くそ、相手の人数の多さから防御面を強化したんだが…却ってこの♪相手には裏目に出たか…!)


そして白百合のプリンセスの鍔迫り合いからの言葉攻め。


白百合のプリンセスは心理戦も駆使した。

これが弓使いにやや焦りを生んでいた。


「はん!どれだけ強がろうとこのフォトンアローの威力を保ってすれば…、ええい、さっさと離れろ!」


「それは出来ない相談ですね(笑)、やはりこんな至近距離であの矢は放てないご様子…クスクス。」


白百合のプリンセスがからかうように笑うためそれが弓使いの心を更に苛つかせる。



「フフフ…今の私は先ほどまでとは一味違います、それを証明致しましょう!」


白百合のプリンセスは敢えて弓使いから距離をとる。


「さあ、今度こそ負けません、リベンジして差し上げます!」


「ほざくな!今度こそ蜂の巣にしてやるよ!」

もうこの弓使いは白百合のプリンセスをモノにする事よりこの場から逃れる事を選択したようだ。


キリキリ…と弓を引き絞る弓使い。


「喰らえっ!」


「百の流星!」


フォトンアローが放たれた。


前回白百合のプリンセスが喰らったあの技だ!


ビームが百本の矢となり白百合のプリンセスへと降り注がれる。


「いざ!」


白百合のプリンセスは身構える。


「プリンセスさん?どうしてシールドを…、」

月夜ユーイーが疑問に思った。

「無茶だ、防御も無しなんて…!」

「如何に仮面の剣豪とはいえ、これは…?」

他の多彩蜂ドゥオ・ツァイファン達もそうだったに違いない。

不安そうな表情をしていた。


しかし。


「いえ、これでいいのですわ。」

「そうやね。」

美鈴メイリン土門竜トゥメン・ノンはこの白百合のプリンセスの行動こそが正しいと判断していた。


白百合のプリンセスはレイピアに纏う輝きを一層強く瞬かせた。


そして身体をくねらせる。


【秘剣・朧返おぼろがえし】


白百合のプリンセスがそう口にした。


刹那、彼女のレイピアにフォトンアローの一発が当たった。


その他のフォトンアローは巧みに身体をくねらせた白百合のプリンセスの横をすり抜けていった。


そしてレイピアに弾かれ反射したフォトンアローはその他のフォトンアローの光軸へとぶつかってゆく。


するとそこから同じような連鎖反応が発生した。


白百合のプリンセスのレイピアから反射させられたフォトンアローが当たったフォトンアローは別のフォトンアローへ向かい、これを反射させた。


更にその反射したフォトンアローはまた別のフォトンアローへ、という具合に次々と連鎖反応を起こし他のフォトンアローの光軸を攻撃していったのだ。


そして最後のフォトンアローは発射元へと向かう。


「な、何いいっ?!」


そう、フォトンアローを放った弓使いの手にする弓へと向かったのだ。


バギイン!!


戻って来たフォトンアローは弓使いの弓を粉砕した!


「ててて…ば、バカな?何故こんな…。」

弓使いはまさかのこの出来事に呆然とした。


「これぞ柔よく剛を制す、ですわね。」

美鈴メイリンが自分の事のように鼻高々だった。


「な、何故だ?前回よりもオマエの魔力が桁違いだ…。」


「それはこの仮面にあります。」

美鈴メイリンさんからの真心とパワーが込められたこの仮面を付けた時、私の能力は倍化する!」

白百合のプリンセスがポーズを取った。

ジャーン♪…と、其れに合わせて音楽が鳴った気がした。

まあ、彼女の語った事は事実だろう。

しかしウンウン♪と頷く美鈴メイリン以外の面々は口あんぐりとして白百合のプリンセスを見ていたが…。


「さあこれで勝敗は決しました、大人しくお縄に付きなさい。」


「ケッ、まだまだフィジカルじゃオマエなんかに負けねーんだよ!」


白百合のプリンセスに掴み取るかかろうと飛びつく弓使い。


だが。


「貴女、腕力に自信がおありなのですのよね?」


美鈴メイリンがその前に立ち塞がった。


「こうしてはいかがでしょうか?実は私も腕力には少し覚えがございますの。」


「今度はオマエが相手になるってのかい?」


「ええ、そちらの大好きな腕相撲とやらで勝負いたしませんこと?」

「貴女が私に腕相撲で勝ったならこの場は見逃して差し上げますわ。」


「別に見逃さなくてもオマエらを蹴散らすなど造作もないが…まあいい…それも面白そうだ。」

弓使いはニヤッと笑った。


美鈴メイリンさん彼女の腕力を侮ってはいけません…!」


「大丈夫ですわ、直ぐに終わらせますから♪」


「よーし、吐いた言葉に責任持てよ?」

弓使いは自分が勝つと信じて疑いもしなかった。


そしてそれは美鈴メイリンも同じだったようで。


ガシッと手を握って肘をテーブルに付ける両者。

 

「おいプリンセス、審判やれや。」


「…仕方ないですね、不正が分かれば即座に斬りますからね?」


「そんなん不要だよ、こんなガキに負けるかい!」


「私もこんなゴリラ女ごときに負けるなど有り得ませんですわ♪」


「ご、ゴリラあ?!」


「あーコラコラ、始まる前から腕に力を入れるんじゃありませんことよ?」


白百合のプリンセスは握られた両者の手を掴んだ。


「それでは…レディー、………ゴー!」

白百合のプリンセスが手を離す。


ガッ!と両者の手に力が入る。


「この私をゴリラ呼ばわりした事を…悔やませてるぜえーっ!!」


物凄い形相で美鈴メイリンを睨み付けながら美鈴メイリンの右手をテーブルに付けようとする弓使い。


「おお…なるほど、これは手強い。」


「ど、どうだ…ま、参った、か…?」


ギリギリと腕に力を込める弓使い。


だがあと数センチメートル、というところから一向に美鈴メイリンの手はテーブルに近付こうとはしなかった。


「ホントかなりの腕力ですわねえ、あと何秒くらいこのパワーを維持出来るのか見てみたいですわね。」


弓使いは美鈴メイリンの言葉に気を良くして更に力を振り絞る。


なのに美鈴メイリンの声と態度には全然苦しそうな気配すらない。


「う…ぐ…。」

徐々に弓使いの腕がプルプルと震え始めた。


「あー、このままでは…その、腕が折れちゃいますわよ?」


「知った事か!このまま折れちまいな!」


「あら、いいんですの?」


「では折ります、本人から言質取れましたので遠慮無く。」


「有無、確かに私にも聞こえましたわあ。」


「生徒会長として確認できたわ、美鈴メイリンさん存分におやりなさい?」


「はい!」

月夜ユーイーからのお墨付きを貰い、ニコーッと美鈴メイリンが笑った。


「一、二の…」

ザーン!!」


いや、そこは「三」だろ…?


次の瞬間、美鈴メイリンの手が一気に起き上がると反対に弓使いの手をテーブルへと叩きつけるのだった!


ズドーン!!


テーブルはそのタイミングで砕けた!


テーブルにしこたま手をぶつけられ、悲鳴を上げる弓使い。


「ギャアアアーッ!!!」


ボギィッ。


嫌な音がした…。


「あー済みません、折るだけのつもりでしたが…。」

済まなそうに美鈴メイリンが言う。

「折るどころか…砕けてしまいましたわね…?」


弓使いの手は五指がそれぞれバラバラな向きを向いていた…。


………………。


かくして、来る時の緊張とは裏腹に実に呆気なく弓使いは御用となった。


「やり過ぎですよ美鈴メイリンさん?」


「す、すみませんでしたわ…つい力が入り過ぎてしまいまして…。」


白百合のプリンセスに叱られ、ペコペコ頭を下げる美鈴メイリン


「結局、私達ゃ何しに来たのだろーねー?」


美鈴メイリンさんの無双ぶりを観戦しに来たのか、それとも…。」


「白百合のプリンセスさんと彼女のイチャイチャぶりを見せつけられに来たのかの、どっちかよね?」


多彩蜂ドゥオ・ツァイファン依然イーラン、そして月夜ユーイーが出番が無くてブータレていた。


「まあまあ、白百合のプリンセスさんがご無事で良かったやないですか?」

土門竜トゥメン・ノンは白百合のプリンセスが無事なら結果オーライという認識らしい。


「ひいい、手が…手がああ〜…」

弓使いはベソをかいていた。


「大人しく付いて来なさい!直ぐに治療して貰いますから!」

依然イーランが鎖で縛られた弓使いをロープで引っ張り、月夜ユーイーが先導して扉を潜る。


その他の面々も扉から魔法研究部部室へと戻ってゆく。


それを尻目にまだ白百合のは美鈴メイリンを叱っていた。 

彼女の心の声を盗み聞きしてみたところ、これは美鈴メイリンのやり過ぎを叱ってるというより自分でヤツとの決着をキチンとつけたかったのが本音らしいがな。


「…で、何でそんなに力が入ったのですか?」

「まあ貴女の事ですから力比べが嬉しくて調子に乗ったのでしょうけど…。」


「ち、違いますわ!…いえ、ちょっとはそれもありますけど…。」


「え?他の理由が?」


「…あ、えーとお…」

「の、ノーコメント…ですわ!」

美鈴メイリンは焦りながら扉を潜った。


「教えて下さいよー、美鈴メイリンさーん?」


白百合のプリンセスは美鈴メイリンを追いかけるのだった。


結局見てるだけに終わった俺はちょっぴり美鈴メイリンに嫉妬した。


だってアイツは白百合のプリンセスに何をしたか分からない相手に対して湧き上がる気持ちを抑えきれなかったんだろうからな。






タンクトップ女と白百合のプリンセスが意味深に漏らしていた言葉の意味は、何と腕相撲!


そこから一気に白百合のプリンセスVS弓使いの再戦、そして美鈴メイリンも腕相撲での参戦!


今回は少し美鈴メイリンの自制が効かなかったようですな。

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