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慈悲深い仮面の剣豪は、実は血を見るのが苦手な中華風TS美少女です!  作者: 長紀歩生武
第一章【高等部入学編】
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第九話【メインヒロイン…その名は明花(ミンファ)】

高等部入学式を迎え、ゲームスタート。

この世界の元となった百合ゲーム、

そのメインヒロインが登場します。

メインヒロインと言えばゲームプレイヤーたる主人公と仲良くなりやすいのが特徴。

ご多分に洩れず、彼女もまた主人公キャラである美鈴メイリンと…。


『………新入生代表、黎美鈴リー・メイリン。』


美鈴メイリンの挨拶が終わり、拍手を受けて壇上から下がる美鈴メイリン


今、学院では粛々と入学式が執り行われていた。


この貴族学院は、ほぼエスカレーター式とは言えど初等部から中等部、中等部から高等部へは一応入学という形にしてある。


これも一つの区切りを付ける事で段階を上がる事を学院の内外に伝える意味があるのだろう。


決してゲームイベント的に絵になる演出が作りたいから、と言うわけでは無い。


多分。




入学式が終わると各新入生達の保護者は帰宅していく。


生徒らとの会話もしない。

これは年齢的に親離れを進める意味もあった。


「さ、これで漸く私達の役目も終わった。」

「後は仮面の聖霊にお任せしよう。」


「ええ、でも…。」

「やっぱり心配ですわ…。」


「そうだね。」

「彼女はこの学院高等部では寮生となる。」


「仮面の聖霊もだが、後は如何にあの子が役に立ってくれるか。」


「あの子を彼女の側仕えに推薦したのは貴方でしたわよね?」


「ああ。少々問題はあるが、あの子以上に適任はいない。」


「そう、信じたいがね。」


「………でもやっぱり不安ですわ。」


他の生徒達の保護者が皆、帰った後の校庭で、二人佇み続ける美鈴メイリンの両親、リー夫妻であった(百合世界なので、一応女同士の夫婦)。




入学初日は高等部校舎案内、そして学内組織の説明、部活動の勧誘、クラス委員の選抜が行われた。


クラスのメンバーは中等部時代とあまり変わらないが、数名が他のクラスと入れ替り、中には他の学校へ転校した生徒もいた。


そして、入れ替りに他校から転校してきた生徒も。


クラスの一人一人は改めて、または初めてとなる自己紹介を教室の壇上で代わる代わる行っていた。


美鈴メイリン愛麗アイリーの自己紹介が終わると、その女子が入れ替わるように自己紹介の為の壇上に上がった。

遅れて召し使いの子が後に続く。


「皆さん初めまして。私はこの度実家が貴族になったご縁からこの学校に通う事になりました。」


「名前は文明花ウェン・ミンファです。」

「そしてこの子は私の側仕えで…」


宋芽友ソン・ヤーヨウです。」

恭しく頭を垂れる宋芽友ソン・ヤーヨウ


「側仕え共々、よろしくお願いいたします。」


パチパチと拍手が鳴る。


「………。」


(…ミンファ?…じゃ、やっぱりこの子が!)


【おいでなすったな、クラスメイトの攻略対象が。】


(ええ、そして彼女こそが。)


この百合ゲームのメインヒロイン!


…え?メインヒロインは私…美鈴メイリンじゃないのかって?


彼女は攻略対象のメインヒロインとは違う存在、つまりプレイヤーキャラである主人公なのだ。


百合ゲームはこういう部分がややこしい(笑)。


何故、明花ミンファがメインヒロインになるのか。


それは同級生ゆえに3年間ずっと主人公と一緒に過ごせるからだ。


教師も3年間一緒に学校に在籍はするもののやはり立場的に共にいられる時間が限られてくる。


そこで同級生の彼女にメインヒロインの白羽の矢が立ったのだ。


やや目立つ顔立ちながらスタイルも性格もあまり自己主張し過ぎない彼女だが、皆から好かれそうな雰囲気がある。





…………そんな風に美鈴メイリン明花ミンファを眺めながら考察していると隣の席の愛麗アイリーから冷たい視線を感じた。


「どうしました、愛麗アイリー?」


「いえ、何でもありません。」


ツーンとそっぽを向く愛麗アイリー


「?」首を傾げ、再び明花ミンファの方を向くと、明花ミンファとバッチリ目が合った。


軽く驚く美鈴メイリン


そして顔が真っ赤になりながらも笑顔で軽く会釈する明花ミンファだった。



その日、新入生達は少し早目の下校となった。


愛麗アイリー、帰りますわよ。」


「…………はーい。」


「何をそんなにむくれてますの?」


「むくれてませーん。」


「それより早く寮の部屋の荷物を整理してしまいますわよ。終わったらお茶にしましょう。」


「貴女の好物のお菓子、持って来てるのでしょう?」


「あっ、そうでした!」


お菓子に釣られてガバッと立ち上がる愛麗アイリーは先頭を切って歩き出す。


まだゆっくりしていた他の生徒達はそんな二人の様子を眺めながらクスクスと笑った。

「あらあら、元気そうな側仕えですね。」

「仲が良さそうで微笑ましいですわ。」


教室では貴族とその側仕えが隣に並ぶ席の構成となっていた。


教室の廊下側と窓際が側仕え、教壇のある真ん中よりの二列に貴族という構成だ。


美鈴メイリン明花ミンファは隣り合わせの席になっていた。


宋芽友ソン・ヤーヨウが自分の仕えるお嬢様である文明花ウェン・ミンファに話しかける。

「お嬢様、先程の方がこの国の貴族の中でも魔法と剣術で右に出る者がいないと呼ばれるリー家のご息女です。」


「まあ、そんな凄い方と隣の席になれたのですね?光栄ですわ。」


芽友ヤーヨウ明花ミンファの側に近より小声で話す。


「いかがですか?あんなに立派な方とは流石に釣り合わないとは思いますが、上手く行けば玉の輿…。」


「な、ななな?」

明花ミンファが慌てふためく。


「あちらの方はともかく、お嬢様自身は結構脈有りと思われたのですが?」


「ま、まだ知り合ったばかりで言葉も十分交わしてないのですよ?」


「なら、これから仲を深めて下さいませ。」

「婚姻を結ぶならこれ以上無い物件でございます!」


「…………か、考えて、おきます…わ…。」

ボーッとしながら物思いに耽る明花ミンファ


(私は、ただ将来の為に必要な知識を得たくてここに参りましたのに。)


(何故、婿役の恋人を見つけねばならなくなったのでしょう?)


(………でも。)


(……………黎美鈴リー・メイリン様ですか。)


美鈴メイリンの顔を思い出しながら物思いに耽る明花ミンファ


「おーい、お嬢様ぁー。」

目の前で手を揺らす宋芽友ソン・ヤーヨウにも気が付かないくらい明花ミンファ美鈴メイリンの事ばかりを考えていた。


……………………………。



この学院は学問と魔法と武術、そして礼節を学ぶ学院ではある。


だが同時に各貴族の格好のお見合い場所としても機能していたのだ。


古いしきたりから家同士で許婚者を決める事もあるものの、この世界ではそれぞれの自由恋愛による結婚を重視する傾向もあり、最も恋愛カップルの成立しやすい年代である高等部の各学校が出会いとカップル成立のための場所となっていた。


中にはお嬢様と側仕えが結ばれるという例外な結果もあるが、それは本当に例外中の例外ともいえるくらいに極めて少数派だった。

破局すれば側仕えをクビになるので、こんなリスキーな恋愛を望む側仕えはほぼ皆無だ。


同じくらいに少数派なのが生徒と教師という組み合わせ。


この場合も生徒の卒業後、即結婚しなければ教職をクビになってしまうからこちらもハードでリスキーだ。


だからというワケではないのだが、ほとんど生徒同士のカップルが成立する。


上級生と、または下級生とカップルになる場合もあるものの、一番多いのが同学年同士だ。


ともあれ、この国の貴族同士の結婚はほぼ学校生活で相手が決まるといっても良い。


この日、美鈴メイリンはこの百合ゲームのメインヒロインである攻略対象、文明花ウェン・ミンファと出会った。


そして彼女のハートに居座る事に成功した。

一般に言うフラグが立ったってヤツだ。


これが本人が意図せぬうちにそうなっていたのはメインヒロインの力か。



「な、何だか背中がゾクゾクしますわ…?」


「お嬢様、今日は早く横になられた方がよろしいのでは?」


一通り荷物の整理を終えた美鈴メイリン達は持って来たお菓子を頬張りながらお茶を飲んでいた。


「ではそうさせて貰います。」


美鈴メイリンはパジャマに着替えようとする。


「あ、それならお手伝いいたします。」


愛麗アイリー美鈴メイリンの服を甲斐甲斐しく、ゆっくりと脱がせては一つづつ丁寧に服を折り畳んで行く。



その頃。


「お嬢様、とにかくお近づきのためにも

アタックあるのみです!」


「そ、そんな事おっしゃられても…。」


「鉄は熱いうちに打て!事は一刻を争います!」


「………急いては事を仕損じる、とも言いますが?」


芽友ヤーヨウに急かされて明花ミンファがお裾分けを持って美鈴メイリンの部屋へやって来た。


「あの、黎美鈴リー・メイリンさん、お邪魔してよろしいでしょうか?」


『ど、どなた?』


「私です、同じクラスの文明花ウェン・ミンファです。隣の席の。」


『み、ミンファさん?!』


何故か慌てたように大声になる美鈴メイリン


(あら、ドアが開いてますわ?)


「入りますねー。」


うっかり部屋へと入った明花ミンファがそこで見たモノは。


「は、入っちゃダメエ~?!」


「えっ?」


美鈴メイリンが下着姿だった。


明花ミンファはドキッとしたが、それはまだ理解できる範疇の出来事だ。


だが、解せない行為をしている人間が一人いた。


「あの、貴女は美鈴メイリンさんに一体何を為されているのですか?」


「じゃ、邪魔しないでください!私はお嬢様のお着替えを手伝うという崇高な使命を果たさねばならぬのです!」


明花ミンファの目には美鈴メイリンを無理矢理脱がそうとしている痴女が映っていた。


「あの、下着の着替えまで手伝う必要があるのですか?」


「わ、私は嫌なんだけど、この子が勝手に暴走しはじめて……!」


「お嬢様ぁ、今更ではありませんかぁ。」


「い、いつもなら他の召し使い達がこの子の暴走を止めてくれてたのですが、今日からはいないのでした………うっかりしてましたわ!」


「………そ、それは大変ですね?」


「あの、見てないで助けて下さいまし?」


「はっ?………す、すみません、つい、リーさんの肌の美しさに見とれてしまって!」


「は、はあ?」


「な、何でもないです!今助けます!」


明花ミンファ愛麗アイリーの腋の下をコチョコチョとくすぐった。


「あふ、うおふうっ!」


瞬時に悶えて美鈴メイリンから手を離すと、床に転がり悶えまくる愛麗アイリー


「あ、ありがとうございます、助かりましたわ。」


「い、いいえ。…あの、ですが貴女程の方なら簡単に逃げられたのではありませんか?」


「………いえ、こんな狭い所では加減を誤ると部屋ごとふきとばしてしまいかねませんから。」


「い、一体どんな力を使うつもりだったのですか?」


……………。



愛麗ちかんを縛り上げて床に転がすと美鈴メイリン明花ミンファにお礼のお茶を出した。


「…………と、いうわけでこの子は変態ではありますけど親友でもあるのです。」


「だいぶ歪んだ友情に見えますけど。」

苦笑いで応える明花ミンファ


「あの、ところでお伺いしたいのですけど。」


「はい、何かしら?」


「………その、リーさんって、」


「今、心に決めた相手はおられるのですか?」


「ぶっ!?」


危うくお茶を明花ミンファに吹き掛けそうになった美鈴メイリンがゴホゴホと噎せている。


「失、礼…、な、何を、聞かれるのかと…ゴホゴホ、…思えば?」


「突然変な質問したので驚かれましたよね?」


「いえ、高等部にもなればそんな話しもされますわよね…。」


「あの、それで、ご結婚や婚約を考えてる方はおられるのですか?」


「………い、いえ、今の、ところ、は…。」


「そうなのですか?」

明花ミンファの顔が少し明るくなった。


「実は、私もまだなんです!」


「いやあ、両親や側仕えからは早く相手を見つけろと煩く言われてまして、正直うんざりしてたので、お仲間がいて嬉しいです!」


「あ、ああ。そうでしたか。私の処はその辺がかなり放任的でしたので…。」


「そうでしたか?羨ましいなあ~。」


「あの、ウェンさん、言葉がかなりくだけてますけど…?」


「あ、ごめんなさい!私最近まで庶民だったもので、つい。」

ペコリと頭を下げながら笑顔で舌を出す明花ミンファ


「そうでしたか。ウェンさん、良ければこれから庶民のお話しとか色々聞かせていただけませんか?」


「ええ、そんな話しで良ければ是非!」


「これで、私達はお友達ですわね。」


「い、いいんですか?私なんかがお友達で。」


「勿論です。私の事は美鈴メイリンで結構です。」


「では私の名前も明花ミンファとお呼びください。」


「ええ。よろしくですわ、明花ミンファ。」


「こちらこそです、美鈴メイリンさん。」


にこやかに微笑みあう。美少女ヒロイン二人。


………その足元では痴女の罰で縛り上げられた側仕えが床に転がっていた。


(ううう、わ、私のお嬢様があ~~~(涙)。)


同級生になったばかりの初対面の女に主人を奪われそうな愛麗アイリーが嫉妬に狂っていた。


だが、こんな仕打ちもまた一興と即座に悦びへと切り替えられる愛麗アイリーであった。


そしてテーブルの下に潜り込むと、二人の美少女の足元から二人の足の匂いを嗅いだりスカートの中を覗いたりしていた。


(え、エヘエヘっ♪)

そんな天国を味わっていた愛麗アイリーだが、結局二人の足に踏んづけられて気絶するのだった。


【………何やってやがんだよ、あの変態は。】

これには制服の胸ポケットから千里眼で様子を見ていた仮面の聖霊もただ呆れるばかりであった。

何だか美鈴メイリンはゲーム展開に流されるままになりそうな予感が。

このままだと誰かとくっ付けられてしまいそう。

さて、一年生のうちに登場する残りの攻略対象は上級生と教師の二人。

美鈴メイリンは年上の二人に籠絡されてしまうのでしょうか?

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