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慈悲深い仮面の剣豪は、実は血を見るのが苦手な中華風TS美少女です!  作者: 長紀歩生武
第三章【学院代表選抜戦・一年生編】
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第八十三話【今、疾風を越えて神速となれ!】

竜巻拳トルネードフィストを叩き込む美鈴メイリン、対する【X】もまたカウンター魔法とおぼしき技で迎え撃つ。


果たして優勝はどちらの手に?


【X】は槍を突き出した。


空間魔法で生み出した異空間と、そしてそのエネルギーを纏った槍の穂先を。


その先端の周囲には歪んだ空間が見えていて、そこへ僅かに美鈴メイリンの髪の毛先が触れた。


その瞬間、彼女の髪の毛の一部が消え失せた。


どうやら空間の断層を利用した切断、なんて生易しいモノじゃなさそうだ。

 

触れた物質そのものを消滅させるか、それともどこか見知らぬ異空間へと吹き飛ばす類の技かも知れない。


だが美鈴メイリンはチラリとも視線を動かさず真っ直ぐに【X】を見つめながら、その腕を動かした。


次の瞬間、その片腕の竜巻拳トルネードフィストは【X】の槍に発生していた恐ろしい異空間を消滅させた。


それも一切振り向かずに。


そしてそのまま美鈴メイリンは【X】の槍を掴むともう片方の竜巻拳トルネードフィストを【X】の胸元へとぶつけていった!


ガキイッ!!


今度は美鈴メイリンの拳が【X】の鳩尾を貫いた!


「貰いましたわ!」


「くっ!」

【X】顔に動揺が走った。


美鈴メイリン選手の竜巻拳トルネードフィストが【X】選手に決まったあ〜っ!!』



………かに見えた。



「なっ?」


「く…ククク…。」


美鈴メイリン竜巻拳トルネードフィストは【X】が胸の前に発生させていた異空間のフィールドを盾にして、辛うじて阻まれていた。


ここまで来てもなお【X】は驚異的な粘りを見せてる。


「これは反則ではなくて列記としたルールの範疇、そうですよね?」


確かに【X】の言う通り、アミュレットよりも強い防御力の魔法、魔術でアミュレットの付近を覆ってもそれが出場選手の用いた魔法であれば問題では無い。


「しかしこの状況では貴女も手は出せませんわよね?」


「手は出せない………けど、」


ん?


「力が出せないワケじゃ無いから。」


………え、待て?


ひょっとして…!


その時【X】の槍から放たれる歪みが輝きを増した。


「!!」


【ズドゥーン!!】


突如、美鈴の周囲の空間が歪んだ。


そして重々しい空気の圧力が彼女の姿を波打たせる。


『おおっ?!今度は美鈴メイリン選手の身体がイキナリ吹きとんだ〜?!』


『【X】は身動ぎ一つしてません、つまりコレは例のカウンター魔法…と思われます。』


多彩蜂ドゥオ・ツァイファン依然イーランは努めて客観的に状況を語った。


ていうか依然イーランのヤツいつの間にか解説席に戻ってやがったんだ!


案外解説の仕事が面白くなったんだろうか?




「アーッハハハ!」


「どうかしら?自らが生んだ新必殺とやらのお味は?」


【X】が勝ち誇ったように笑いながら美鈴メイリンに問うた。


「………」

ガクッと沈む美鈴メイリンの身体。


その美鈴メイリンの身体へ向けて追い討ちをかけるように【X】が足で思い切り蹴り上げた。


ガツッ!!


身体強化魔法でも使ったのだろう、よほど強い力だったのか美鈴メイリンの身体がそのまま後方へとすっ飛ばされてしまった。


美鈴メイリンさん!!」


明花ミンファが叫んで飛び出して来た。


「危ない!」


咄嗟に白百合のプリンセスが上空から障壁を明花ミンファの前に発生させた。


その障壁に美鈴メイリンの身体がぶつかって止まる。


「危ないですよ明花ミンファさん、まだ試合中なのにグランドに出てくるなんて…。」


白百合のプリンセスが地上に降りて明花ミンファを通せんぼする。


美鈴メイリン選手を心配して飛び出す明花ミンファさんを仮面の剣士が受け止めました。』


多彩蜂ドゥオ・ツァイファンさん、あれは仮面の剣豪…白百合のプリンセス様にございます。』


『あ〜、あのお方が噂の白百合のプリンセスさんなんですね?』


『ええ…とても気高く気品溢れるお方にございます。』


『な、なるほど…確かに…。』


二人は白百合のプリンセスの美しさに暫し見惚れた。



「退いて下さい、私は美鈴メイリンさんを…」


「いえ、まだ試合は続いてますしそれに何より…」


白百合のプリンセスがそう言った時。


彼女の発生させた障壁に背中を預けていた美鈴メイリンがピクリと動いた。


「………なるほど、これがカウンター魔法と呼ばれた【X】の攻撃でしたか…。」


美鈴メイリンは振り替えった。


「ご心配なく、私は大丈夫ですわよ明花ミンファさん?」


ニッコリと明花ミンファに笑いかける美鈴メイリン



美鈴メイリンさん??」


「…もーう、本当に心配したんですよ?」


美鈴メイリンから笑いかけられ、安堵する明花ミンファ


「ゴメンなさいですわ、やはりどうしてもあのカウンター魔法とやらが気になりまして…。」


「もしかしてワザと受けられたんですか?」

呆れたように白百合のプリンセスが美鈴メイリンに尋ねた。


「まあ、そんなところですわね?」


三人のそんな会話を聞きながら【X】も美鈴メイリンに話しかけた。


「あ…貴女さっきの技の威力で、何故…?」


「え?」


「ああ、あの竜巻拳トルネードフィストでございますか?」

「確かに思った通りの破壊力でした、貴女の異空間フィールドを壊せたんですから大成功でしたわ!」


嬉しそうにはしゃいで語る美鈴メイリンを、俺はソコじゃないだろう?とツッコミたくなった。

 


それは【X】も同じだったようで…


「…ふ、ふ…ふ…。」


「…あら、何がおかしいんですの【X】さん?」


「…ふ、…ふざっけんじゃないわよっ!!」


「…あ〜、そっちの方の「…ふ、」でしたのね?」


「だからふざけてないっての!アンタの方こそふざけんなっての!」


「…?」

「ふざけてないのにふざけるな………?」

「はて、どっちにしろと言われるのでしょう?」


「だから!私はふざけてなくてアンタがふざけてんでしょうが?!」


「いえ、私は全くふざけてなどおりませんので、ふざけてるのは寧ろ言ってる事のおかしな【X】さんの方では…」


「…嗚呼〜、あー言えばこー言う〜?!」


ガシガシと痒くもない頭を掻きむしる【X】、無茶苦茶イライラしてるらしいな。


「それよりあの技を食らって何故ピンピンしてるのよ!」


「え?…私、貴女の技など食らってませんわよ?」


まあ、蹴りでふっ飛ばされたけどな…。


あ、あれもダメージを軽減するための受け身のつもりだったのかな?


「何を言ってる…」


そこまで言いかけ、美鈴メイリンの身体を見ていた【X】の表情が変わる。


「…どこも、ダメージを受けて…ない…?」


そう。

 

あの槍に纏われた異空間の刃ですら消してしまう程の竜巻拳トルネードフィストをカウンターで威力をカサ増しされてぶつけられたのだから、肉体だけでなく衣服にも被害が出ていて当然なのだ。


勿論防御アミュレットによる防御で威力が削減されてる事もあるだろうが…それにしても美鈴メイリンには被害の痕跡が一切見当たらないのだ。


アイツが非常識なまでに頑丈とはいえ衣服にもダメージを残さないのは凄いな…。


「まさか、さっきのは威力を抑えた一撃だったとか?そうでしょう?!」


【X】がそう思いたいのは山々だろうが…。


「…では、その貴女の胸元はいかが説明されるおつもりですの?」


美鈴メイリンが指差す先には胸元の破れた制服を着ている【X】がいた。


「…な?…な、何て破廉恥な事してくれるの!?」


【X】は咄嗟に復元魔法?で胸元の制服の破れを直してしまった。


『おやおや、【X】選手の胸元が先程の美鈴メイリン選手の攻撃で破れてたようです…直ぐに修復してしまったようで残念ですが…。』


多彩蜂ドゥオ・ツァイファンさん、公共の場でそのような発言は慎んでいただけませんか?』


…相変わらず自由な実況解説してんな、この二人。


と、それはおいといて。


「さて、私は今ので確信致しましたわ。」


「貴女のカウンター魔法の正体を見破った事を!」


「さあ、コレで貴女には万に一つの勝機すら皆無にごさいます!」

ビシッと【X】を指差す美鈴メイリン


タラッ…と冷や汗をかきながら気丈に【X】はこう答えた。


「ふん、バカバカしい!」


「私の決め技が見破られるもんですか!」


「では…答え合せと致しましょうか?」


美鈴メイリンが低く身構えた。


【X】はゴクリと唾を飲み込み、こう言い返す。

「お、面白い…じゃない…?」


緊張を隠してる積りだろうが丸分かりだった。


…………でも、こういうのがコイツの手の内だったから今度もそのまま信じるワケにはいかないかもな。


「さあ…準備はよろしいかしら?」


今度は竜巻拳トルネードフィストは使わないようだ。


しかも剣を手にせず魔力の輝きすら発生させていない。



さすがにこれには【X】にも様子がおかしいと思えたんだろう、彼女は美鈴メイリンにこう聞いた。


「どういうつもり?」


「…何が、でございましょうか?」


「何故魔法を使おうとしないのか聞いてるのよ。」


「一応使うつもりですが、それが何か?」


美鈴メイリンは涼しげな笑顔でそう返事をした。


【X】は疑り深い顔をした。


おそらく彼女の心の中では葛藤が起きてるんだろう、美鈴メイリンが言葉通り魔法を使うのか、それともそれは嘘で本当は魔法を使わず攻撃するつもりなのか。


それを察したのか美鈴メイリンは【X】にこう話しかけた。


「ここまで来て今更決め技勝負しないなんて申しませんわよ。」



「…………ホントでしょうね?」


「ぶ………け、剣士に二言は御座いませんわ!」


今の、思い切り「武士」に二言は無いとか言いかけたろ?


「そ、それに観客の皆さんは互いの決め技決着を望まれてる…なら、それに応える事こそ競技者たる私達の宿命!」


「何か盛り上がってるようだけど、別に私はギャラリーなんて気にしてないからね?」


「あ…さいでございますか。」


「まあいいわ、その勝負に乗ろうじゃない!」


【X】はさっきと同じ魔法を使うつもりなのか槍に空間魔法の刃を発生させた。


しかもさっきまでより大きな空間の歪みを伴って。


「…さあ…これで今度こそ完全に決着を付けようじゃないの!!」


「おほっ♡結構ノリが良いんですわね♪」


「るさい、さっさと仕掛けなさい!」


「ええ……。」


美鈴メイリンがすぅー…と息を吸い込む。


『両者再び構えて睨みあう…さあ、今度こそ決着の時かあ?!』


『…まあ、私は既に勝負が見えましたけどね。』


『ホントですか依然イーランさん?』

『で、勝つのはどっち…』


『おっと、ネタバレなんて野暮な事は致しません♪』


そう言うと再び解説席から逃げてゆく依然イーラン


『…というわけで解説者がまた居なくなりましたが、果たして勝利を手にするのはどちらでしょう?!』


シ…ン。


ヒョオッ…と小さな風が吹いた。


カッと目を見開く美鈴メイリン


(いざっ!!)


僅かに美鈴メイリンの踵が浮いた。


次にその足と地面との間が光った。


…………キイン…………


微かに音がした。


そして気が付くと既に美鈴メイリンは【X】の背後へと駆け抜けていた。



何が起こったのかわからない。


それは観客席のギャラリー達も、解説席と実況席の二人も同じだった。


(…え)


【X】は眼の前の美鈴メイリンが消えた事に呆然と突っ立っているだけだった。


まだ彼女の空間魔法の歪んだ異空間の刃は発生し続けている。

  

つまりカウンター魔法と見られる彼女の決め技は未だ効力を発揮しているのだ。


美鈴メイリンは後ろを振り返らなかった。

 

そして彼女の手には…


チャキッ。


…霊斬剣が握られていた。


その剣を鞘に収める美鈴メイリン


「…審判、判定をお願い致しますわ。」


審判も呆気に取られていたが、美鈴メイリンの言葉に我に返ったのかキョロキョロする。


「は、判定も何もまだどちらも…。」


その時。


バキイン!


【X】の槍が、穂先が割れた。


そして彼女の制服がバッサリ斬られ、そこから真っ二つになったアミュレットの半分が地面に落ちた。


【X】の肌には切り傷はおろか引っ掻き傷の一つも見当たらなかった。


「…秘技、【居合威斬いあいざん】。」


美鈴メイリンがそう呟くと、ユラリと【X】の上体が傾き、そして彼女は膝から崩れ落ちるのだった。


「勝負、ありましたよ審判。」


白百合のプリンセスがそう告げると審判はコクッと頷いた。


「勝者、黎美鈴リー・メイリンー!!」


そのコールと共に試合会場は大歓声に包まれた…!





こうして中央貴族学院・高等部代表選抜戦の四大部門決勝戦の優勝者は一年生の黎美鈴リー・メイリンとなり、大会は幕を閉じた。


幾つかの謎を残しながら…。



【学院代表選抜戦・一年生編】完



手にすべき人が手にした優勝。


優勝者には他の貴族学院との対抗戦が待ち構えています。


その前に今大会で幾つか生じた疑問、それはいつ明かされるのか…?

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