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第九十二話【激突!闘姫(ドウ・ヂェン)VS土門竜(トゥメン・ノン)!!】

行きがかり上というか土門竜トゥメン・ノンの勘違いから彼女と試合することになった闘姫ドウ・ヂェン


しかし彼女達が見せたその実力の一端に観戦していた皆は驚愕するのです。


「何でこんな事になったのでしょうか…。」

正直、闘姫ドウ・ヂェンは困惑していた。


今彼女は西の貴族学院から観光に来たと自称する二年生の土門竜トゥメン・ノンから勝負を挑まれグランドに立っていた。


月夜ユーイーからそれを学院長代理に告げると特にどうという事もなく承認された。


そして美鈴メイリン達とファン先生の協力を得て簡単な試合会場が作られた。


「では我々は結界の外に出るから。」

ファン先生からそう言われた二人は防御用アミュレットと歯止めをされた剣を一つずつ手渡された。


(これは公式の試合では無く練習試合みたいなものだから手渡された武具のせいには出来ませんね。)


闘姫ドウ・ヂェンは手渡された剣を確認した。


「さて…。」

(コレはコレでモノは考えよう、仮面の剣豪本来の力は出せず身体能力強化する仮面すら使えないこの状況で今の自分の力量を測る良いチャンスかも知れないですね…。)


聖練潔白せいれんけっぱく』…いや『白百合のプリンセス』は前世と同じ人間体の自分の現在の実力を図る好機と考える事にしたようだ。


そして対戦を申し出た土門竜トゥメン・ノンはと言えば。


(クフフ…さあて、今年の中央貴族学院代表の実力とやらはどれほどのモノなのか…確かめさせてもらいますわぁ♪)


………完全に勘違いしていた!


闘姫ドウ・ヂェンがかなりの実力者であることを美鈴メイリンが仄めかした途端、闘姫ドウ・ヂェンが学院代表だと思い切り思い込んでしまったらしい。


彼女の佇まいを見れば疑うのも仕方が無いのだが、美鈴メイリン闘姫ドウ・ヂェンを称賛する言葉は自分よりも強いと美鈴メイリンが言ったようにも聞こえたらしい。


仮にソレが本当だったとしてもハナから闘姫ドウ・ヂェンは出場するつもりなど無いのだが。


何せ本当なら数百年前にいた人間だし。


……………。


月夜ユーイー先輩、依然イーランさん、ファン先生?」


「何かしら美鈴メイリンさん?」


「この場はお任せいたしますわ。」


「どういう事かな?」


「私これからちょっと行く場所がございますので失礼致します。」


そこまで言うと美鈴メイリンはグランドを去っていった。


そして林の方へ身を隠すと。


有翼飛翔魔術ウイングフライト!」


美鈴メイリンは空を一直線に飛んで行った。


(私の勘が当たっていればおそらく土門トゥメンさんは…)


美鈴メイリンの目は王都へと向けられていた。


美鈴メイリンさんは何処に行かれたのですか?」

明花ミンファ美鈴メイリンが飛び去ったのを見て美鈴メイリンから話しかけられていた月夜ユーイーに何か聞いていないか尋ねた。


「いえ、私は彼女から特に行き先を言われてないわ。」


「彼女なりに何か考えがあるんじゃないかな?」


美鈴メイリンさんが飛んでいった行き先は王都の方向かと。」


月夜ユーイーファン先生、依然イーランは口々に返答した。


「もうこれから闘姫ドウ・ヂェンさんと土門トゥメンさんの試合が始まるというのに…どうされたんでしょう?」

明花ミンファ美鈴メイリンの不可解な行動が気になった。


「さて、それでは始めてしまおうか。」

ファン先生は審判役をかってでた。


「これは飽くまでも親善試合という名目で学院長代理に届けているから攻撃魔法は禁止とする。」


「また知っているとは思うがいかなる顔面への攻撃も貴族学院に於いては完全禁止だからそのつもりで。」


顔面は致命傷に及ぶ危険大だ。


如何に防御アミュレットを装備するとはいえど万が一もあるし何より禁じ手を用いるのは名誉を穢す行為なので誰もやらない。


ただし頭部に関しては凶器や魔法を直接当てなければ有効とされる。


フルコンタクト空手が顔面攻撃無しで頭部へのハイキックが許されてるようなモノと考えればいいだろう。


「それでは…始め!」


ザッ。


ザッ…。


闘姫ドウ・ヂェン土門トゥメンが互いに足場の土を踏み締めた。


それぞれが攻撃の構えを見せる。


闘姫ドウ・ヂェンは片手で剣を持つフェンシングの構え。

中段で剣先を相手へと向けていた。


一方の土門トゥメンもまた中段の構えを見せる。


だがこちらは剣道のように両手で剣を持つ正眼の構え。


闘姫ドウ・ヂェンは白百合のプリンセスの時に用いるレイピアの感覚だろう。


対する土門トゥメンはどんな武器を用いた戦いをするのか検討もつかない。


彼女にとってこの剣は普段通りに使える武器なのか、それとも…。




「行きます!」

先に仕掛けたのは闘姫ドウ・ヂェンの方だった。


ダッシュして一気に距離を詰めると突きを高速で見舞う。


そしてそのまま中段突きを連続で見舞う。


彼女は土門トゥメンの力量を測るより自身の普段の姿での実力を測る方が重要なのだろう、積極的に仕掛ける事でそれを見極めるつもりらしい。


しかしそのことごとくを土門トゥメンは己の持つ剣でさばいてしまう。


「なかなかの剣捌きですわぁ。」


「それは…どうも!」


涼しい顔で剣を避け続ける土門トゥメン

それが少ししゃくに触ったのか闘姫ドウ・ヂェンの剣に一瞬力がこもった。


それは突きと見せかけたフェイントから横に薙ぎ払う斬撃だった。


ギイン!


「くっ?」


辛うじてそれを受け止める土門トゥメン


僅かに両者の剣から刃の破片が溢れた。


(いけませんね、つい…。)


危うく剣を折ってしまうところだったと気が付いた闘姫ドウ・ヂェンは一端離れて剣を構え直す。


「あのテイクバックのほとんど無い、力の込めにくい横払いでこれ程の剣圧を出せるなんて…。」


土門トゥメン闘姫ドウ・ヂェンの見せた実力の一端に感銘を受けた。


「さすが、中央学院高等部代表だけありますわぁ。」


「…は?」

闘姫ドウ・ヂェンは虚をつかれたような表情になった。


「あの…今なんて…、」

闘姫ドウ・ヂェン土門トゥメンに問いかけようとした時。

 

「今度はこっちから行きますわぁ〜!」


土門トゥメンの身体から闘気が燃え上がった。


「え?まさか攻撃魔法?」

明花ミンファ土門トゥメンの反則を疑った。


「…いや、これは…。」


土門トゥメンの身体が一瞬ブレた。


「来る!」

闘姫ドウ・ヂェンもまた身体がブレた。


しかし気が付けば両者は既に激突していた。


ガガガカカカガガガン…!!!


無数の火花が彼女らの周囲に舞う。


互いの剣が欠け、その欠片高温となりが粉末状に散らばっているのだ。


「身体強化魔法だ…しかしまさかこれ程とは…!」

ファン先生は脅威的な二人の剣速に驚きの声を挙げた。


「………。」


「………!」


当の二人が何か叫んでいる。


しかし早回しな高音で何を叫んでるのか良く聞き取れない。


「これは身体強化どころか加速魔法…いえ、魔術かしら?を使ってるかもしれないわね。」

月夜ユーイーはこの戦いを冷静に分析していた。


そして何か聞き覚えのあるような気のする土門トゥメンという名前を頭の中で反芻していた。


土門トゥメン土門トゥメン…確かに聞き覚えがあるはずなんだけど…。)


すぐそこまで出かかってるのになかなか思い出せなくてもどかしい思いをする月夜ユーイーだった。


月夜ユーイーが頭を捻って記憶を取り戻そうと頑張ってる間に闘姫ドウ・ヂェン土門トゥメンの戦いは斬撃の応酬から突きを繰り出し防御又は躱し合うという勝負に。


ビッ!


ピッ!


シュシュッ!


キン!


バッ…ズバッ!


カカカッ!


キイン!


ヒュ…ヒュン…!



「なかなか、おやりに…なられます…わねぇ…!」


「…そ、ちら…こそっ!」


二人の剣捌きに、観戦していた明花ミンファ愛麗アイリー芽友ヤーヨウの二人、そしてファン先生は感嘆の声を洩らした。


「…す、凄い…。」


「何と言うスピード…!」


「目が…追い付きません…!」


「これは…そうだな、代表選抜戦剣の部門決勝での美鈴メイリン君と雷音レイイン君の試合と同等…いや、それ以上だな…。」


そこへ依然イーランからのこんな言葉が。

「確かにそうです。」

「しかも両者はまだこれでも本気では無いのでしょう。」

「それは多分、美鈴メイリンさんも本気では無かったと思われますが…。」


この言葉に明花ミンファ達は驚いた。

「「「えええ〜っ?!」」」


「そうなのですか?」

「以前、美鈴メイリンさんと闘姫ドウ・ヂェンさんが稽古していた時もここまで凄くはありませんでしたが…!」


「それは稽古であればそうでしょう。」

依然イーランは苦笑した。


そしてこうも付け加えた。

「しかし、正直これ程とは…。」

依然イーランは一瞬武者震いをし、そして汗をかく。

(今の私で…この二人の本気に対してお相手が務まるのだろうか…?)


依然イーラン…。」

月夜ユーイーは一端考え事を止めた時、隣の依然イーランの様子に気が付く。


依然イーランは目の前出行なわれている攻防に戦慄していたのだ。


(貴女ほどの手練れがそこまで…。)

そして彼女もまた闘姫ドウ・ヂェン土門竜トゥメン・ノンの手合わせを見るや、そのすさ差に引き込まれて戦慄するのだった。


剣捌きもだがフットワークも観るものの理解が追い付かない。


目には映っても、それが何なのか、どういう意味で行われているのか理解するまでに次々と行動が行われて、脳の処理が追い付かないのだ。


辛うじてどんな攻防が行われているのか理解出来ているのは、この場では依然イーランくらいのものだろう。


だが。


「こんなスピード、何時までも持ちませんわね。」


「「「「「「えっ…?!」」」」」」


観戦していた彼女らの背後から呑気な声がした。


「観戦には何とか間に合いましたわね。」


いつの間にか美鈴メイリンがそこにいた。


有翼飛翔魔術ウイングフライトで王都方面にすっ飛んでいったはずの美鈴メイリンが。


「少しお待たせ致しましたわ。」

茶目っ気たっぷりな笑顔を見せる美鈴メイリン


美鈴メイリンさん!」

「お嬢様〜、何処にいってらしたんですかあ?」

闘姫ドウ・ヂェンさん凄い試合してますよ?」


「それはそうですわ、あの闘姫ドウ・ヂェンさんですもの♪」

自分の事のように自慢する美鈴メイリンだった。


「おや美鈴メイリン君、後ろにいるその生徒は…?」

ファン先生が目敏く美鈴メイリンの背後にいる生徒に気が付いた。


「あら…その制服は…。」

月夜もまたその生徒に気が付いた。

そして彼女が来ている服が土門竜トゥメン・ノンと同じ暖色系の色をした制服である事にも。


「気付かれましたか。」

美鈴メイリンはその生徒を前に出るよう促す。

「さ、あの生徒をご覧になってくださいな?」


「う…うん…。」

やや戸惑いながらも三歩ばかり前に踏み出すその生徒は取り敢えずその場の全員に向かってこう挨拶した。


「はじめましてですわ、ワイは西の貴族学院高等部におるものでして…。」

その自己紹介の途中で彼女はこう絶叫した。


「あああ〜っ!?」

土門トゥメンさん、土門トゥメンさんやおまへんかああ〜〜〜っ!!」


流石は仮面の剣豪、白百合のプリンセスだけの事はある闘姫ドウ・ヂェンですが、彼女がまだ本気でないとはいえそれに付いていける土門竜トゥメン・ノンもまた只者では無いようです。

 

そして彼女の正体は美鈴メイリンの連れて来た西の貴族学院生徒により判明しそうです。


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