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第八十八話【恋の一本釣り?名探偵のナンチャラポケットから繰り出す夜の通販!】

大会以後大事を取って部屋に籠もっていた【X】こと陰潜イン・チィェンでしたがやっと外へ出てみました。


が、そこから思わぬ事態に。


それは美鈴メイリンがパワー火山でサラマンダーを相手に修業してきたその日の午後の事だった。


【X】こと陰潜イン・チィェンが約三日ぶりに部屋から出て来た。


【X】としてではなく陰潜イン・チィェンの姿に戻っている彼女は本来の黒髪おかっぱ頭に縁の黒い伊達メガネをかけていた。


一応パジャマから制服に着替えている。


寮の庭に出た彼女は少し身体をほぐした後で棒を持ち、素振りを始めた。


病み上がりでいきなり運動するのはオススメしないんだけどな…。


案の定、十回も素振りしないうちにもう息が上がってハアハア言い出した。


素振りを止め棒を地面に着いて息を整える陰潜イン・チィェン


目指していた優勝は叶わず準優勝に終わった彼女。


その立ち回り方に問題はあった…けど彼女はやれるだけの事はやりきったという想いがあるんだろう、その顔は憑き物が落ちたように清々しかった。


そして。


「あら、お身体の方はもうよろしいんですの?」


「…黎美鈴リー・メイリン…。」


美鈴メイリンを見る目にも既に敵意は無く、知り合いの同級生に声をかけられた事を素直に受け入れていた。


美鈴メイリンがそこにいたとに気が付くと陰潜イン・チィェンは素振りを止める事にしたのか棒を地面へと置いた。


「別に大怪我をしていたワケではないですから。」 


「体調が戻らなかったので部屋で閉じこもっていただけ。」

 

「そうですの…ところでお食事はどうされてたのですか?」 


「…多彩蜂ドゥオ・ツァイファン、先輩が毎朝日持ちする食物を届けてくれたから、それで繋いでました…。」


「へえ〜♪」

美鈴メイリンが意味深な視線を送って来たので陰潜イン・チィェンの顔は赤くなった。


コホン、と自分の照れを誤魔化すように咳払いをする陰潜イン・チィェン美鈴メイリンへ逆に聞き返す。


「そ、それより?私に何かご用でも?」


「ええ、実はせっかくの休日なので貴女を午後のお茶にお誘いしたいと思いまして。」


「別に私は…」

(そ、そこまで貴女と仲が良いわけでもないのに…)


つまり本当はそこまで仲が良くなりたい、というのが本音なんだな(笑)?


「あら?せっかく安月夜アン・ユーイー生徒会長のご実家から届けられたお菓子がございますのに…残念ですわ。」


この言葉に陰潜イン・チィェンの身体がピクッと反応する。


「ついでに申しますとこのお菓子、なんでも王都で今大人気なのだそうですわよ?」


ゴクッ。


陰潜イン・チィェンとて女の子である。


よほどの事が無ければこの誘惑には抗えるはずもない。


「…ま、まあ…?せっかくの八大武家のご令嬢直々のお誘いだもの、三十分程度ならお付き合いさせていただこうかしら…?」


「そうこなくちゃ、ですわ!」


美鈴メイリンは彼女の手を取り引っ張る。


「どこでお茶するんですか?」


「それは勿論、私のお部屋ですわ♪」


そんな二人が寮に戻ってゆく姿をたまたま多彩蜂ドゥオ・ツァイファンが見ていた。


黎美鈴リー・メイリン…?」


そして何か良からぬ気がした彼女は二人の跡をつけていった。


………そんな彼女の背後でシャリ…と芝生を踏む音が微かにしたのだが、今の多彩蜂ドゥオ・ツァイファンには聴こえなかった。


……………。



………おかしい。

 

あれから既に五分は歩いてるというのに未だ見知った生徒も見なければ見慣れた寮内の雰囲気がしない。


「あの…さっき私が部屋から出るまでとは少し様子がちがうような気がするんですが…?」


「あらそうでしたかしら?休日で人が少ないからじゃありませんの?」  


「そ、そうかな…。」


美鈴メイリンからそう言われてみればそうなのかな、と納得してしまう陰潜イン・チィェンだった。

  

「さあ、ここですわよ。」


廊下の突き当たりにドアがあった。


陰潜イン・チィェンはこの時少し違和感を感じた。


だがあの美鈴メイリンから入室を催促され、特に疑う時間も無いまま部屋へと陰潜イン・チィェンは入ってしまう。


「さ、ソファーに腰掛け寛いでくださいな。」


言われた通り正面のソファーに座る陰潜イン・チィェン


「私はお茶を淹れて参りますわね。」


そう言うと美鈴メイリンはキッチンへと引っ込んでいった。


その間キョロキョロと周囲を眺める陰潜イン・チィェン


「あの…他にいつもの方々はいないんですか?」


「…あ、ああ、他の皆さんは用事があるとかで出払ってしまいましたの。」


「ハア…それでたまたま見かけた私でもいいからお茶に誘ったワケですか…?」

呆れたように吐息を吐く陰潜イン・チィェン


「まあまあ、そうおっしゃらずに。」


美鈴メイリンがティーセットとクッキーやケーキの皿を乗せたワゴンを運んで来た。

 

「へえ…高級貴族のお嬢様でも召使いのような給仕が出来るんですね。」


「お茶くらいお手の物ですわ。」

オホホホと高笑いする美鈴メイリン


(何か胡散臭い笑い方ねえ〜。)


実はこの陰潜イン・チィェンの感想は結構的を得ていた。


が、まだ自分の置かれた状況に気が付かない陰潜イン・チィェンにとって重要な気付きとは捉えられなかったのも無理は無い。


「さあ、取り敢えずお召し上がりくださいな。」


テーブルの上に置かれたお茶とお菓子を見てまずはティーカップに手を伸ばそうとする陰潜イン・チィェン


すると。


トントン。


誰かが入口のドアをノックした。


途端にギョッとする美鈴メイリン


「…ど、どなたですの…?」

何かに警戒してるようにも見えるその表情。


それを見て訝しげな顔になる陰潜イン・チィェン


彼女はティーカップに伸ばした手を一旦引っ込めた。


『すみません、開けてくださいませんか?』


「どなたですの?」


「…え。」

この声は。


陰潜イン・チィェンはドアの外から聴こえた良く知るその声にちょっとだけ頬を緩めた。


『私は多彩蜂ドゥオ・ツァイファン。』

黎美鈴リー・メイリンさん、今部屋に招待された陰潜イン・チィェンと少し話しをしたいのだけどよろしいですか?』


「どんな…ご用で?」


『それは本人と直接話し合いたい、お通しを。』


「…。」

美鈴メイリンは少し黙り込んだ。


その様子から嫌な感じが頭に広がる陰潜イン・チィェン

次の瞬間、思わず彼女はドアの外の多彩蜂ドゥオ・ツァイファンへ話しかけていた。

彩蜂ツァイファンさん!」


チィェン?』

陰潜イン・チィェンの声を聞くと多彩蜂ドゥオ・ツァイファンは胸騒ぎが強くなった。


ドンドン!とドアを叩く多彩蜂ドゥオ・ツァイファン

『ここを、ここを開けてくれ!』


「…チッ、ですわ!」


美鈴メイリンがドアに手を翳す。


するとドアがボンヤリと光った。


し…ん。


さっきまでのドアを叩く音も多彩蜂ドゥオ・ツァイファンの声も聞こえなくなった。


「さあ…これでもう邪魔は入りませんわ。」

クククッ…と嗤う美鈴メイリン


正に悪役令嬢…というより完全なる悪党そのものな歪んだ笑顔の美鈴メイリンがそこにいた。


「あ、貴女…。」

(…本当にあの美鈴メイリンさんなの?)

恐怖を感じて後ろに下がろうとする陰潜イン・チィェン


だが彼女の身体はソファーから離れられない。


「…な、何で…?」


「既に貴女は私の術中に落ちているんですわよ、おわかり?」


ティーカップを再び陰潜イン・チィェンの口元へ運ぼうとする美鈴メイリン


「さあ、これを一口飲んで楽におなりなさい………ですわ。」


(この人…噛んだ?)

だとすれば今眼の前にいるのは…と陰潜イン・チィェンは嫌な考えがよぎった。

(それじゃこの人やっぱり…?)


「い…いや…。」


身体が張り付いたようにソファーから離れない。


立てない。


美鈴メイリン?に身体を重ねられ強引にカップを唇へと押し付けられる陰潜イン・チィェン


「ん、んんん~!」

精一杯唇を閉じ顔を横に向けて抵抗するイン・チィェン


だが。


「ふん!」


ドスッ!


「うぐ!」


美鈴メイリンにお腹を殴られ不意に唇が開いてしまう。


そこへ無理矢理ティーカップを付けられる。


歯を食いしばり抵抗するも、僅かな歯の隙間から微量の液体が口の中に染みてしまう。


「〜〜〜〜!!!」


ティーカップの中は熱い紅茶では無かったから火傷はしなかった。


だが得体の知れない物質が混ざってそうな紅茶がほんの僅かとはいえ口に入ってしまい恐怖で泣きそうになる陰潜イン・チィェン


「安心なさい…殺しはしないから…。」


その言葉を聴きながら陰潜イン・チィェンの意識は薄れていった。


……………。


陰潜イン・チィェン陰潜イン・チィェン!」

ドン・ドン・ドン・ドン!!

ドアを何度も叩く多彩蜂ドゥオ・ツァイファン


だがドアの向こうからは何の返答も無い。


「一体どうなってる…」


途方に暮れそうになる多彩蜂ドゥオ・ツァイファンの後ろから声がかかる。


「君…こんな所で何をしてるんだ?」


驚いて振り替える多彩蜂ドゥオ・ツァイファン


彼女の目に映るのは


「あ、貴女は…確か先生…?」


「ああ。確かに一年生を担当する一教員だが。」


「私は范燕巫ファン・イェンウーだ。」

「君は二年生の多彩蜂ドゥオ・ツァイファンだったな?」


「は、はい。」


「ここは教員しか知らないハズの緊急避難用隠し階層だ、何故君がここに?」


「い、いえ、私の知り合いがここに連れ込まれたので後を追って来ただけです。」


「君の知り合い…ここへ?」


「それで君の知り合いとここへ連れてきた者というのは誰かね?」


「…連れ込まれたのは一年生の陰潜イン・チィェン、それで連れ込んだのは…。」


上目遣いでファン先生を見つめた多彩蜂ドゥオ・ツァイファンが声を絞り出すようにその名を告げた。


黎美鈴リー・メイリンさんです。」


「何?」


「一年生の美鈴メイリンさんがチィェンをここに連れ込み、その部屋のドアが消えたんです!」


「そんなバカな。」


「ここは突き当たりに部屋など存在しない。」


「え?」


「本当だ。」

「それに美鈴メイリン君なら明花ミンファ君と一緒に魔法研究部に顔を出していたぞ。」


「えっ?!じゃあチィェンを拐った人間が別に?」


「これは大変な事になりそうだ…」

こめかみを押さえて深刻そうに振り返るファン先生の耳に鈴の音のようにコロコロと鳴る涼しげな声が届いた。


『これは…事件ですわね?』


「「え?」」


ハッとしたファン先生と多彩蜂ドゥオ・ツァイファンが通路の出口の方を見ると。



そこには、かの有名(前世で)な西洋の名探偵とその助手の格好をした二人の女子がいた。


ジャジャジャジャーン♪♪


…と、いうBGMが聴こえて来たのは俺の空耳だろうか?


「全ては風魔法で先生の耳を通して聞かせていただきましたわ。」

 

バッ!とポーズを取るその女子、そして遅れて合わせるもう一人の女子。


そのもう一人の方は少しぎこちなかったが。


「この女子高生名探偵、黎美鈴リー・メイリンにお任せあれ、ですわ!」


「じょ、助手の文明花ウェン・ミンファです…。」


美鈴メイリンの方はノリノリだったが明花ミンファの方は結構恥ずかし気だ。


(もう〜、変な目で見られてませんか私達?)


(何をおっしゃいますの?)

(こーいうのはノリ!が大事なのですわ!)


多分、明花ミンファ美鈴メイリンのコスプレに付き合わされたんだな。


「………コホン、で、美鈴メイリン君?」


ファン先生、名探偵を付けて下さいな?」


「名探偵…美鈴メイリン君、陰潜イン・チィェン君を取り戻すいい方法があるのかい?」


「良くぞおっしゃいましたわ、これです!」


チャッチャラッチャ、チャッチャッチャ〜♪


どこかで聞いたようなBGMを口にしながら明花ミンファのお腹の鞄からある道具が取り出された。


まるで某二頭身ロボのポケットみたいだなその鞄。


「これぞ、魔法のゴーグルですわ!」


「これは魔法研究部のワン部長の協力で完成した、目に見えない世界を映して見るゴーグルなんです。」


美鈴メイリンの魔法道具紹介のあと、明花ミンファがその内容を紹介した。


ファン先生、使い方を説明するので試してみて下さい。」


「あ、ああ…て、私が使うのか?」


「大丈夫です、実験は成功してますので。」


「ほ、本当に大丈夫なのかい?なら君達が使えばいいんじゃ?」


「わ、私達は商品の紹介する側に過ぎませんわ!」

「さあ、別に今すぐ購入しろとは申しませんので、お試しあれ!」


「そうです、他のゴーグルより断然安心で使い勝手が良いお得な商品なんです、この機会を逃すなんて勿体無いですよ先生?」


「ですわ、今こそお買い得なのですわ!」

 

【………なんか最初の探偵から設定がおかしくなってないか?】


【探偵→◯◯えもん→夜の通販番組】


(今は黙っててくださいな名尾ナビ君!)



転生者にしかわかんないネタだからまあいいか。


恐る恐るゴーグルを目にかけ、明花ミンファの説明通りに操作するファン先生。


「お、おおお…!」

「こ、これは…!」


「何が見えるんですか、先生?」

多彩蜂ドゥオ・ツァイファンが興味深そうに聞く。


「ドアが…ドアが無数に存在する…!」


「ふむ…異次元に存在する似たような無数の世界のドア、ですわね。」


「では、そのうち陰潜イン・チィェンさんが因われているのはそのうちのどれか一つ、という事ですか美鈴メイリンさん!」


「さすが明花ミンファさん、その通りですわ!」


いつの間にか二人はいつもの制服姿に戻ってた。


【おいもう探偵ゴッコ止めたのか?】


(我が校の生徒誘拐事件かも知れないのにそんな不謹慎な事できませんわ!)


………空いた口がふさがらねー。


「ともかく、どのドアが通じてるのかわからなければどうにも…。」


「ふむ…それでしたら…。」


ジャジャア〜ン!


再び美鈴メイリン明花ミンファの鞄から道具を取り出した。 


【今度は◯◯えもんじゃないんだな】


(それはもう黒歴史にしていただけませんか?)


「名付けて、『運命の意図的な赤い糸〜♪』ですわ!」


何か糸巻きというか釣りに使うリールみたいだな。


それをやはり鞄から出したのか、折り畳み式釣り竿らしき…いや、どう見ても折り畳み式釣り竿そのもの?にそのリールを取り付けた。


「これは魔法研究部の道具で申請されず放置されてた物なのですけど…」


「ま、また私に使わせるのか?」

ファン先生が後退りした。


「いえ、これを使えるのは今この場において多彩蜂ドゥオ・ツァイファンさんしかいないのですわ、残念ながら。」


【…残念てことはそうじゃなきゃまたファン先生に使わせる気だったのか?】


(ノーコメントですわ♪)  


…こ、この女は…。


「さあ、そういう事なので。」


明花ミンファがその竿を多彩蜂ドゥオ・ツァイファンに手渡し使い方をレクチャーする。


簡単に言えばその使い方とは見た目通りに釣り竿そのものと言えた。


違うのはまず釣り糸の「浮き」に当たる部分が目標に反応するという点。


後は釣り針の代わりに糸の先端へ取り付けられた魔法鉱石のウェイトを飛ばせばいいだけだ。


この時大事なのは多彩蜂ドゥオ・ツァイファンがひたすら陰潜イン・チィェンの事を想い続ける事。


それにより「浮き」の部分に当たるセンサー役の器具が反応し、魔法鉱石を目標へと誘導出来るのだ。


「わ、私に出来るのか…?」


「出来ますわ、貴女のフェンシングの腕…そして」

「その胸の奥にある陰潜イン・チィェンさんへの想いさえあれば。」


美鈴メイリンにそう言われた多彩蜂ドゥオ・ツァイファンは目が見開いた。

「私の…(陰潜イン・チィェンへの)想い…」


「さあ、顔をお上げ下さいな。」

「そして大切な人を取り戻すのです!」


クワッと行き止まりとなってしまった突き当たりの壁を睨む多彩蜂ドゥオ・ツァイファン


そして一心不乱に念をウェイトに込める。


「おお…多彩蜂ドゥオ・ツァイファンが…彼女のオーラが燃えている…!」

ファン先生が感嘆している。


「どちらかと言えば萌えている、が妥当かと思われますわ。」


「しっ!」


美鈴メイリンの困った声に苦笑する明花ミンファだった。


そして。


「取り戻す…必ず!」


「イヤアーッ!」


思いきり振りかぶりウェイトを壁に向けて放つ多彩蜂ドゥオ・ツァイファン


…。


カツン。



…釣り竿のウェイトは壁に当たって弾きかえった。


しーん。


「あ、あれ?」


予想外の出来事に唖然とする四人。


すると。


「あ!忘れてましたわ!」


鞄から新たに道具を取り出す美鈴メイリン


「これこれ、これを壁へと貼らなくちゃでしたわ!」


テヘペロ♪


それは壁紙だった。


そそくさとそれを突き当たりの壁へと貼り終える美鈴メイリン


「えい♪」


仕上げに美鈴メイリンの指先から魔力の光がその壁紙へと送られる。


途端にその壁紙の向こう側にはファン先生のゴーグルに見えてる無数のドアの世界が現れた。


「これがその道具とセットの異次元釣り堀でしたわ。」


おいおい、肝心なモノ忘れてたんじゃねーか。


「さあ、気分を取り直してレッツトライ、最チャレンジですわ♪」


「あ、あのね…?」


「まあまあ、なんせあの美鈴メイリンさんですから。」


「そうだな、美鈴メイリン君はいつもあんなだからな。」


明花ミンファのよくわからないフォロー(?)とファン先生の諦めとも取れる言葉にドッと疲れを感じる多彩蜂ドゥオ・ツァイファンだった。


スッカリ調子の狂った多彩蜂ドゥオ・ツァイファンは何度も深呼吸を繰り返し、再び精神統一をはかった。


「ハアーッ!」


ピュン!


スウ…。


……………コツン………。


そして二度目のトライで釣り竿のウェイトは見事目標と思われるドアへと突き刺さるのだった。


「や、やった…!」


「おお、大成功だ!」


「やりましたね、美鈴メイリンさん!」


「ええ、皆さん、救出はこれからですわよ!」


志気の上がる四人。



【………しかし釣り竿を上から振り下ろすのって、多彩蜂ドゥオ・ツァイファンのやってたフェンシングの動きとは何の関係も無いんじゃないか?】


(………単なる気の所為でしたわ。)


ですよねー。


何か状況を楽しんでるような美鈴メイリンです。

悪党そのものの方の美鈴メイリンの方が偽物なんでしょうけど…。


果たして多彩蜂ドゥオ・ツァイファン陰潜イン・チィェンを助けられるのでしょうか?

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